8.ソウルパーチャスの話
「はぁ……わかったよ、説明するって。その前に落ち着いて話せる場所に移動したいがいいか?」
ソウルパーチャスについて説明するなら【ハウス】スキルを見せてもかまわないだろうし。
「それで落ち着ける場所ってどこでしょう? 私たち、ここから移動してないんですが」
「ああ、ちょっと待ってくれ……【ハウス】召喚!」
俺がハウススキルを発動させると俺が指定した場所にこぢんまりとした家屋が出てきた。
造りはしっかりしているが一階建ての建屋で、災害時の仮設住宅より狭そうだ。
「……フートさん、これって家ですよね?」
「小さいけど家だな。家を呼び出すスキルなんだ」
「でも、この中って安全なのかしら?」
「説明では魔除けとか気配遮断みたいな結界が効果を発揮しているらしいから、大丈夫なんじゃないかな」
「ここで悩んでいてもしょうがないですよね。フートさん、お家、お邪魔します」
「ああ。アヤネもどうぞ」
「わかっているわよ」
アカネを伴い家の中へ。
なんとなくそんな気はしていたけど、靴は玄関で脱ぐスタイルか。
靴が脱ぎにくいから、なんとなく大変かも。
「あら? 先に入ったミキは?」
「そういえばいないな。どこに行ったのだろう」
この部屋は一部屋しかなく、台所部分とそれに6畳ほどのスペースである。
人が隠れる場所なんてないように見えるんだけど……。
「アヤネさん! 見てください!! シャワーが使えますよ! あと水洗トイレも!!」
「なんですって!? こんな便利な能力を黙っていたの!?」
「追求するところはそこかよ……」
でも女子的には大問題なんだろうな。
毎度毎度草むらの影に隠れて用を足すのも大変だろうし。
「他になにか隠しているものはないでしょうね!?」
「他に隠しているといわれてもな……このスキルを入手した方法自体を隠していたわけだが」
それを聞いて二人とも少し落ち着いた様子だ。
あのハイテンションのまま問い詰められても困るからいいことだ。
「それじゃあ気を取り直して。フート、あなたが隠しているスキルはなんなんの?」
「後から必要なタイミングで便利なスキルが出てきたり、なにかとおかしいですよ」
「だよなぁ。わかった説明するよ」
我ながら甘いとは思うが、まあ仕方があるまい。
この三人で協力できなければ、明日には魔物の餌だ。
「……つまり、そのソウルパーチャスというスキルでスキルを購入しているというのか」
「パーチェス……購入ですね。ソウルとはなんのことでしょう?」
「うん? さっきの戦闘で感じなかったか? 魔物を倒したときに自分に流れ込んできた力を」
「ああ、あれね。あれのおかげでレベルアップできたわ!
「私もレベルアップでした。……その様子だと、フートさんはレベルアップしていないようですね」
「うん。俺の場合はソウルとしてまずは俺の体内にプールされるらしい。レベルアップするときは、そのソウルを使って、レベルを"購入"しているようだな」
奇妙な言い方だが、これが正しいだろう。
レベルを上げるときも、他のスキルを覚えるときと一緒の処理なんだから。
「聞けば聞くほどチートスキルね。なんでアンタだけそんなに優遇されたのかしら?」
「ああ、それ。【鑑定+】先生でいろいろ調べてみたんだが、人間で覚えられる武器や戦闘スキルの限界って大体5らしいんだよね。詳細検索結果にそう書かれてた」
「ほう、それで」
「試しに、剣術スキルでレベル6まで上げようと思ったらそれだけで7,000ソウルほど要求されたよ。ちなみにレベル5だったら2,000ソウルな」
「……ずいぶんと大きな差ですね」
「つまり、二人の【盾術】や【格闘術】もこの世界基準だと十分チートなのさ。地味ではあるんだけど」
「……でも、やっぱり【ソウルパーチャス】みたいなスキルがよかったわよね」
「これぞ異世界転生のチートスキルって感じですもんね!」
女子組がワイワイ盛り上がっている中、俺は新しく覚えられるスキルでなにかいいものはないか調べていた。
さっきの戦闘でも魔物を二匹倒せたのでソウルはそこそこたまっている。
だが、問題はそこじゃなかった。
ソウルは倒した人間が総取りのようなのだ。
このまま進めば、俺にソウルのほとんどが集まり、二人にはおこぼれ程度にしかわたらないだろう。
特に敵の攻撃を受け止めているアヤネには攻撃する機会が少なすぎるし。
そんな中、見つけたスキルが【パーティ内ソウルシステム共有化】だった。
どうやらこのスキルを使えば、パーティの貢献度に応じてソウルを割り振ることができるようになるらしい。
あと、これはおまけだけど、ソウルパーチャスの一部機能がパーティメンバーにも購入できるようになるとか。
お値段4,000ソウルとお高かったけど、これは覚えるしかないだろう。
「? フート、いまなにかした?」
「ああ、新しいスキルを覚えた。【パーティ内ソウルシステム共有化】ってヤツ」
「長ったらしい名前ね。効果は?」
「いままではとどめを刺した人間が総取りになっていた魔物のソウルをパーティで分配できるようになった。あと、ソウルパーチャスで購入できるスキルの一部が二人にも購入できるようになっている……はず」
「本当ですか! どうやれば!?」
「うーん、俺の場合は買いたいもののリストがほしいって願えばすぐに出てきたから……」
「私は出てきませんね……あ、でもこういうときはスキル名を言えば……【ソウルパーチャス】! ……すごい、購入できるスキルがこんなにあるなんて!」
「へぇ、私も【ソウルパーチャス】っと。……うっわ、なにこの一覧表。あんた、いっつもこんな一覧から選んでいるの?」
「いや、いつもは【鑑定+】の能力で必要そうなスキルをピックアップしてもらって選んでるよ」
「【鑑定+】……あ、ありました。1,000ソウルですか。安くはないですが覚えておきたいですね」
「というか必須でしょうね。他には?」
「【ソウル取得量1.1倍】かな。1,000ソウルで覚えられて、ソウル取得量が10%増えるからすぐに元が取れて便利だぞ」
「【鑑定+】に【ソウル取得量1.1倍】ね。覚えておくわ」
「がんばってそのスキルを覚えられるようにしますね」
「ああ。というか、この森にいればすぐにでも覚えられそうなんだが」
「……やっぱりそう思うわよね」
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