誓約のネックレス
55.フートの決意
寝坊した/(^o^)\
一発目からこれとは先が思いやられる……
一部54話では描かれていない描写がありますが作者が書き忘れたためでなく、意図的にカットしたものです。
54話も結構長かったのでミキの錯乱描写とそれをなだめるリオンとアヤネなんて書いてたら数百文字増えてたので……。
なおミキ錯乱中のフートはテラとゼファーが二匹でソファーになってそこで寝かされてました。
**********
「あー、暇だな……」
「またそんなことばかり言って。ダメですよ、フートさんは病人なんですからね」
「へいへい。了解ですよ」
いまは、あのゴブリン討伐戦から4日後。
場所は俺たちの家にある俺とリオンの部屋。
いまの見張りはミキである。
状況を説明すると、あの討伐戦が終わって意識を失った後、俺は丸二日眠り続けた。
医者の見立てでは極度の疲労状態によるものだと言うことだったらしい。
実際問題、個人的にはたいした消耗ではなかっただろうが白光の翼を連発したし、アグニには極限まで強化したマキナ・アンガー、そして最後は冒険者の治療だ。
確かに倒れても無理はないと思う。
さて、そんな状況で一番混乱……というか困惑したのはミキだったらしい。
アグニの相手をするのが自分だったらよかったとか、冒険者の治療には無理にでも行かせないほうがよかったとか、かなりひどいものだったようだ。
そちらの方はアヤネとリオンがなんとか説得して落ち着けさせたみたいなのだが、今度は目を覚ました俺のお目付役としてほとんどベッドから離れてくれない。
俺の身体自体は日常生活を送る程度には問題ないのだが、それでもベッドに縛り付けておきたいらしく、俺も暇ではあるがおとなしくベッドで横になっている。
なんだか逆らったらいけない気がするし。
「……ねぇ、フートさん。フートさんはやっぱりアグニとの決着をつける気なんですか?」
「それがどうかしたのか?」
「はぐらかさないできちんと答えてください」
「そうだな。あいつは俺を指名してきた。それに、俺もあいつを倒さなきゃいけない。そんな感じがする。だから俺は逃げる気なんかないよ」
「どうして逃げないんですか?」
「へ?」
「逃げたっていいじゃないですか」
「ミキ?」
「確かにアグニを倒せなければ邦奈良の都は滅ぶでしょうし、この国、えーと、たしか那由他の国ですか。この国も大変なことになるでしょう。でも、それって特別なことじゃないらしいですよ? この世界、リバーンの歴史を紐解けば人間同士の戦争で滅んだ国なんかよりモンスターに滅ぼされた国の方が多いらしいんです。それがひとつ増えるだけじゃないですか」
「……どうしたんだ、ミキ?」
「私、フートさんが目を覚まさないでいる間、ずっと考えていました。赤の明星ってなんだろうって。あの黒い世界で名前も知らない神様に選ばれただけの存在なのに、ここまでがんばる必要があるのかって」
「……それは、そうだがな」
「あの死道にいたときは、とにかく生き残ることに全力でほかになにも考えられませんでした。でも、いまは違います。私たちがこの国を守る理由なんてないんですよ?」
「……」
「それでも、フートさんは戦うんですか? いまから逃げ出さなくても来年、アグニと戦った後から逃げても間に合いますよ?」
「……それもそうだな」
「フートさん……」
「でも、それも違うと思うんだ」
「……」
「俺がアグニと戦いたいのは国を守るとかそんな高尚な理由じゃなく、ただ単に自分から逃げたくないだけなんだと思う」
「……あんな化け物相手なのに、自分から逃げるんですか?」
「ああ、あんな巨大な壁、どう崩せばいいかまったく見当もつかないよ。それでも挑まなくちゃいけない。それは決まっている気がするんだ」
「……フートさんってときどきバカですよね。無茶をして熊退治をしたりとか」
「かもな。でも、ミキはそんな俺の身勝手に付き合う必要はないんだぞ」
「……そうですね。私はフートさんと別の道を歩んでもいいんですよね」
「ああ、そうだ。元々、あの死道を抜けるためにお互い助け合ってた仲なんだからな」
「……それじゃあ、ここから先は私の自由でいいんですね」
「……正直、寂しくなるけどな」
「わかりました。それでは、席を外します。……あ、私の代理はアヤネさんに頼みますから」
「……結局俺は寝たままなのか」
「病人は休んでいてください」
**********************
「それじゃ、ミキ。私はフートの監視にはいるから」
「お願いします。放っておくと魔法の鍛錬でも始めそうな勢いがあるので」
「元気そうでいいじゃないの」
「時と場合によりけりです」
「まあ、これからのイベントを考えれば倒れられてたら笑えないものね」
「そうですね。それじゃあ、行ってきます」
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