54裏.対ゴブリン掃討戦報告会 後編

さあ、報告会本編開始だ!

今回はほぼセリフだけの応酬!

ついてこれる読者とできない読者を選ぶ問題作だ!

なにせ作者もわからなくなった人物がいたぞ!

さあ、がんばってくれたまえ!

**********


「では会議を進めよう。まず、全体の話だが、掃討自体は成功したのだな?」


「ええ、成功しましたよ。前日に山頂の本丸にいたキングとクイーン、それからモンスターを討伐した威力偵察者なども居ましたが、全体としてゴブリンどもの総数はほぼ平時以下になりましたねぇ」


「……その割には冒険者ギルドは被害が甚大であったと聞くが?」


「否定できませんねぇ。最後の砦でゴブリンの罠にかかり、多くの死傷者を出しちまいましたからねえ。幸い、優秀な治癒士が無理を押して治療に当たってくれたおかげで回復できたものもいますが」


「……それは我ら教会に対する当てつけかな?」


「いえいえ。教会がそのような戦場に出てくるなど考えちゃいませんよ。まぁ、ハイヒール程度が使える回復術士がもう数名いれば救えた命が多かったのは事実ですがねぇ」


「ふん、小生意気な。優秀な治癒士とやらもどうせミドルヒール止まりだろう? 治癒の御業は神が我ら教会に与えたもうたものなのだからな」


「いいえぇ。グレーターヒールで回復してくれましたよ? おかげで帰りは魔力切れの副作用で意識を失い、仲間に背負われて帰ったと聞きましたがね」


「バカな!? 教会以外でグレーターヒールが使えるものなどいるものか!!」


「使えるからいるんですよねぇ。……そろそろ、次の話に行きませんか? 冒険者ギルドは急ぎで治療と受付体制の再構築を行いますので。そのために、各地から監察官を呼び戻していたところですしねぇ」


「監察官だと!?」


 教会から参加していた枢機卿が慌てた様子を見せる。

 あいつら、なにかやってやがんな?


「おや、調べられてはマズいことでも?」


「いや、そんなことは……」


「……冒険者ギルドの話はわかった。問題はハンターギルドからの報告だ。これは真なるか?」


「ええ、まったくもって夢であって欲しいのですが事実です」


「……単独でレベル7魔法を行使できるものがいること自体が驚きだが、それを受けてなおまったく小揺るぎもしないモンスターか……」


「王よ、こんな報告デタラメでしょう。大方、ハンターギルドが予算をむしり取るためにでっち上げたものかと!」


「財務大臣よ、お前の話はわかった。……だがな、我はあの夜見たのだ。東の空を灼くまばゆき白き閃光を」


「恐れながら、陛下。哨戒に当たっていた騎士や警備についていた近衛騎士などからも報告が上がっております。あれは夢ではありません」


「……なんだよなぁ。あれが夢であって欲しいんだよ。あれはな、うちの赤の明星がレベル7魔法『マキナ・アンガー』でモンスター『アグニ』に攻撃していた証明なんだよ……。夢であって欲しくて、ここに来る前にゴブリンの山をもう一度見てきたが、雷光に灼かれた地面がくっきりと残っていやがったしよ……」


「……ハンターギルドで赤の明星が保護されていたのは聞いておりましたが、そこまでの力があるとは聞いておりませぬぞ」


「報告の必要がなかったからな。人前で使える魔法じゃないし、マキナ・アンガー」


「いや、ちょっと待つのだ。レベル7の魔法に『マキナ・アンガー』などという魔法は実在しておらぬ。なにかの間違いであろう」


「本人いわく、レベル6以上の魔法は誰かが勝手につけた魔法名にすり替わってるんだとさ。だから、儀式魔法のような大規模魔法にしないと成功すらしないし、そもそも精霊が力を貸したがらないんだと。で、レベル7の魔法名は?」


「宮廷魔術師長、答えるのだ」


「『雷神の怒り』、にございます」


「それが嘘で正式名称が『マキナ・アンガー』なんだってよ。だから、魔法名と詠唱句……レベル7以上は聖句って言うらしいが、それと精霊の協力さえあれば、ひとりでも使えるらしいぜ、レベル7魔法」


「バカな、バカな、バカな!! 我々、宮廷魔術師団がどれだけ長い年月を研鑽してきたと思っているのだその者は! たったひとりで真理にたどり着き、自在に使いこなして見せるとは!!」


