昔ー⑥

「……達也。達也は香織の事、好きなの!」

 「えっ!」

 結唯が突然、驚きの発言をしてきた。俺が四宮さんの事を好きなのかって。

 違う、俺が好きなのは……。

 「違うよ」

 「本当に?」

 「本当だ」

 「そっか。もしかして他に好きな人がいるの?」

 「いる……けど。その前になんで四宮さん?」

 「今日の放課後。二人で一緒に行動していたから……」

 「それは、お前の事だぞ、結唯」

 「えっ?」

 「言ったはずだ。四宮さんもお前の事を心配しているから一言、声を掛けろよって。四宮さんは、結唯を心配して俺に結唯から、何か聞いていないかって話をしてきたんだ」

 「そうなの!」

 「そうだ」

 「あたしの……勘違い?」

 「そう」

 『えっ、ハズッ!』と結唯が驚きと恥ずかしさで混乱している。

 いつもの明るい結唯だ。

 「じゃあ、誰が好きなの?」

 「……っ」

 「ねぇ、誰なの?」

 「……っ」

 気になりだしたら、もう結唯を止められない。

 「……っ。結唯、お前だよ」

 「えっ!」

 「俺が好きなのは、結唯だよ。もう、からへ昇格しょう。それたも、他に好きな人がいるのか?」

 「いっ、いないよ。私も達也が好きだよ」

 「……っ」

 両思いだ。変な流れでお互いの気持ちが分かってしまった。

 「結唯。俺と付き合ってくれないか」

 俺は結唯に真剣な顔で結唯を見た。

 「いいよ、達也」

 結唯は笑顔で答えてくれた。





 「いやぁ~懐かしいね」

 「懐かしいを通り越して、恥ずかしい!」

 「でも……達也が私を気にかけてくれたのは、嬉しかった」

 「それは……いつも明るい結唯が元気がないように見えたし、無理に笑っている姿を見て、どうしたらいいかって思ったから……」

 「ありがとう、達也。それで、今の達也はどう楽しんでる?」

 「!」

 あの時と同じ。今度は結唯からあの時と同じ質問された。

 「……焦っていたかもな。各パートの見せ場のところ、俺自身、結唯と一緒のソロ。今日は一人で仲間をおいて走っていたなぁ」

 「まぁ、達也の場合は部長でパートリーダー。私もパートリーダーだけど、いつの間にか夏が近づいているという意識と部長というポジションに無意識に一人で走っていたね」

 「そうだな」

 「もう少し、香織と冬馬君を頼っても大丈夫だと思うよ。なんの為に副部長が二人いるのよ!」

 「確かに……」

 夕日を見ながら、今日の行動を振り返っていた俺は、結唯に言われて一人で走っていた事を気付かされた。

 一人で走って、音楽を自分でも演奏する楽しさを忘れていた。

 「ねぇ、達也」

 「ん?」

 「私から提案があるんだけど聞いてくれる?」

 「なに?」

 「ソロのパートのところ、今度一緒に練習しない? そーすれば、お互いにアドバイスも出来るし。自分達のパートも見ないといけないから、頻繁ひんぱんに出来ないかもしれないけど、いきなり合奏で合わすよりは、少しは効果があると思う」

 「いいかもな。その話、のった!」

 「決まりだね。一緒に練習する時は、声かけして練習出来るか、確認すればいいし」

 「よし、結唯のおかげで元気がでたよ。ありがとう」

 「いいえ。去年と立場が逆になっただけだし」

 「でも、初心を思い出した」

 「そっか」

 「よし、帰るか。あまり遅くなると心配する。今日は早く終わるって、親に言ってあるし」

 「そうだね。もう少しいたいけど帰ろう。あっ!」

 「どうした?」

 「お母さんに頼まれたもの買って帰らないと!」

 「付き合うよ」

 「ありがとう」

俺と結唯は最後に商店街に行って、結唯の買い物を付き合ってから家に帰った。買い物で少し暗くなりはじめた空に一番星を見つけたと言いながら。

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