96.食事会後

また寝坊しました<m(__)m>

あと、鼻をかんだら赤い筋がたらりと垂れてきて辺りを血の海にしてくれやがりました、

更新がやたらと遅かったのはそのためです。

読み返し、一回もできてないので誤字脱字も多いかも……

それでは失礼いたします


*******************


「おーい、ブルクハルトさん。そろそろコイツをしまってもいいか? 重さはいいが、三連型ってかたちのせいで持ちにくいんだ」


「そうなのである。できれば置く場所を用意してもらいたいのである」


 俺たちが置く場所を要求すると、給仕の人たちがさっと食器を片付けてくれてテーブルの上が開いた。

 ご丁寧に、テーブルを彩っていた花瓶のようなものも一緒に撤収されている。


「どうやら食事用テーブルの上に置いてもよさそうだぜ」


「そうさせてもらうよ。いくぞ、リオン」


「任せるのである。それっ」


 俺たちの手を離れてテーブルの上に置かれた魔宝石。

 一番大きい中央部の高さでも2メートル届かないが、代わりに左右対象な魔宝石がついている。

 熱心に見ているのは商業ギルドのマスターと……知らない人だな。

 ここにまねかれているということは、どこかのギルドマスターなんだろうが。


「熱心に調べているのは商業ギルドのと彫金ギルドのだ」


 俺の考えが伝わったのか、ブルクハルトさんが補足してくれる。


「彫金ギルドってのは……あれだ。アクセサリー専門職のギルドで……」


「ハンターや冒険者も魔力のかかったアクセサリーでお世話になってるとこさね」


 ブルクハルトさんの言葉が詰まったところを冒険者ギルドのギルドマスター、ロレーヌさんがかっさらっていく。

 って言うことは。


「『テラ・ディ・ビリランティッァ』のニネットさんも彫金ギルドの会員?」


「……驚いたね、その名前が出てくるとは」


「ニネットは本業が忙しくなりすぎてギルドマスターを降りたくちさ。それにしても、フート、なんでニネットのことを知っているんだ?」


「え、いや。俺とミキの結婚指輪を作ってもらったからなんだけど……」


 その言葉に、ブルクハルトさんやロレーヌさんだけではなく、ほとんどのギルドマスター、特に商業ギルドと彫金ギルドのマスターの視線が注がれる。

 なぜ結婚指輪ひとつでこんなに大騒ぎになるんだろう?


「なあ、フートよ。お前、どこであの店を知った?」


「それは吾輩が。あの店を知ったのはフート殿が先ではなく奥方のミキ殿が先であるよ」


「だろうねぇ。しかし、飛び込みでよく……って青雷にCランクハンターがいれば門前払いはないか」


「そこで、ニネット殿を呼んでもらったのであるよ。『吾輩が』、ふたりに結婚指輪を贈りたかったが故に」


「リオンがねぇ……でもそんな依頼引き受けるか?」


「言葉尻でわかったのであるがやんわり断られたのであるよ。成婚記念のネックレスだけ贈ってかたちは整ったと言うことであるな」


 そうだったのかな?

 その辺の話はまったく聞いてないからわからない。


「ミキ殿はいきなり結婚指輪が欲しいと大声で言うし、てんやわんやであったが……なんとかふたりの人物を見極めた上で指輪を作るという条件を勝ち取ったのであるな」


 そんなことしていたのか、ミキ。

 まったく聞いてなかったぞ。


 だが、この話を聞いて俺以上に動揺している人物がいた。

 彫金ギルドのマスターだ。


「な……あの、気に入った顧客でなければどんなに金貨を詰んでも作らないというニネットがそんなあっさりと……」


「赤の明星だからというわけではありませぬぞ。本気でその仕事を受けて見たいと思ったからこその判断でしょう」


「で、いまその結婚指輪を持っているってことは認められたってこったな」


「まあ、なんとかね。なんだかギミック山盛りにされたけど」


「ニネットのギミックが山盛りなんて聞きたくありませんね」


「それもだけどよぉ。フート。お前いつの間にニネットと知り合ったんだ?」


「え?」


「あの店の……特にニネットお手製の完全オリジナル品なんて年単位で予約して買うもんだぞ? この世界に来てまだ半年たつかどうかのお前さんが入手できるのはおかしいんだが……」