「気持ちはわかるぞ、宮廷魔術師長殿。我ら魔術師ギルドも長年の研鑽が一瞬にして瓦解したわけですからな」


「魔術師ギルドマスター……」


「ですが、気持ちは切り替えねばなりませぬ。これからは正しい魔法名と詠唱句を学び、何者が魔法名を欺くなどという真似をしたのかを突き止めねば」


「……そうですね。ハンターギルドマスター、できればその赤の明星に正しい魔法名と詠唱句を学びたいのですが……」


「あー……あいつも知っているのは雷魔法だけらしくってな。それでも良ければ、書いて提出するように伝えておくぜ」


「助かります。……そして、紛れもなく、レベル7魔法は行使されたのですね」


「ああ、あとで兵士でも騎士でも確認しに行ってもらって構わない。なんだったら俺が連れて行く。使ったあとはすぐにわかるぜ、何せ地面も草も真っ黒に焼け落ちてるからな」


「……わかった。其の方の言葉を信じよう。それで報告書にあったモンスター【斬鎧の武者】アグニ、どうやって討ち滅ぼすのだ」


「……今話した赤の明星たちをガチで鍛え上げる。そして、アグニが言っていた期限の二年後、そこでうち倒すしかねえな」


「まて! 一年後にも現れるのであろう! そのときには見逃すのか!」


「やれるだけはやってもらうさ。だが、一年じゃレベルもスキルも届かねぇよ。可能性があるとすれば二年後だ」


「……委細承知した。国民への周知は?」


「それは俺の考えることじゃねぇな」


「……確かに。甘えすぎたようだ」


「こちらこそ、無礼な言葉、申し訳ない」


「なに、今更だ。それで、育成するプランはあるのか?」


「本人が魔力切れの症状を起こしている間はなにもできねぇよ。それが治り次第、モンスターハントの旅に出てもらう予定だ」


「……それは大きく出たものだな」


「そうでもしなきゃ勝てねぇのさ。細かいプランは『青雷』が組んでいる」


「承知した。ハンターギルドマスター、冒険者ギルドマスター、魔術師ギルドマスター。他に発言はあるか?」


「んじゃ、俺からひとつだけ。お前ら、俺らから俺らの赤の明星を取り上げようとするんじゃねえぞ? すでにあいつらは国家級戦力だ。それがこの国に向けばどうなるか……考えてから動くんだな」


「ふぅ、わかった。この場にいない貴族どもにも伝えておこう」


「それでは俺からは以上だ」


「私はこれ以上ないねぇ」


「儂もないのぅ。ああ、レベル7魔法の痕跡とやらを確認するときは儂も同行させておくれ」


「内務卿」


「はっ。ハンターギルドマスター、冒険者ギルドマスター、魔術師ギルドマスターはこれにて退席を」


 俺たち3人はようやくこの狭っ苦しい空気の部屋から出られた。

 あーあ、このあとは騎士どもを魔法の痕跡に連れて行く必要があるだろうし、自分が言い出したとは言えめんどくせぇなぁ……。


*******************


「国王陛下、一体どうなさるのですか!」


「騎士団長、落ち着け」


「落ち着いてなどいられますか! 国の一大事ですぞ!」


「だからこそ落ち着けと言っておる。国の舵取り役の我らが右往左往していれば人心も乱れよう」


「ですが……」


「国王陛下。臣民へはいかがなされますか」


「いたずらに事を荒立たせる必要もあるまい。それにハンターギルドの報告書を見れば、二年後には国を滅ぼすほどの災いと化す、とある。逃げ場がないのは我らも含め誰も彼も同じであるよ」


「では、知らせないという方向で……」


「ああ、先の3人や今回の関係者にも可能な限り口止めするように伝えよ」


「可能な限り、でございますか」


「このような話、裏がとれねば酒場の笑い話にしかならぬ」


「……それもそうですな」


「では、本日の会議は以上とする。皆の者、大義であった」


「「「はっ」」」


 国王陛下が去った会議場。

 そこで誰かが残り話をしていた。


「今回の話、どう思うかね」


「国王陛下はハンターギルドマスターを頼りすぎかと。幾度となく命を助けられた仲とは言え、今回は国の一大事ですぞ」


「私には考えがある」


「ほう、なんですかな?」


「サジウスに現れたという赤の明星を我らの手元に置くのだ。そうすればハンターギルドの鼻を明かせるというもの」


「そうですな……いっそのこと、ハンターギルドの先回りをしてモンスターハントをさせるのはいかがでしょう?」


「悪くない案だ。よし、サジウスに連絡を取るぞ。内密にな」


「承知いたしました」


*******************


どうでしょう、会話劇でした


わかりにくいって?

作者もわかりにくいから大丈夫だよ。


誰かが行動を起こすたびに


○○はテーブルを叩きつつ叫んだ。


とか入れればいいんだけど、あえてやらなかったのさ。


作者が昔、書籍化するときに注意されたことの逆をあえてやっています。

ご容赦を。



あ、明日は4話一挙更新だよ!


1話目はいつもどおり7時過ぎ

2話目は12時過ぎ

3話目は15時過ぎ

4話目は19時過ぎ


4話一挙更新(しかも総て1話単位の話数が進んで行く)理由は読んで楽しんでくれ!


いや、客層が違うのは理解してるんだけどやらなくちゃいけない話なんだ


そして、やるなら今しかないんだ、彼女的に

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