日常ー③
***
「自由曲が決まったので各パートリーダーは、楽譜を取りにくるように。金管楽器とパーカッションは、遠堂先生の方で貰って」
あのあと、俺は先生に自由曲が決まった事を伝えて、音楽室に戻っては、急いで楽器を持って練習を始めた。
そして、時間になってから合奏を始めた。まずは、基礎練をやってからの夏の大会での課題曲を合わせた。
吹奏楽部の顧問は、二人いる。木管楽器を主に担当している山口先生と、金管楽器とパーカッションを見つつも、全体の指揮が出来る遠堂先生。ちなみに遠堂先生は、男性教師だ。さらに簡単に言えば、山口先生は副顧問と言える。
「楽譜、全員にいきましたか?」
「「「はい」」」
「では、遠堂先生、お願いします」
遠堂先生が指揮台のところに立った。
「皆さん、お疲れ様です。三年生に選んでもらった曲は、それぞれの楽器の見せ場がある曲です。中でも、フルートとホルンの二つの楽器のソロが一番の見せ場となります。ソロもそうですが各楽器の音色に3年生はひかれ、この曲を選んだと思います。今から、この曲のCDを流すので、一度、皆さんにも聴いてもらいましょう。山口先生、お願いします」
音楽室のスピーカーの近くに移動していた、山口先生がCDをセットし、曲を流し始めた。
音楽が流れた瞬間、みんな音を出さずに静かに音楽を聴いている。
話し声が一つもない空間で。スピーカーから流れる音だけが音楽室に響きわたる。
「皆さん、この曲の演奏を聴いてイメージが浮かんだと思います。先ほど言った通りに楽器の見せ場はもちろん、ソロもある曲です。難しいと思いますが、先生達も皆さんにアドバイスを出来るよう努力しますので、皆さんもいい演奏を心がけて、夏の大会に向けて頑張っていきましょう」
「「「はい」」」
「では、今日の練習は終わりにしますが、最後に今回のソロは、早乙女さんと白銀君。お二人でお願いします」
「「はい」」
「ソロがあるパートの皆さんも、いつも言っているように、誰でも出来るように練習をしておいて下さい」
「「「はい」」」
「山口先生から何かありますか?」
「いいえ、特には」
「そうですか。では、皆さん気を付けて帰って下さい。これで練習を終わりにします」
「「「ありがとうございました」」
今日の練習が終わった。部活の習慣で先生の話が終わると全員で、起立、礼で終わる。あとは、片付けが残る。
「白銀君。最後の戸締まりをお願いしますね」
「はい、分かりました」
部長である俺は、先生に最後の戸締まりをお願いされる。というか、これも部長の仕事なので、もう慣れている。
「じゃあ、みんな楽器を片付けて、忘れ物がないように気を付けて帰ってくれ」
「「「はい」」」
いつものように俺と副部長の二人と結唯の四人で、最後の戸締まりをしていた。
副部長の2人は当たり前の仕事だけど、何だかんだで戸締まりだけは、結唯も手伝ってくれる。
「さて、全部の戸締まりはOKだ、達也」
「ありがとう、冬馬」
「それでは、帰りましょうか」
「うん。帰ろう、帰ろう!」
俺達は、鍵を職員室に戻して職員室を後にした。
正門まで、明日の活動の確認やたわいもない会話をして、四宮さんと冬馬は電車通なので、正門で別れた。
俺と結唯は、歩きなので一緒に帰る。
「ねぇ、達也」
「うん?」
「今回の曲、ソロが長いからソロの演奏、プレッシャーを感じるね」
「まだ、始まっていないのに」
「そうだけど」
「分かっているよ。俺もプレッシャーを感じるよ。だって俺達、3年は夏の大会の結果次第で次に行けるかどうか、なんだから」
「そうだね」
夏の大会の結果次第で、先のステージに行けるか、それか、引退のどちらかになる。
「今年は絶対に金賞を狙おうね」
「当たり前だ」
2人で絶対に金賞を取ると語り合って家に向かって帰った。
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