邦奈良の都での生活
59.変わった生活・変わらぬ生活
「うーん、よく寝た」
今日も朝5時頃に目を覚ます。
窓の外はもうすでに明るい。
「むぅ……フートさん、もう朝ですか?」
「ああ、朝だ。さっさと起きるぞ」
「はーい。あ、私の着替え見ますか?」
「見ないよ、ほらさっさと着替えよう」
「うう、最近旦那様の態度が冷たい……」
「ほら、小芝居をやってないで急ぐぞ」
「はーい。でも着替えを見たくなったらいつでもかまいませんからね」
ここ数日の生活の変化で最も大きいものは、やはりミキと同じベッドで寝るようになったことだろう。
ちなみに、まだ男女の関係にはなっていない。
そう言うことは早まる前にゲーテさんが教えてくれるそうだ。
ミキも俺の寝顔が見られれば安心で、俺も特にそういう欲はないのでそういう関係はまだない。
ちなみに、俺たちがいま住んでいる部屋は、元々住んでいた部屋の奥にある大きな部屋だ。
元は館の主人が寝室として使用していたらしい。
隣には執務室も付いている。
結婚を機に、俺たちはその寝室に移り住んだのだ。
家精霊たちは大歓喜して部屋のほこり取りや掃除をしてくれたようで、俺たちが足を踏み入れたときにはほこりひとつ落ちてなかった。
パールやブラウニーたちに奮発してあげたいんだけど、いつもの食事が最高のごちそうらしいのでそういうわけにもいかずもどかしい。
さて、クローゼットや洋箪笥などもきっちり揃っており困ることはないかと思ったが、やはり困ることがひとつだけあった。
ベッドだけは経年劣化に耐えられず、買い換えるしかなかったのだ。
家妖精たちでもスプリングの手入れは難しいらしい。
そういうわけでお金を渡し、ベッドをミキに買ってきてもらったのだが……キングサイズベッドを買ってきた。
日本のキングサイズベッドは確かふたり用+αだった気がしたのだが、これは明らかに三人は余裕で寝られるサイズだ。
ミキに理由を聞いても「ベッドは大きい方がいいじゃないですか。落下しないし」とのこと。
何か企んでいる気がするが……まあ、よしとするか。
ちなみに、天蓋付きのベッドである。
こういうベッドが夢だったとか。
「さて、着替えが終わったな。今日の予定はなんだったか……」
「ハンターギルドに行ってギルドマスターたちに挨拶をして、宝飾品店『テラ・ディ・ビリランティッァ』に行きます。ニネットさんにフートさんのことを認めさせてみせるんです!」
「そっか。教えてくれてありがとう」
「いえいえ。それじゃあ、そろそろリビングに行きましょうか」
廊下抜けてリビングにつくと、リオンとアヤネのふたりはすでにテーブル席に着いていた。
俺たちもテーブルに着くと、シルキーのパールが朝食を運んできてくれる。
普通の人なら胃もたれしそうな量の食事量だが、体が資本のハンター。
朝食もしっかりと取るのがハンター流なのだ。
俺には病人食なので雑炊メインの軽めメニューだけど。
「フート殿の病人食はあとどれくらい続ければよろしいですかにゃ?」
「うーん、あの衰弱状況ですから、全体で一カ月様子を見て、それでまだ弱ってそうならもう少し延長、でしょうか」
「そうかにゃ。やはり、魔術も最大出力を使うとその代償は大きいものなのにゃ」
「武技もか?」
「流派や武器にも寄るけどにゃ。使った本人も大ダメージを負う技というのはあるにゃ」
「怖いわねぇ。それで、フートが本調子になるまでの約2カ月間、なにもしないわけじゃないんでしょ? 何をすればいいの?」
「とりあえず今日はハンターギルドマスターに挨拶と、フート殿の指輪のことで終わりにゃ。明日以降はもう少し、フート殿のリハビリをサポートにゃ」
「……なんか済まないな、みんな」
「フ-ト殿がいなかったら皆殺しもあったから気にするにゃ。それから、今週末はオークションがあるから、それに参加にゃ」
「オークション? なにか落札したいものでもあるのか?」
「強力な魔物の魔石は落札したいであるが、オークションに出回るのは強い魔物ではなく、希少性の高い魔物の魔石にゃ。故に落札はしませんにゃ」
「じゃあ、なんで参加を?」
「フート殿、皆さんは出品者側だと言うことをすっかり忘れているのではないのであるかな?」
「うん?」
「はぁ……フート殿いわく黒熊の肝臓と熊の手、それから魔石がオークションにかけられるのである!」
「ああ、そんな話もあったなぁ」
「ありましたねぇ」
「この一週間が濃すぎてすっかり忘れてたわ」
「……まあ、この一週間が濃すぎたのは否定できませんにゃ。ともかく、決まっている予定はこれだけですにゃ」
「そっか。それならゆっくりできそうだな」
「ゆっくりしたいものですにゃぁ」
「なにが言いたいんだよ?」
「こういうときに限って何かを見つけるのがフート殿ですかあらにゃぁ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます