夏休み入る前の休み

季節はもう夏に入った。毎日、蒸し暑くなかなか寝つけない、そして体調を崩しては、夏風邪と厄介なものがついてくる。

 学生の俺達は、嬉しい夏休みというものがある。1年の中では、長い休みだ。その夏休みがあと5日で夏休みに入ろうとしていた。

 ピッコーンと俺のスマホが鳴った。音からしてラインだ。スマホを手に取って画面を見た。結唯からのラインだった。

 〈今、電話してもいい?〉

 「どうしたんだ? 別にいいけど」

 〈いいよ〉

 結唯にラインの返事を送った。ラインを送ってから3分後に電話が鳴った。

 「もしもし」

 『結唯です。急に電話してごめんね、達也』

 「いや、大丈夫だけど。何か、あった?」

 『ううん。今日も暑いからベランダに出てみたら、星空がすごいの』

 「へぇーそうなんだ。ちょっと待って……」

 俺は窓を開けて、編み戸にしてから外を見た。そこには、結唯のいう通りの星空が広がっていた。

 「うわぁ、すごいなぁ」

 『でしょう。七夕の時は曇り空で星が見えなかったけど、今日が七夕だったらバッチリだったのにね』

 「確かに。結唯はなにしていたんだ? ラインがきたから驚いた」

『勉強していたよ。ちょっと休憩がてらにベランダに出てみたら星空がすごいからつい、達也に教えたくって』

 「やっぱり勉強していたついでかぁ。まぁ、あと5日。今日が終わるからあと4日。もう少しで夏休みに入る。入った瞬間に部活三昧ざんまいだから」

 『そうなんだよね~。まぁ、今日は宿題が少し出たから、勉強していただけなんだよねぇ~』

 「そっか」

 『そろそろ、電話きるね。星空を見ながら達也とお話できたし』

 「そっか。じゃあ、また学校でな」

 『うん、お休み』

 「お休み」

 俺は結唯との電話をきり、もう少しだけ窓の外、星空を眺めていた。




 「みんな、どこに行くの。待って!」

 『はい、皆さん写真撮りますよ。全員、そろっていますか?』

 「まだです! 私も!」

 どうして私の足、動かないの?なんで?

 どうして誰も私のこと気付いてくれないの?香織、冬馬君、達也!誰どもいいから気付いてよ!

 「どうして……」

 動かない自分の足を見た。

 「いやぁーーーーーーっ!」

 結唯の両足は、化石かしていた。

 「っ!」

 結唯は夢から覚めた。全身、嫌な汗と自然と呼吸が乱れる。

 あまりにも、怖い夢で覚ました結唯は呼吸が落ち着くまで近くにあったぬいぐるみを抱き寄せて、その場をやり過ごそうとした。




       ****




 「結唯~。呼ばれているよ!」

 「誰に?」

 「幼なじみ君だよ。廊下にいるよ」

 「分かった、ありがとう」

 (冬馬も連れてくれば、よかった……。そのまま職員室から直接、来なければよかったかも……)

 「達也、どうしたの?」

 「部活の事なんだけど今、四宮さん、いないんだって?」

 「うん。今、生徒会室に用事があるからちょっと行って来るって」

 「そっか、四宮さんも大変だな。あっ、これ夏休み中の部活の予定表。結唯のクラス分。あとで配ってくれないか」

 「分かった、ありがとう達也」

 「まぁ、これも部員の仕事だから……なぁ、結唯。体調悪いのか?」

 「どうして?」

 「顔色が少し良くないように見える」

 「目立つ?」

 「そんなに」

 「そっか。多分、寝不足なんだよ。ちょっと怖い夢を見たから、そのせいかも」

 「そっか。あまりすぐれないなら、無理するなよ」

 「ありがとう、達也」

 「じゃあ、教室に戻るから」

 俺は、その場から離れて教室に戻って行く。一度、後ろを見て少し顔色が悪かった結唯の事を思い出す。

 (寝不足って言っていたけど大丈夫かぁ? 夏風邪を引かなければ、いいけど……)

 俺は、再び歩きだした。この時、俺は知らなかったんだ。静かに結唯に迫っている異変に。

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