邦奈良、灰色の森深層部
107.再度前線基地からのモンスターハント
「ほっ、青雷斬だにゃ!」
「翔撃羽・落葉!」
「シールドクラッシュ・翔!」
さて、数日かけて帰ってきた前線基地だったんだが、前線基地はなかなかパニックに陥っていた。
「ただいまである。元気にしてたか?」
「あ、リオンさん! 救いの神は見捨ていなかった!!」
「おお、神よ! この偶然に感謝します!!」
「……一体なにをしたのよ、リオン」
「なにもしてないのであるよ! 一体なにがあったのか説明するのである!!」
「あ、はい。前に皆さんがここに来たときにモンスターを発見していたことを覚えてますか?」
「深層部にいたというヤツであろう。それがどうかしたのか?」
「実は……そいつが飛行タイプだったことが最近わかって……」
「つまり、そいつが襲ってくる可能性があると?」
「はい。実際、前線基地寸前までは数回来ることがありました」
「ふむ。どうするかな? フート殿」
「せっかくだし、狩っておこうか、そのモンスター」
「え……モンスターですよ? そんなその辺の魔物を狩りに行くようなノリで」
「大丈夫であるよ。それで、特徴はわかっているのであるか?」
「ええと……ハンターギルドと冒険者ギルドに問い合わせた結果、つけられた名は『雷鳴鳥』フルスヴェルグとなりました。特殊能力は、翼とくちばしから打ちだしてくる電撃です」
「フルスヴェルグねぇ……強いのかしら?」
「俺たちじゃレベルをごまかされているのでなんとも……ごまかされたレベルは31になります」
「ふーん、難しいレベルね」
「まあ、一当てやってみよう。俺が片方の翼を狙ってみるからそれで撃ち落とせたら、3人とも頼むな」
「あら、撃ち落としたら、あなたの仕事は終わり?」
「チャージが終わったら復帰するよ。……電撃、通じるといいなぁ」
「……やりたいこと、わかっちゃいました」
「フート殿はときに残酷である」
俺の狙いを見抜き、少々引き気味のふたり。
効率がいいのはそれなんだから仕方がないだろう。
「さ、そんなことはいいさ。早速ハントに行ってみよう」
と、言うわけでハンターや冒険者たちから情報を集めて出発。
最近だと、前線キャンプ付近に飛んでくるそうだ。
さすがに夜は出てこないらしいので、ハウスを出して一晩休む。
そして翌日だが……。
「さっそく飛び回ってますね」
「探す手間が省けたにゃ」
「でも、あの位置だとどこに落下したのかわかりにくいぞ」
「……はいはい、こういうときは私の出番よね」
全員が十分に離れてアヤネが盾を構える。
「さあ、かかって来なさいよ!! この鳥が!!」
アヤネが魔力も込めた怒声を叩きつける。
一般的な挑発スキルだが……もう少し言葉を選べないものかな。
聞いたところでは、十分な魔力が込められていればなんと言ってもいいはずらしいんだけど。
「アヤネの声が届いたらしいな、フレスヴェルグには」
「一気に突撃していますね」
「雷をまとった超速の体当たり。これは強力ですぞ!」
俺たちが離れたところで話していたところ、フレスヴェルグがついにアヤネに激突。
アヤネの周りにあったバリアのようなものが一撃で砕け散り、アヤネ自身も数十メートル後退する。
「いまよ! あまり長々と押さえられないからさっさとやっちゃって!」
実際、アヤネの声はなかなか苦しそうだ。
堅牢の盾も一瞬で砕け散ったし、相当なモンスターだろう。
「ふむ本来のレベルは100だにゃ」
「了解。それじゃあいくか。〈雷精たちよその力を解放せよ。その真性は破壊。それを統べるは機械の意思。目覚めよ目覚めよ破壊の力に。そして集いて一本の矢とならん。それは閃光。それは破滅。さあ、征くがよい!! その破壊に祝福を!! マキナ・トリガー!!〉」
放たれた雷霆の矢はフレスヴェルグの左翼を撃ち抜き……大きな穴を開けて消えて無くなった。
「うーん。やっぱりレベル8魔法はモンスター相手でも決戦兵器になるにゃ」
「そんなことを言ってないで攻撃開始だ。俺はアヤネの様子を見てから、もう片方の翼も焼いてくる」
「はいにゃ~。お任せあれ~」
「お気をつけて、フートさん」
「おう」
さて、片方の翼を撃ち抜かれた反動で意識がほぼないフレスヴェルグの頭部付近に駆け寄り、アヤネの様子を確認する。
アヤネはさすがに片膝をついて苦しそうにしていた。
「よう、おつとめご苦労さん」
「まったくよ。もう少しで食べられそうだったわよ」
手を貸して引き起こしてやりながら軽口を叩く。
さて、問題の傷だが……。
「どう考えてもフェアリーヒールだな」
「そうよねぇ。普通のハンターってどうやってモンスター狩りをしてるのかしら?」
「さあな。うちはうち、やれることを全部使うだけさ」
「了解。回復ちょうだい」
「おう、フェアリーヒール!」
最上位回復魔法をかけると、アヤネの傷がどんどん消えていった。
「……そろそろ、目覚めそうね。もう片方の翼、よろしく」
「ああ、そっちが終わったら、俺もフェンリルたちと一緒に攻撃に加わるから」
「任せるわ。頭の攻撃は任せなさい。あと、たまには回復ちょうだい」
「わかってるって、それじゃあな」
軽口を叩きながら反対側へと回り込み、再びマキナ・トリガーを放つ。
そうすると、翼だけじゃ無く、胴体にもかなり傷を負わせることができた。
「うーむ、かなり瀕死?」
マキナ・トリガーを2発撃つとさすがにMPがほとんど無くなる。
なので、メインはフェンリルによる攻撃なのだが……。
「グォフ!!」
「グガァ!!」
ブレスやかみつきを繰り返すフェンリルたちにフレスヴェルグはなにもできずに削られていく。
そして。
「む、終わりましたにゃ」
「やったー! モンスターを倒せましたよ!」
「いままででもモンスターは倒してたでしょう?」
「いままではフートさんに完全に頼ってばかりだったのでいやだったんです!」
「……確かに。瀕死になってもくちばし攻撃には電撃をまとわせてきてたわね」
「翼だって帯電させてましたよ!」
なにやらヒートアップしている2人娘を放っておいてドロップアイテムを回収していく。
お約束の魔宝石に金銀財宝がたくさん、金銀で作られた宝剣なんてものもある。
さて、最後に魔玉石だが……。
「おーい、アヤネー」
「なによー」
「今回の魔玉石、お前の警棒に最適じゃないかと思ってな」
「なになに?」
「なんですか?」
「えーとな『攻撃時に電撃による追加ダメージと衝撃を与える。感電させることで軽度の麻痺を与えることもある』だって」
「おお、まさに完璧。スタンロッドになるじゃない!」
「これでアヤネさんの攻撃力不足が解消できますね!!」
「フート殿、他にはどんなドロップがあったのですかにゃ~」
「鳥らしく金銀財宝がいっぱい、それから鳥肉もドロップしてるな。あまり多くは無いけど」
「フートさん! 鳥肉のドロップ! ください!!」
「はいはい。分かってるって」
アイテム分配も終え、時間もまだ早かったので前線基地まで帰還。
そちらでも戦闘の様子が見えていたらしく、モンスター退治が近距離で見られたと熱狂していたよ。
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