夏ー③

 「結唯、本当に大丈夫なの?」

 「うん、大丈夫。せっかく達也達が私の事を考えてくれたプランだもの。断ったら申し訳ないよ」

 「でも……」

 「結唯がそこまで言うなら行かせよう、母さん」

 「あなた……分かったわ」

 「結唯、行きなさい。帰りは、父さんが迎えに行くよ。うまい、理由を考えて迎えに来たと思われたら、それこそ今日のプランを考えてくれた、友達に悪いもんなぁ」

 「ありがとう、お父さん。連絡入れるね」

 「分かった。気を付けていってらっしゃい」

 「いってらっしゃい、結唯」

 「うん、行ってきます」





 午前10時前。俺と四宮さん、冬馬で水族館の入場口の前に集まっていた。

 今日は、日曜日で部活はお休み。昨日もお休みで、明日から夏休みに入る。今日が夏休み入る前の最後と言うのも変だがお休みになるわけだ。

 俺からの提案で結唯を気分転換に一緒に出掛ける案に二人はのってくれた。ありがたい事だ。そのありがたい事に冬馬が親から水族館のチケットを2枚、貰ったみたいだ。1枚のチケットに2名様までということで水族館に決まり。

 どこに行こうか迷っていたから助かった。

 「結唯、大丈夫かな?」

 「無理だったらラインしてとは、言っておいたけど……連絡なし」

 「じゃあ、こっちに向かっているんだよ。結唯ちゃんには、たくさん楽しんでもらわないと」

 「そうですね。あっ、結唯! こっち、こっち!」

 結唯を待っている間に話をしていたら、結唯の姿を発見した。結唯がゆっくりとこっちに向かって歩いて来る。

 「お待たせ。けっこう、みんなを待たせた感じかな?」

 「大丈夫、待ってないよ。楽しみで早めに来たくらいだし」

 「そー言えば、そうだよなぁ。休みの時にこのメンバーが集まるなんて、あまりないような気がする」

 「言われてみれば、そうかもしれませんね」

 「だったら今日はおもいっきり遊ぼうぜ!」

 「体調が悪くなったら、遠慮しないで俺達に言ってくれよ、結唯」

 「そうそう。結唯は、すぐ我慢しょうとするから」

 「今日は、結唯ちゃんを少しでも気分転換してもらう為に集まったんだ。遠慮はなし。もちろん、本人が無理するのは、なしだよ」

 「うん、ありがとう」

 「じゃあ、早速、中に入ろうぜ!」

 チケットを持っている冬馬を先頭に俺達は移動を開始した。

 今日の結唯は、声は明るいが、やっぱり昨日も眠れなかったのかと思わせる顔色だった。あまり無理をさせずに結唯に楽しんでもらおうと俺は思った。

 「さぁて、どこから回る?」

 「ここは、俺に任せろ。チケットを使う予定ができた時にちょっとここの水族館を調べてみたら、三つのオススメスポットを見つけた!」

 「三つですか? それは?」

 俺はちょっと冬馬に感心を持った。始めに冬馬に日曜日の事を話をした時に即座にOKをもらって、どこに行くか決まっていない事を伝えた時に水族館のチケットを持っていると言ってくれて、結唯の体調の事も考えてくれて冬馬には、感謝している。

 冬馬は冬馬なり、色々と考えてくれた事に。

 「ペンギンのショーにイルカのショー、あとは、プラネタリウムがあるんだって。変わっているよな」

 「プラネタリウムはいいかもなぁ。結唯は星好きだもんなぁ」

 「うん。ペンギンとイルカのショーもみたいなぁ~。せっかく、冬馬君が調べてくれたんだもん」

 結唯が嬉しそうにしていた。

「確かにプラネタリウムがあるのは、変わっていますね。でも、時間が決まっているのでは?」

 「そこは大丈夫。ちゃんと調べた」

 「いつもの冬馬と違う。冬馬にしては、しっかりしている」

 「そうですね。不真面目なイメージの方が大きかったので」

 「二人して。冬馬君が可哀想だよ」

 「酷いなぁ、全く。結唯ちゃんだけだよ、俺の見方は」

 「ハイハイ、冗談だよ冬馬」

 「すみません、私も白銀君の、のりにのってしまいました」

 「尚更、悪いわぁ!」

 「まぁまぁ」

 冬馬をからかいながら、楽しいお話をして結唯の笑顔も自然と溢れる。心の中では二人を誘って良かったと思った。

 二人でどこかに行くのもありかなと家で思ったけど、やっぱり学校で多く一緒に過ごすメンバーでわいわいするのが、一番いいなぁ~と改めて俺は思った。

 「話を戻すけど、ペンギンショーは11時半からでイルカのショーは、12時ちょい過ぎ、プラネタリウムは、3時半からになっている。しかも、ペンギンの後にイルカと続けて見られるから、結唯ちゃんにもそんなに負担はかからないと思うよ」

