157.ストーンランナー戦 3

すいません!

6時半くらいから更新時間を待ってたら寝てました_(:3」 ∠)_

それでは本編をどうぞ

**********


「次、右腹部を狙いますにゃ!」


「はい!」


 ストーンランナーと予想外の邂逅があった翌日、今日は普通に戦闘することとなった。

 この個体も特別変わったルートを走り回っているわけではないらしく、戦いやすい場所で小一時間ほど待っていたらあちらからやってきたというわけだ。

 で、いまの状況だが……。


「くっ……一層目の岩は簡単に破壊できたのに!」


「ストーンランナーの一層目はわざと剥がれやすくなっているそうにゃ! いざというときにはそれを切り離して逃げるためだとか」

「どうするのよ! 戦い始めてからもうかなりの時間が経っているわよ!?」


 ……というわけで、一層目は前回同様簡単に破壊できたものの、二層目の破壊に手間取っている状況だ。

 かくいう俺も。


「どうすると言われてもな……俺も、スキルの使いすぎで頭がふらついてきた」


「あの精霊を集めやすくするってスキルのこと? 大丈夫なの、それって?」


「あまり大丈夫じゃないな……いまはスキルを使用していないから援護の手が止まっているわけだし」


「ああ、もう! 打開策なしじゃない!」


「そういうアヤネは頑張ってくれてるよな」


「褒めてもらえるならあとにして!」


 スキルの使いすぎで支援魔法程度しか使えなくなっている俺を守っているのは、間違いなくアヤネだ。

 そして、そんなアヤネを回復しているのはゼファーだし、テラも他の魔物が近づいてこないように周囲を警戒している。

 おかげで、俺たち4人はストーンランナーとの戦闘に全力を注げるのだが……。


「……よし、頭も冴えてきた。ミキ、リオン! イフリート・アームとアイスコフィンで一気に攻撃する!」


「待ってました!」


「遅いにゃよ!」


「こんな副作用があるスキルだなんて思ってなかったんだよ!」


 軽口をたたき合いながらもストーンランナーから離れるふたりを確認し、イフリート・アームとアイスコフィンを連続でぶつける。

 すると、全身を包んでいた岩は多少色味が変化して見えた。


「ナイスにゃ! さあ、岩を破壊するにゃよ!」


「わかりました!」


 二層目の岩もかなり脆弱になったようで、リオンの剣技とミキの打撃によって少しずつではあるが破壊されていっている。

 だが、それでもいまのところ剥がせたのは3分の2程度だろうか。


「ふぅ……あのふたりが全力攻撃してくれている間、こっちが休めるから助かるわ」


「ワフン」


「……ああ、そうだな」


「そうね……って、フート! あんた、大丈夫!?」


「正直に言って、かなりきつい……」


 魔法を使ったところ、また激しい頭痛と悪寒が戻ってきた。

 どうやら新しく覚えたスキルは、自身の体力と精神力を引き換えに精霊を引き寄せるみたいだな。


「ああ、もう……! ミキ、リオン! フートが限界よ!」


「……やはりこれ以上は無理ですかにゃ! 了解、ミキ殿撤退ですにゃ!」


「はい!」


『ふむ、やはり無理をしながら戦っていたか、ニンゲン。まあ、楽しめたぞ』


 念話でそれだけ言い残すと、こちらが撤退準備を終える前にストーンランナーの方から走り去ってしまった。

 俺たちがあれだけの死力を尽くして戦ったのを『楽しめた』程度で終わらせるとは……格が違うな。


「……どうやら完全に去って行ったようですにゃ」


「安全は確保できたようね?」


「他の魔物が寄ってこないとは限らないにゃ。今のうちに車でキャンプまで撤退ですにゃ」


「わかりました。フートさん、立てますか?」


「ああ、なんとか」


「……しかし、戦闘時間4時間近くで二層目を半分ちょっとですかにゃ……厳しいですにゃ」


「いまはあとよ。それより早く帰りましょう」


「そうですにゃ。反省会は帰ってから安全な場所で、ですにゃ」


 リオンの車に乗った俺たちは最近使っているキャンプ地まで戻り、ハウスを出して夕食まで各自バラバラに休憩することになった。

 もっとも、俺はミキの監視の上でベッドに寝かされて休息をとらされたのだが。


「……さて、今日の反省会ですにゃ」


「反省点ねぇ……私たち、フートに頼りすぎていたってこと?」


「……否定できませんね」


「攻撃、支援、回復。すべてをこなす万能型の高レベル魔術師ですからにゃぁ……吾輩も気付かないうちに頼りすぎていたようですにゃ」


「そんなことは構わないさ。問題点は……」


「【精霊集中力上昇】のスキルですね」


「そうだにゃ。フート殿、このスキル自由にオンオフできるのですかにゃ?」


「可能だ。ただ、一度オフにしてしまうと10分間は再度オンにできないけどな」


「……使いどころ、難しそうね」


「ちなみに、どれくらい魔法の待ち時間が短縮されるんですか?」


「ああ、魔法の種類にもよるがレベル5以下ならほぼノータイムで連射出来る。レベル6以上は……3分の1程度かな?」


「……その火力差は大きいですにゃ」


「そう思って使い続けていたんだが……あのざまだ」


「見ていた限り、最大HPと最大MPを一時的に消費していっていたようですにゃ」


「ああ、そうらしい。短時間なら問題ないしすぐに回復するが、長時間使ったままだと回復速度も著しく低下するみたいだ」


「そこまで危険なスキルだったんですね」


「俺も知らなかったよ。スキル説明文にもそんなこと書いてなかったし」


「そもそも【精霊集中力上昇】なんてスキル自体が聞いたことありませんからにゃぁ。謎が多いですにゃ」


「……で、今後はどう戦っていくのよ?」


「そうですにゃ。まず、今後は長時間の戦闘は控えることにしますにゃ」


「長時間の戦闘をしないなんてできるんですか?」


「普通のモンスターなら無理なのにゃが……どうにも、あのストーンランナー、吾輩たちと戦う事を楽しんでいるようにしか思えないのですにゃ」


「戦っているのかじゃれついているのかわからないけどな」


「それはいわないでよ……」


「スマン」


「まあどちらでも同じにゃ。明日以降は2時間ほど戦ったら一度撤退して1時間以上休むことにしますにゃ。そして、もう一度ストーンランナーを探索して、見つけられたら再戦ですにゃ」


「それをキリのいいところまで繰り返す、と」


「そうなりますにゃ。正直、吾輩も4時間戦い続けるのはしんどいですにゃ」


「私もです……油断したら死んじゃうかもですし」


「そうなってくると、私は【縛鎖の檻】の使う回数をもう少し増やした方がいいのかしら?」


「増やしてもらうとダメージ量的にはありがたいのですがにゃ。あれもクールタイムが長いですにゃろ?」


「……15分」


「できれば連発するよりも、吾輩たちが合図したときに使ってほしいにゃ。そうすれば、その隙に吾輩たちは回復しますにゃよ」


「オッケー。フートもスキルの継続使用はなるべく控えてね?」


「だなぁ。限界は5分ってところか」


「状況的にはまだまだ序盤。いろいろスキルを試す時間にゃ。焦らず無理をしないように心がけるにゃ!」


「はい! ……って、あれ?」


「どうかしたのかにゃ? ミキ殿」


「魔物もモンスターも倒してないのにソウルが増えてますよ?」

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