「……普通に二カ月で仕上げるって言われて二カ月でもらってきたけど」


「……そういえば、あの夏のオークション。いい魔宝石が落札できたと年甲斐もなく大はしゃぎでしたな」


「おい、指輪の送り主のネコ。どのくらいの金額を払ったんだよ」


「内緒であるよ。教えてしまうと、フート殿たちが必ず支払うと言い出す故な」


「あー、もうわかった。下手にオークションにだしたらそこの魔宝石の数倍はしそうな指輪のことは聞かなかった。全員それでいいな」


 すべてのギルドマスターが一斉に頷き、話は終わりと次の議題に進む。


「フートよ。肉の切り分けなんだがいつがいい?」


「例の魔法箱? の用意ができたときがいいな。せっかくのおいしい肉を傷ませるのはもったいないし」


「了解だ。そういうわけだから商業ギルドの、急いで用意な」


「かしこまりました。それで販売形式はどうするのでしょう?」


「販売形式?」


「せっかく300㎏の肉を売り出すのです。それをすべて10㎏の小分けというのももったいないでしょう。30㎏の大口なども用意した方がよろしいかと」


「……全部そちらに任せるよ。お金儲けのことはよくわからないから」


「はい。承知いたしました。ああ、あと、学校の方ですが非常に順調ですのでご安心を」


「貴族どもの横やりとかはないのか?」


「そもそも学んでいる層が違いますからねぇ……それに後ろ盾になっていただいている方々はこの国の最上位の皆様ですし。あと、この国って一般的に中央での貴族の力は弱いのですよ」


 なるほど、合点がいった。

 どちらにせよ、順調ならそれでいいや。


「さて、次はあたしかね。アタシは調理ギルドのマスターだ。気軽にオババでいいよ」


「あ、でも、お名前でお呼びした方が」


「もう何年も『オババ』で呼ばれているからそっちの方が通りがいいのさ。今更本名で呼ばれても皆が困っちまうのさ」


「はあ、わかりました。それで、どんなご用件でしょう」


「私の用件はひとつ。あの鹿肉のシチュー。完成させてみたくはないかい?」


 その言葉に、リオンが反応する。

 俺も反応しないわけにはいかなかった。


「やっぱり興味はあるようだね」


「これを作った料理人に聞いたら喜んで飛びつきますね」


「このシチューの弱点は肉と骨以外の素材が一流品じゃないってことだ。もちろん一流品でそろえればいいってもんでもないんだが……どうだい、このオババの誘いに乗ってみないかい?」


「俺が決められることじゃないんですが、本人に聞いたら是非にというでしょうね」


「それなら良かった。今日の味の記憶を頼りに最良の食材をそろえてあげるから一週間だけ時間をおくれ。詳しいことはハンターのを通じて知らせるよ」


「わかりました。お願いします」


 ミキが喜びそうな依頼ができたぞ。

 後は何かあるかな?


「はあい、久しぶり。マルガよ」


「あ、テイマーギルドの」


「覚えていてくれて嬉しいわ。それで、念のため確認したいのだけど、あなたのレッサーフェンリルがフェンリルに進化したっていうのは本当なのね?」


「……連絡してもらうと頼んでおきましたが、耳が早いですね?」


「……この階の声が2階にあるテイマーギルド支部まで聞こえたそうよ」


「……ははは」


「で、本当?」


「本当です。今日は連れてきてませんが」


「それも未確認の新種だとか」


「俺たちが知らないだけかも知れませんけどね」


「……いいわ。明後日か明明後日。テイマーギルドの本部に来られる?」


「えーと、最低でも俺とフェンリルたちですよね。どちらでも大丈夫ですが、どちらがいいですか?」


「それなら明後日ね。……ギルドの歴史が変わる瞬間になるわよ」


 それだけ言い残し、マルガさんは早々に退出していった。

 なんなんだろう。


「あー、他にフートたちに用事のあるヤツはいるか?」


 ブルクハルトさんのしきりに誰も返事をしなかったので、俺とリオンはここで退場。

 とりあえず、ダークトライホーンの魔宝石も忘れずに回収してと。

 なんだか精神的に疲れたよ。

 あー家に帰ってゆっくりお風呂に入ってミキと一緒にすごしたい……。

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