 「ありがとう、冬馬君。そこまで気を使わなくっても大丈夫だよ」

 「別にいいじゃあない、結唯。山之内君だって色々と考えてくれたんだから」

 「あっ、そうだよね。ごめんね」

 「いいよ、別に。気にしていないし」

 「じゃあ、ペンギンのショーの時間まで約55分くらいはあるかな。色々見て回ろう。移動しないと時間が勿体もったいないよ」

 「そうだな、行こうぜ」

 なかなか進まないのを俺は、時間が勿体ないと言って、ようやく進んだ。

 ペンギンとイルカのショーがやる場所は同じだから、そこに向かって歩きながら、いろんなものを見て回った。



 「はーい、皆さん。こんにちはー! これからイルカショーをはじめます! 楽しんでいってね。さぁ~ご挨拶!」

 「わぁ、すごい。ちゃんとお辞儀したよ、達也!」

 「そうだな。しかし、これなんだろう?」

 「そー言えば、なんだろうね?」

 俺が不思議がっているのは、腕輪だ。しかも、色つきの。

 ペンギンショーが終わってですイルカショーが始まるまで15分間の準備時間がかかるとアナウンスが流れて、待っていると係りの人が色違いの腕輪を配っていった。もちろん、俺達も渡された。

 係りの人の説明では、イルカショーで使うから『大切に持っていてね』と『最後に回収するのでなくさないようにお願いします』という説明されたです

 腕輪を渡されてよく見ると腕輪の色と数字が書いてあった。腕輪の色は俺が見た限りじゃあ、四色だった。

 「さぁ~一番前のお客さん、雨具かっぱの準備はいいですか? イルカさん達からのお水のプレゼントするよ~。行くよ、せーの!」

 「「「きゃあ!」」」

 「「「わぁー!」」」

 イルカのすごいジャンプで、前の席に座っているお客さんに水がかかる。

 「もう一回、サービスしちゃうよ!」

 イルカの誘導しているお姉さんがピィと笛を吹いて、イルカ達がもう一回、大きなジャンプしてお客さんに水をかけた。

 俺達四人は、真ん中の席より少し後ろに座っていたので、水をかけられる心配もなかった。

「前に座っていたお客さんごめんね、服びしょびしょにならなかったかな~?」

 その後にボールを使ったり、空中に浮いているわっかをくぐり抜けたりといろんなものをやった。見てるだけでも、楽しかった。隣に座っている結唯も楽しそうだった。

 「ここまで演技に頑張ってくれたイルカ達にご飯をあげたいと思いまーす。イルカショーの前に係りの人から腕輪を渡されたと思います。その腕輪に小さいけど、数字が書いてあるのは、皆さん気付いてくれましたか? あと腕輪の色も違うよ」

 イルカショーのお姉さんがここで、係りの人が配っていった腕輪の説明をしてくれた。この腕輪はイルカにご飯をあげられる人を決める抽選会なんだとそこで分かった。

 「皆さんが持っている腕輪の色は、赤、青、オレンジ、緑、紫の色だよ。今から言う色と数字が当たっている人は、その場で立って下さい」

 「イルカのご飯かぁ~あげてみたいよな」

 「うん、あげてみたい」

 「何名、選ばれるのかな?」

 「当たった人は、ラッキーですね」

 俺達もなかなか出来ない貴重な体験をしたいと話ながらお姉さんのアナウンスを待った。

 「じゃあ、色と数字を言うよ。先に二名、後から二名の合計四名だよ。まずは、紫の23番の人と緑の50番の人!」

 「ハズレた~」

 「私も」

 「みんな、ハズレだな」

 「難しいですね」

先に指名された色と数字の人が、係りの人の誘導でイルカが待っているステージにあがって行く。そして演技を頑張ったイルカ2頭にご飯をあげて、ステージから降りた。

 「さぁ~残り2頭のお腹をすかせているイルカにご飯をあげられる人は……、青の12番とオレンジの23番の人」

 「「えっ、嘘!」」

 お姉さんのアナウンスで色と数字を確認したら、俺と結唯の声がハモった。

 「当たったのか、達也。マジで!」

 「結唯も!」

 「「そう、みたい」」

 「じゃあ、当たった人は立って下さい」

 俺と結唯は立ち上がって、係りの人が来て誘導されてステージに上がった。

 「じゃあ、最後の人にお話聞こうかな? 今日は誰と来たの?」

 「お友達と来ました」

 「じゃあ他のお友達は、ハズレかぁ~、残念だね。お友達の分までたくさん、イルカにご飯をあげてね」

 手袋を渡されて、イルカのご飯であるお魚をイルカにあげた。間近にイルカを見れて可愛かった。

 「おーと、うんうん、なになに」

 ステージのお姉さんが、まるでイルカとお話をしているかのようにイルカに耳を傾ける。

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