85.未確認モンスターサーチ
その後俺たちは1日かけて白馬の聖域まで戻り、そこでキャンプをした。
不寝番はフェンリルたちがやってくれるというので、それに甘えてお願いすることに。
「さて、フート殿。今回の未確認モンスターについてわかっていそうな情報はありますかにゃ?」
「そうだな……バイコーンやナイトメアホーンの親玉をやってそうってくらいか」
「そうですにゃ。ですが、いままで一度も遭遇しておりませんにゃ。それはどうしてでしょうにゃぁ」
「そいつにとってバイコーンやナイトメアホーンは、減ってもかまわない存在ってことか」
「それか、群れの総数からすると、吾輩たちが倒している群れは極少数であるかにゃ。どっちにしろ、いやな感じだにゃ。と、いうわけで、めんどくさい相手を前提に行動を開始しますにゃ。ところで、フート殿は器用さと賢さをブーストしておいでですかにゃ」
「いや……やっておいた方がいいか?」
「保険のためにお願いするにゃ」
俺はリオンの言葉に従い、【器用さ上昇+】と【賢さ上昇+】を習得する。
もう、ここまでそろえれば全種そろえてもいいんじゃないかとすら思えてくるが、筋力の悲惨さが表に出るだけなので止めておこう。
さて、ここからは慎重に動かなければならない。
推定、群れのボスとご対面するにはどうしたらいいのか。
「さて、群れのボスですが、群れの一番奥の方にいるようだにゃ」
「まあ妥当だよな」
「問題はそんなボスをどうやって確認しに行くかですにゃー」
「まったくもってその通りだが、考えがないわけじゃないよな?」
「もちろんですにゃー。これを使うのですにゃー」
「……これは?」
「ショットワイヤーですにゃー。引き金を引くとワイヤーが発射され、もう一度引くと回収されますにゃ」
「ほほう。……そんな簡単に使えるのか?」
「……本来は修行期間中に教える予定だったにゃ」
「ぶっつけ本番かよ……」
「今日一日! 今日一日は練習にゃ!」
「了解。やってみようか」
ひとりのハンターが二丁持ち歩くということなので、二丁借り受ける。
その辺の適当な木々に向かってワイヤーを発射すると、木々に引っかかったのかがっちりとした手応えが返ってくる。
そうしたらもう一度引き金を引き巻き上げると、身体ごと巻き上げられ木の上へとたどり着いた。
「おお、その調子ですにゃ! 次の木に向かって飛び移ってみせるにゃ!」
近辺にある別に木に照準を合わせて、次のショットワイヤーを発射する。
するとそちらもきっかりワイヤーが絡まったようだ。
さて、ここで問題になるのは……。
「リオン、新しい木にはどうやって飛び移ればいい?」
「現在捉まっている木のショットワイヤーについている緑色のボタンを押すにゃ。そうすると、はりついていたワイヤーが回収されて自由落下するので、その間に新しい木に飛び移るにゃ!」
ボタンボタン……これか。
これを押してっと。
うわっ、いきなり落ちるな。
すぐに新しい木の巻き取りをしなくては。
「うんうん、いい調子ですにゃ。今日は一日その練習ですにゃ」
「これって地面の馬に気付かれないのか?」
「ダメだったら撤収すればいいだけですにゃ。とりあえず試してみますにゃ」
というわけで、ひたすら木々の間を映り渡る練習を繰り返し、その日は終わった。
そして、次の日は本番。
見つけた群れの真上を通り抜けていくのかと思いきや……。
「ここはテラとゼファーに引きつけ役になってもらうことになってもらいますにゃ」
「テラ、ゼファー大丈夫か?」
「「オン!!」」
「足の速さはテラたちの方が早いですし、精神汚染も効きませんにゃ。引きつけ役には完璧にゃ」
「そうか…無理はするなよ」
「「ワフン」」
2匹を送り出すと、早速群れの端にいた魔物たちを連れ出してくれた。
さて、ここからは俺たちの仕事だな。
リオンと一緒に木の上へと登り、そこから様子をうかがう。
「群れの中心はあっちの方にゃ」
「まずはそっちに向かうのか?」
「そうしましょうにゃ。では行きますにゃよ。しっかりついてきてくださいにゃ」
「オッケー。がんばってついていくよ」
こうして俺たちふたりは魔物の頭の上を飛んでいく。
木がないところもあるので、そういったところは迂回して進む。
森の上を飛び続けること数時間、そろそろ帰ることも考えなければいけない時間だ。
すると。
「……見つけましたにゃ」
「……なに?」
「あの巨大な魔物がそうですにゃ。レベルが110、名前未確定なので仮称ダークトライホーンと名付けますにゃ」
「名称未確定って……そんなことあるのか?」
「詳しい説明は後にゃ。まずは周囲を観察にゃ」
見つけたモンスターは普通のバイコーンやナイトメアホーンの4倍ほどの大きさで、頭に3本の角が生えているのが目印になっている。
だが、その周囲にもお供の魔物がいて辺りを警戒している。
警戒している馬は、バイコーンやナイトメアホーンとはまた違った個体のようだ。
さて、この包囲網をどうやって突破し、本命のモンスターを倒したものか。
「モンスターを肉眼で確認したにゃ。周囲の様子も記憶しましたし、急ぎ撤収するにゃ」
「わかった。討伐方法はまた今度だな」
「はいですにゃ。帰るにゃよ」
その後、また数時間の木々の旅を経験した後、テラとゼファーが迎え入れてくれた。
二匹もそれなりに疲れているだろうに、白馬の聖域キャンプまで運んでくれた。
「はてさて、どうやってあのモンスターをおびき出したものですかにゃぁ」
「リオンでも思いつかないよな」
「フート殿のマキナ・アンガーが届いたりしませんかにゃ?」
「残念ながら、攻撃射程が限界だ。ついでに周りのお供もついてくると思うぞ」
「それは無茶な話ですにゃ」
「そういえば、名称未確定ってどういう意味だ?」
「この世界に初めて誕生したモンスターであり、まだ名前を『世界から』つけられていないモンスターの事ですにゃ」
「『世界から』って実は壮大な話だったんだな」
「まあ、吾輩たちにはおなじみなので考えることもなかったのですがにゃ。……さて、あれをどうしますにゃ?」
「正直に言って、俺たちだけじゃ手詰まりだ」
「前線キャンプまで戻ってお二方の意見も聞いてみないとですにゃ」
「いい意見が出るといいが」
「厳しいですにゃ」
あの群れの中にいるボスモンスターをどうやって引っ張り出すのか。
それを考えながらその日は寝ることになった。
さあ、どうしたものかね……。
*******************
昔、銃は禁止されているとなっていましたが、ショットワイヤーのようなワイヤーガンは別物扱いされて問題なく製造・使用ができます。
あと、テイザー銃とかも。
その辺の基準もよくわからないんですよね、呪いって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます