36.模擬戦(フート)・結果発表

本日2度目の公開

3回目の更新は22時前後の予定

正直、正確な時間はわからない

ごめんね!

*******************


「さあ、お待たせしましたのである! 模擬戦第三試合ライラ対フート殿の準備が整ったのであるよ!!」


 きっかり30分後、俺たちの試合が行われるとアナウンスが流れてきた。

 呼ばれて入場した先にはすでにライラさんが待っていた。


「さっきはニコレットの治療にありがとうね。魔力は30分で回復したかしら?」


「ええ、問題ないですよ。俺の場合、魔法の行使にあまり魔力を使いませんし……」


「え?」


「まあ、いろいろとあるんですよ。さあ、始めましょうか」


「さあさあ、第三試合開始ですぞ!」


 お互いに距離を離し、相手の出方をうかがう。

 ライラさんは杖の他に弓も持ってるからレンジャーみたいなこともできるのかな?


「まずはお手並み拝見〈炎の槍よきたれ我が敵を討て〉フレイムランス!」


 お、あれが魔法詠唱なのかな?

 俺の場合、魔法詠唱をしなくても効果が発現してしまうからなぁ。


「ちょちょっと! 防御くらいしなさいよ!?」


 あ、いけね。

 一切脅威がないから忘れてた。


「精霊たちよ散れ」


 俺がこの一言を告げるだけでフレイムランスは霧散する。

 この現象にライラさんだけでなく、開場も静まりかえっていた。


「ちょ、いまのなに?」


「うーん、魔法制御力が並外れて高いと相手の魔法に干渉して解除できるとかなんとか」


「あなたも理解できてないんじゃない!」


「試したの初めてだしなぁ。俺の場合、精霊魔法しか解除できないし」


「そういうことなら見せてあげるわ。〈輝け輝け我が翼よ。すべてを焼き尽くさんがためこの世に降臨せよ。その力は我が意思なり、その思いは我が力なり、解き放たれたそのときはすべての敵を焼き付くさん! 白光の翼!!〉」


「にゃんとー!! ここでライラがレベル5火魔法を解放したのである! 打ち消すのに失敗したら被害甚大であるぞ!」


 白光の翼かー、あれは干渉して解除は難しいな。

 となると対抗魔法だけど……うん、水の精霊さんに力を借りよう。


「〈水の舞殺刃〉」


 放たれた白光の翼と水の舞殺刃が訓練場中央付近でぶつかる。

 同時に炎と水がぶつかるすさまじい衝撃波が周囲を包んでいく。

 ……あーさすがにこれだけの大魔法を使ったら、あっちは魔力切れじゃないかな?


 そのとき殺気を感じたのでその方向にエアウォールとロックウォールの二枚防御を貼る。

 案の定、そこに矢が三本刺さる音が聞こえた。


 そして、さらにライラさんが駆け抜けようとしていたのでファイアーウォールで行く手を阻み、ライトニングボルトで攻撃する。

 それらの攻撃はすべて躱されて、ナイフを持って接近戦を挑んできた。


 本来ならこれを受ける必要はないんだけど、試験ということで受けて立つ。

 しかし、ライラさんの変幻自在のナイフ捌きに防御一方。

 それでも【護身術レベル4】が働いているのか、致命的な攻撃はかわせるのでなんとかなっているイメージだ。

 そして距離を離すためファイアボムを発動させてはじけ飛び、距離を取ったところ試験終了となった。


 普段の新人テストとは格が違う戦いが見せられたようで観客は大満足のようだ。

 そちらに手を振って挨拶をして訓練場をあとにする。

 いや、なかなか実りのある試験だったな。


「一言いいかにゃ?」


「なんだ、リオン?」


「三人ともやり過ぎにゃ! あれじゃ、三人とも赤の明星とばらしているに等しいにゃ!」


「そんなことか。それは隠していたってすぐにばれるだろうし、仕方がないんじゃないか?」


「うぐぐ……まあ、そうなんにゃけど」


「ほら、ギルドマスタールームに行くんだろ。早く行こうぜ」


 頭を抱えているリオンを連れて俺たちはギルドマスタールームに入っていく。

 そこにはギルマスとサブマスが揃っていた。


「おう、また派手にやったなぁ」


「まあ、禁止していませんでしたからねぇ」


「とにかく、終わっちまったもんは仕方がない。でだ、お前たちのギルドランクについての発表だ。ライラ以外からはすでに報告を受けているぞ」


 誰かが息を飲む音が聞こえた。

 そんなに緊張するものでもないけどな。

 低かったらがんばってあげればいいんだし。


「まず、アヤネだ。アヤネが一番評価が低いな。一応CランクではあるがDランクよりのCランクだそうだ。思い当たる理由はあるか?」


「ええと、私ひとりでは敵を倒すための手段に乏しいからですか?」


「そういうこったな。お前らにはいろいろ事情があるだろうし、急ぎではないといえなんとかする方法を考えてくれ」


「わかりました。ありがとうございます」


「次、ミキだ。ミキは文句なしのCランクだな。おめでとう。ただ、ニコレットからは課題が出ているな」


「課題……でしょうか」


「もう少し、足を止めずに戦う方法を見つけろだとさ。お前さんの防御力じゃ足を止めてのガチンコファイトには問題ありってことだろう」


「……確かに。対策を考えておきます」


「最後に……最大の問題であるフートなんだが……」


「そんなに問題なのか?」


「いやぁ、ライラの意見をまだ聞いていないからなぁ。ただ、その意見を聞かずとも評価は変わらないというか……」


「それで、ランクは?」


「一応C、実際にはBランクでも問題ないという意見が大半だったんだがな」


「まあ、みんなと一緒の方がありがたいよ」


「そういうと思ったよ。お前の総評としては、魔法はデタラメだ。ランク5魔法を数秒で組み立てる魔法構築能力。弓が放たれてからウォール魔法を二枚作れる俊敏性。なにより、ランク3魔法とはいえ、相手の魔法を乗っ取るなんてめちゃくちゃだ」


「同じハイエルフのサブマスなら慣れればできると思うんだけど……」


「私は人外になりたくありません」


「で、欠点は近接戦闘になったとき対応力の低さが露呈したな」


「ああ、俺もそう思った。あればかりはどうにもならないな」


「近接戦闘についてはもう少し鍛えないとな」


「……近接戦闘用の魔法っていうのもあるんだけどさ」


「……まじかよ」

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