84.モンスターサーチ準備

「連絡は終わったのか?」


「はいですにゃ。モンスターハント、ほぼ確定ですにゃ」


「そっか。そういえばサジウス領の方は」


「あー……」


「逃げられたか」


「気付いていたなら聞かないで欲しかったにゃ」


「念のためだよ。あの赤の明星は倒しておかないと危険な気がする」


「確かに。フート殿以外にとっては脅威でしょうなぁ」


「俺にとっても脅威になりかねないよ」


「……それは、今回取り逃がしたのが痛いですにゃ」


「まあ、気持ちを切り替えようか」


「ですにゃぁ」


 リオンは肩を落としながら一言ため息をつき、思いを振り切るように話を続ける。


「まず、モンスターハントの手順ですにゃ。モンスターハントをするには、まずモンスターそのものを発見する必要がありますにゃ。発見した後は、その生態を観察しながら討伐方法を検討するにゃ」


「意外と大変なんだな。というか、この間のゴブリンはなんだったんだ」


「……遭遇戦もありえますにゃ」


「まあ、いいか。それで、今回はどうするんだ」


「普通に発見と観察から行きますにゃ。今回のモンスターはバイコーンやナイトメアホーンの長になっている可能性が高いにゃ。そうなると、群れとの戦闘になる可能性がありますにゃ」


「そうか……実際にはどうやって調査する?」


「まずはテラとゼファーに群れを探してもらいますにゃ。群れを発見したら片方に戻ってきてもらって、吾輩たちが合流しますにゃ。そして獲物がいるかどうかを確認する。それを繰り返しますにゃ」


「わかった。でも、モンスターって見てわかるものなのか?」


「基本的に見た目ですぐわかりますにゃ。体が大きかったり、色味が違ったり……さまざまな特徴がありますにゃ」


「了解。それじゃあ戻って残りのふたりとも話をしてみよう」


 俺たちは前線基地からキャンプ地へと戻る。

 そこでハウス内に待機していたふたりと情報共有を行う。


「ふーん、あの馬たちの大本を見つけに行くのね」


「わかりました。それで、私たちはついていっても大丈夫ですか?」


「ちょっとミキ、なにを言っているのよ?」


「うーん、正直に言うと、ふたりの精神抵抗力では怪しいですにゃぁ」


「やっぱり」


「ってことは私たちって留守番!?」


「……していてくれると助かるにゃあ」


「テラとゼファーは大丈夫なのに……」


「レッサーフェンリルの精神抵抗力は生半可なものではないですからにゃぁ」


「……わかったわよ、キャンプでじっとしてるわよ」


「そうしてくださいにゃ。あ、キャンプ地は念のため、白馬の聖域ではなく前線キャンプにしてくださいにゃ」


「それってなにかあってもすぐ駆けつけられないじゃない!?」


「なにかあったら気合いで逃げ出しますにゃ。ともかく、これは決定事項ですにゃ」


「……うー、私の精神抵抗の低さが憎い!」


「精神抵抗は賢さ・器用さ・魔力のもっとも高いものの最大値ではあるのですにゃが……」


「よし決めた! その三種の強化スキルを取る!」


「私もそうします。実際にモンスターがいたら、戦闘は避けられませんからね」


「まあ、あって困るものでもないですからな。では、明日からは吾輩たちは調査に出向くである」


「わかった。準備は……いらないな」


「はいですにゃ。いつもの装備で十分ですにゃ」


 その後、俺たちは食事を取り就寝となった。

 いつもよりミキが甘えるように寄り添ってきたのは、寂しさか無事を祈ってのことなのか。

 そして、翌日、ついにモンスターの生態調査に出発することとなる。


「さーて、モンスターサーチですにゃ。ハウスが使えないから気をつけるにゃよ、フート殿」


「わかっているよ。正直、俺は何㎞も離れて本当にハウスが維持できるかが心配だけどな」


「そのときはあとを追わせてもらうわよ?」


「はい、こんなところに置いてきぼりは危険ですからね」


「にゃはは、そんなことにはならないはずであるがなぁ。スキルの説明文を読む限りでは」


「俺が召喚しない限りはこの場所に残ったままのはずだな」


「ミキ殿がいないのがさみしいからって召喚するんじゃないにゃぞ?」


「わかってるさ」


「……必ず帰ってきてくださいね」


「しくじるんじゃないわよ」


「当然ですにゃ。ベテランハンター、リオンの腕前をみせてあげますにゃ!」


「調子に乗って失敗するんじゃないわよ、ネコ」


「わかっておりますにゃ。……さて、行きますかにゃ。フート殿」


「ああ、行ってくるよ」


「はい、いってらっしゃい」


「気をつけてね」


「「ウォン!」」


 さあ、挨拶も済んだし出発だ。

 どんなモンスターが待っているのか、確実に見つけてこないとな。

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