「うーん、何か違うような……気がする」

 「そうか? いい感じだと思うけどなぁ、俺的は」

 「うーん……」

 「達也が納得いくまで頑張れ。それよか、今は、休憩時間なんだから、休めよ」

 「……それもそうだなぁ」

 今日は学校が休みで午前9時から練習を始めている。午前から午後の2時半まで練習。2時半から3時半までが、合奏。それが今日の予定。

 そして、今は休憩時間。

 俺は自分のソロがどうしても練習中、納得いかなく、楽器は違うが同じ金管楽器の冬馬に一度、聴いてもらい感想を述べてもらっていた。

 「冬馬。冬馬の仕上がりはどんな感じ?」

 「まぁまぁかな。こういうのって、全体で合わせてみないと分からないし、見えてこないじゃあん。自分のダメなところって」

 「確かに」

 「だから、休憩が終わったら、一度パートで合わせて、おかしなところとか、あやふやなところがないか、確認する」

 「トランペットの見せ所もあるもんなぁ~。そこがバラバラじゃあ、カッコ悪いし」

 「そうなんだよ~。この曲は、各パートに見せ場があるから、大変だよな。俺達が選んでおきながらだけど」

 「それを言うなよ、冬馬」

 「すみません、白銀先輩。ちょっといいですか?」

 「どうかした、森さん?」

 「ちょっと聞きたい事がありまして」

 「中に入っても大丈夫だよ」

 「はい、失礼します」

 後輩の森さんが俺に聞きたい事があるみたいで、俺を訪ねて来た。

 「すいません、白銀先輩、山之内先輩。お話中でしたか?」

 「大丈夫、大丈夫。入って来ても平気だよ」

 「すいません」

 森さんがもう一度、断ってから教室の中に入って来た。そして、俺のところにやって来た。森さんの手には、楽譜が見えた。

 「すいません、白銀先輩。合奏が始まる前にここのところの音を聴いてもらえませんか?」

 「どうかした?」

 「うまく音が出ていないところがあるので、先輩に見てもらいたいのです」

 「分かった。休憩時間が終わったら見てあげるよ。分からないところ、自信がないところがあったら、見るから教えてほしいと他の人にも、伝えてくれるかな?」

 「はい、分かりました。ありがとうございます」

 森さんは、自分が気になっているところを俺に話して、その場から出ていた。

 「さすが、部長さん。後輩、思いで」

 「茶化すな」

 「悪い、悪い。先輩が後輩の面倒を見るのは、当たり前だもんなぁ~」

 「そうなんだよ、冬馬君」

 「結唯ちゃん!」

 「結唯!」

 「そろそろ休憩時間が終わるよ、お二人さん」

 「えっ……マジだ」

 教室にある時計を見て冬馬が呟いた。

 「教えてくれてありがとう、結唯」

 「いえいえ。偶然、通ったついでだから」

 「じゃあ、俺達も戻りますか」

 「そうだな」

 俺と冬馬は、休憩がそろそろ終わる事を知って、各自パート練習している教室へ戻った。

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