日常ー①

        ****


 6時間目。驚いた事に結唯が言った通りの合同体育になった。体育館を半分にして入口と出口に近い方が女子でバレーボール。男子は、奥でバスケをやることに。しかもクラス対抗戦になった。どっちもクラスでAチームとBチームに別れて、そして対抗戦。

 俺と冬馬は同じチームになってBチーム。バスケの試合は後から。今からAチームの試合が始まろうとしていた。

 「なぁ、なぁ、達也に冬馬」

 「なんだよ、嘉藤かとう?」

 「二人は、女子の試合、どう思う?」

 「どうって、どっちが勝つかってこと?」

 「違うって!」

 「じゃあーなんだよ?」

 「試合に出ている女子だよ」

 「はぁ~?」

 クラスのムードメーカーに近い嘉藤が話し掛けてきたと思ったら、すぐにこれかぁ~と思った。嘉藤が言いたい事がすぐに分かった俺は、冬馬に任せたと心の中で思い、話を聞いている事にした。

 嘉藤の話が聞こえたのか、三名ほどの男子が近づいて来た。

 「だって、うちのクラスにも可愛い子はいるけど、Bクラスには、早乙女さんがいる。Bクラスの男子はいいよなぁ~」

 「「「うんうん」」

 そう、俺の恋人である結唯は顔立ちが可愛いし、明るい性格で男子の間では、大和撫子なんて言われるほどの人気。俺との関係を知ったらどうなるのかと結唯の話題が出たら、いつも心の中で思っていながらみんなの話を聞いている。

 ちなみに俺と結唯の関係を知っているのは、ほんの数人。同じ部活のメンバーだったり、口が硬い友達だけだ。

 嘉藤には、悪いが口が軽そうな奴には、教えていない。知っていても俺と結唯が幼なじみぐらいしか、知らないだろう。

 「なぁ、達也。早乙女さんの理想な男子って、どんなタイプか知らないか?」

 「何で俺。本人に聞けばいいだろう」

 「それができたら苦労しないって。早乙女さんと幼なじみなんだし、そんな話題の話とかしないのか。同じ部活なんだし?」

 「しないって」

 「「えっー」」

 「じゃあ、同じ部活の冬馬は。ちらっと聞いた事はないのか?」

 「いや、知らん」

 「それより、試合観戦しろよ」

 「真面目だな、達也」

 なんとか話の話題を変える事ができたと思う。嘉藤達が違うグループに移動したのを確認してから冬馬が話し掛けてきた。

 「大変ですな、彼氏さん」

 「うっ」

 ドスッと冬馬の脇腹にパンチを入れてやった。


         ***


 『おーい次、Bグループの試合するぞ。試合に出る者集まれ!』

 Aグループの試合が終わって次は、Bグループの試合が始まろうとしていた。

 俺と冬馬もBグループだから試合に出ないといけない。俺は、軽く足首や手首を回して移動をする。

 「さて、達也。試合頑張るか」

 「頼りにしてるぞ、冬馬」

 「それはこっちのセリフだ」

 「そうだぞ。俺達のグループじゃあ、達也と冬馬が頼りだ。俺達も頑張るけど」

 「お前だってバスケ部じゃん。俺達を引っ張って行けって」

 「無理だって。俺はあくまで補欠。あっちには、バスケ部が三人いるんだぞ。絶対無理!」

 「おいおい」

 クラスでバスケ部の一人、田辺たなべが俺と冬馬に話し掛けてきた。他にもバスケ部はいるが、ほとんどがAチームに集中してしました。だから、試合に勝てる見込みがほとんど無いに厳しいと田辺が思っているみたいで、俺達に頼んだと念を押してきた。

 「試合始めるぞ!」

 先生の合図で試合が始まった。



 『こっちにパス!』『ボールをカットしろ!』『走れ、走れ!』とあっちこっちから声が聞こえる。

 今は俺達のクラスが優勢になっている。あと20分くらいで試合終了になると思う。

 「田辺、こっちにパス!」

 「頼む、冬馬!」

 「ナイス、田辺!」

 冬馬が田辺からボールをもらってドリブルして行く。

 「誰か止めろ!」

 冬馬は、運動神経がいいから何人をも交わして行く。

 「ここで止まってもらうよ、冬馬君」

 「でたか、バスケ部エース!」

 「エースではないと思うんだけどなぁ~。でも、この先は行かせないよ」

 「すきがないねぇ~」

 「冬馬、パス!」

 俺は自分のマークが外れたと同時に走り出し、冬馬の少し先から手を上げ、『パス』と声をあげた。

 「頼んだ、達也!」

 「ナイス、パス!」

 俺は、冬馬からパスをもらうと、そのままゴールへ向かってドリブルをしてそのまま、スリーポイントシュートを決めた。

 「ナイスショット、達也!」

 「冬馬のパスが良かったからだよ」

 「試合終了ー。3ーA、Bチームの勝ち」

 「「ありがとうございました」」

 残り時間がくるまであと1試合できると判断した先生は、最後に1試合目と2試合目で勝ったチーム同士の試合をする事を決めた。

 最後の試合でも、お互いに接戦せっせんしてなかなか勝敗が決まらなかった。けど、向こうのちょっとしたミスで俺達のクラスの勝ちが決まった。

 「やったな、達也。今日は調子が良かったのか?」

 「いつも通りだけど?」

 「まぁ、達也は運動神経もいいから。……けど、今日はやけにすごかったと思うぞ」

 「そうか~」

 「あっ、が見ているから張り切ったかぁ?」

 「冬馬~。何か言いたい事でもあるのかな~」

 「な、ないです」

 俺は冬馬に軽く睨んだ。俺達の会話は、周りに誰もいなかったからいいけど、俺の心の中では、やっぱり結唯が見ている前で、カッコいいところを見て欲しいと思ったかもしれない。

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