7.魔石の確保と食糧問題

「ここに二匹とあっちに一匹倒れていたはずなんだがなぁ」


「どこにもいませんね」


「どこに行ったのかしら?」


 狼たちがいたところにその死骸はなかった。

 周囲をよく調べてみると、代わりにきれいな石が落ちている。


「……この石はなんだ?」


「フート! それ! きっと魔石よ!!」


「……魔石?」


「モンスターの核とかそういう感じのアイテムですね。異世界物の定番ですよ」


「そういう物に詳しくなくてすまないな」


「いえ、そういうつもりは……」


 とりあえず、これは魔石らしい。

 【鑑定+】で調べてみると以下の通りだった。


【鑑定結果:ミミクリーウルフの魔石】

ミミクリーウルフの魔石。

<詳細内容>

種族名ミミクリーウルフの魔石。

ミミクリーウルフは木が狼の姿に化けた魔物である。

魔石の属性は弱い土属性。


 ふむ、なるほど。

 さっきの狼は、そもそも木だったのか。


「確かに、これは魔石で間違いないらしいな」


「鑑定したの?」


「ああ。さっきの狼の正体もわかったぞ。狼の姿をした木だそうだ」


「根本的に木だったんですね。殴った感じが変だと思いました」


 魔石以外にも木材……というか薪のような物が手に入ったのでよしとしよう。

 そして、また三人で会議だ。


「とりあえず、解体は必要なさそうなことがわかったわ。魔物については、だけど」


「普通の動物だと、きっと解体しなくちゃですよね……」


「ちなみに解体の知識は? 俺は全くないけど」


「あるわけないでしょうが」


「私もありません……」


「だろうな」


 都市部に住んでた日本人なら動物の解体なんて滅多なことじゃできないだろう。

 それこそ、そういう業者じゃないとな。


「そもそも、解体ナイフの一本すらないこの状況じゃどうしようもないわよ」


「そうですね。……そうなると、切実な問題が出てきました」


「切実な問題?」


「食料がありません……」


 なるほど、それは大問題だ。

 あの神様とやら、数日分の食料くらいくれてもいいだろうに。


「とりあえず腹持ち具合から考えてあと数時間は大丈夫そうだけど、二人はどうかしら?」


「俺も大丈夫だと思うぞ」


「私も大丈夫です」


「じゃあその間になにか食料を確保しないとね」


「果物を探すとかどうでしょう?」


 果物か……否定的な意見は言いたくないが。


「鑑定してみないと毒物かどうかわからないがな」


「……見た目は大丈夫でも実際は毒物とかありそうよね」


「あと、三人ばらけるわけにはいかないぞ。さっきの戦闘もそうだったけど、俺たちは三人がかりでようやくこの森の魔物と戦えるレベルだ」


「ですよね。あと、食料を手に入れてもどうやって持ち運びましょうか?」


「背嚢って言うのかしら? そういう袋なら持ってるわよ」


「あ、それなら私も持ってるかも」


 二人はバッグになる物を持ってるのか……。

 俺はないんだよなぁ。


「悪いけど、俺は持ってないな」


「なんて言うかイメージそのままよね。ハイエルフ様って感じ?」


 悔しいが、そのとおりだな。

 代わりに覚えられるスキルでなにかいいものはないか……。

 あ、ちょうどいいのがある。

 さっきの戦闘でソウルも手に入ったみたいだし、覚えてしまおうか。


「……代わりにアイテムボックススキルを覚えてるぞ」


「……それ、なんで最初に言わないのよ」


「まあ、秘密だ」


「絶対、あなたのってなにか秘密があるわよね」


「そうですね。フートさん、話してもらえませんか?」


 さて、どうしたものか。

 ソウルバーチャスの秘密は俺の生命線でもあるし……。

 ただ、この二人はしばらくの間、運命共同体でもある。

 話すべきか、話さざるべきか。


「……そうだな。俺の秘密を話してもいいが……その前にお客さんだ」


「またぁ? 今度はどっち方向から?」


「やっぱり灰色の森方向から。さっきよりは大分遅い速度でやってくるな」


「とりあえず魔物退治が優先ですね。がんばりましょう、皆さん!」


 やってきたのは、またしても狼型の魔物が四匹。

 今度は賢さもあるのか波状攻撃も加えてくるが、さっきのミミクリーウルフよりかなり体力が低いらしく、アヤネの攻撃でも撃破されていた。

 結局、ミキが一匹、アヤネが一匹、俺が二匹倒したところで戦闘終了。

 やはり、魔物を倒すと直接ドロップアイテムになるらしく、今回は魔石と肉が手に入った。

 三人で節約しながら食べれば三日は持ちそうな量だし、これで食糧問題は一時解決かな。


「さて、それじゃあフートのスキルを説明してもらいましょうか?」


 ……ちっ、逃げられなかったか。

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