昔ー②
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「はぁ~」
「元気だせって、達也」
音楽室の最後の戸締まりを終えた俺達は、鍵を職員室に返してから、俺は何度目かのため息をした。それだけ、今日の練習は、俺にとっては最悪となった。
ため息をするたびに俺と一緒に行動してくれている三人が、特に冬馬が励ましてくれた。
「まだ、楽譜を貰って、そんなに日がたっていないのですから、白銀君」
「そうそう」
「ありがとう。分かっているんだけど……」
頭の中では、分かっているが心の方がついていや、整理が遅れている感じなんだ。
「じゃあ、達也。明日は部活は休みだし、月曜日会おうぜ。結唯ちゃんも」
「一日休めば気持ちが晴れますわ。また、月曜日に」
「ありがとう、二人共。月曜日に」
「またね~、冬馬君、香織! 月曜日に」
正門で二人と別れた。
「帰ろう」
「うん。ねぇ、達也」
「ん?」
「ちょっと寄り道して行かない?」
結唯から突然の寄り道して行こうと言ってきたので鞄に閉まってある、スマホを取り出して画面を見た。
「いいよ。どこに行くんだ?」
「それは、秘密。とにかく行こう。達也も知っている場所だから」
「分かった」
俺でも知っている場所? どこだ。ありすぎて分からない。まぁ、結唯と一緒に歩いていればいいか。
結唯と歩いて、途中から見覚えがある景色になって俺の心の中では、もしかしてという気持ちが芽生えてきた。
(もしかして……結唯が行きたい場所って……)
「着いたぁ~! ここだよ、達也!」
「ここって……」
「そう、達也と初めて来たところ。そして、幼なじみから恋人へ。達也が告白してくれた場所」
「……っ」
俺は、自分の#頬__ほお__#が熱くなっていくのを感じた。
「ベンチに座ろうよ、達也」
「あっ!」
結唯に突然、手を握られ、少し無理やりに近いかたちで連れていかれた。
「はい、座った、座った」
「おっ、おい、結唯」
結唯に言われて俺は2、3人くらい座れるベンチに座った。
俺と結唯が来た公園は小さく、ベンチに小さい砂場とブランコが二つしかない、本当に小さな公園。夕方は誰もいない。そして、何よりベンチに座って、真っ直ぐ見ると町が見える。
夕方になると町と夕日がきれいに見える、絶景な場所。
そして、ここの夕日を結唯にも見せてあげたくって部活帰り、今日みたいに俺がここに連れて来て、そして告白をした場所だった。
「懐かしいね、ここ」
「久しぶりに来たなぁ」
「なんか、昔を思い出すね~」
「そうだなぁ~」
俺は昔の事を思い出していた。
あの時と今じゃあ、状況が違うがここに来て、夕日をバックに結唯に告白した時の事を。
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