3.ソウルパーチャス、そしてリバーンへ

 30分って時間がないぞ!?

 早速【ソウルパーチャス】とやらを使ってみないと!


 頭の中で【ソウルパーチャス】を使おうとすると、目の前にさまざまなウィンドウが表示された。

 これって、VRやARみたいだな。


 なになに、最初に種族設定も含めた初期設定をしなければいけないんだな。

 まずは種族設定……じゃなくて【鑑定】と【異世界言語】の選択?

 よく見てみると、それぞれの下に【鑑定+】と【真異世界言語】と言うのがあった。

 【鑑定+】というのは、鑑定結果に詳細注釈が表示されるものらしい。

 【真異世界言語】は訛りのある言語や古代言語なども読み書きできるようになるスキルのようだ。

 【鑑定+】の方が1,000ソウル、【真異世界言語】が2,000ソウルを使うみたいだが……よくわからないし、とりあえず取っておこう。

 便利そうだし。


 次に種族選択。

 いわゆる普通の人間ヒューマンから、竜人ドラゴニュートまでいろいろ揃っている。

 それぞれを見ていくと早速【鑑定+】が仕事をしてくれて、各種族のメリットやデメリットなどを表示してくれた。

 【鑑定+】の表示内容は、【鑑定結果】<詳細内容>というように表示してくれてそれなりにわかりやすい。

 各種族になるためにもソウルポイントが必要になるみたいだけど、ドラゴニュートとか5,000ソウルもするよ……。

 あとは、獣人の鑑定結果がやばかった。


【鑑定結果:獣人】

 人間と獣の特徴を併せ持つ種族。

 さまざまな特徴を持った種族が存在し、個性も多種多様。

<詳細内容>

 熊人、虎人などは筋力が強くなりやすい。

 狐人、狸人などは魔力が強くなりやすい。

 犬人、猫人などは感覚が鋭敏になる。

 すべての種族に発情期があり、一定の年齢になるとその衝動は理性で抑えきれなくなる。


 ……発情期があるとかやばすぎるだろ。

 やっぱりそういうお店がしっかり存在しているのかね。


 さて自分の種族選択に戻ろう。

 他の人は知らないけど、俺はソウルポイントの制限があるから無駄遣いはできない。

 その上で選んだのは……ハイエルフ、1,000ソウルだ。


 せっかく魔法がある世界に行くんだから、魔法を思う存分に使ってみたい。

 それで、デメリットが少なく魔法適性が高い種族はこれになった。


 いや、獣人はどれも0ソウルだけど発情期やばいし、フェアリーとかもあったけど身長が60センチほどにしかならず、それに見合った体力しかないって無理でしょ。


 その点、ハイエルフなら金属装備ができないこと以外はデメリットがない。

 金属装備を身につけると、むしろ身体能力が下がってしまうらしい。


 さて、ここまでが初期設定。

 かかってしまった時間は……10分ちょっと。

 マジで急がないとやばい!


「ねえ、君の個人スキルってなんになったの?」


 さっき隣にいた少年が声をかけてきた。

 さて、こんなときはどういう風に返せばいいんだろうか?

 バカ正直に、「ソウルポイントっていうのを消費してスキルを覚える力です!」なんて言うわけにもいかないだろうし。

 時間がない中、必死にスキルを選びつつ適当な言葉を返す。


「えーと、魔法スキルがいくつかかな?」


「そうなんだ……割とハズレかな」


 最後の方は聞き取れなかったけど、なんだったのだろう。


「うん? どうかしたのか」


「いや、気にしないで。僕は他の人のところも見てくるから。それじゃあね」


「ああ、またな」


 さて、また一人になったしスキルを詰めていかないと。

 何はともあれ、魔法スキルの選択だよな。

 有能な【鑑定+】さんの鑑定結果によると、各魔法スキルは【元素魔法】と【精霊魔法】に分かれているらしい。

 詳しい内容までは見ていられんかった。

 とりあえず、ハイエルフと相性のいいのは【精霊魔法】の方だったので、そっちで魔法スキルを火、水、風、土、雷とそろえる。

 各属性500ソウルの合計2,500ソウルでした。

 なお、スキルにはレベルがあり、実戦で使えるのはレベル3以上とのことなので全部レベル3だ。

 それから、あると便利だという生活魔法。

 火種をともす魔法や、飲み水を出す魔法、身体を清潔にする魔法などの詰め合わせで200ソウル。

 なくても困らないのかもしれないけど、身体は清潔に保ちたい。

 あと、火種と飲み水、大事。


 さて、ここまでで20分ちょっとを使ってしまった。

 残りのスキルはなにを選んだものか。

 魔法系はこれで大丈夫だし、初期装備も種族選択のときに種族ごとにふさわしいものが与えられると出ていた。


 そうしてスキル一覧を見ていたときに目についたのが【ハウス】スキル。

 スキルレベル1で4,000ソウルポイントも使うが、効果は格別であった。

 このスキル、自分の家を作り出しその中で過ごせるらしい。

 野宿の心配もしなくて済む便利スキルだ。

 さらに、結界を張って家を周囲から見えず触れないようにすることができるので、夜襲を受ける心配もないらしい。

 このスキルは即行ゲットした。


 さて、他のスキルはどうするか……。


「あの、パーティはもう決まりましたか?」


 スキル選びに夢中になって気がつかなかったが、顔を上げると自分の前にいた少女と少年と反対側にいた少女の二人がいた。


「パーティ?」


「こういうときに一緒に行動するグループのことよ。そんなことも知らないの?」


「それは、なんとなく理解できるが……それといまの状況に何の関係が?」


「あんた、一緒に行動する仲間はもう決まっているの?」


「見てのとおり一人だが?」


「ちなみに、どういうギフトをもらったの?」


「魔法系だな」


「ならちょうどいいわ。あなたも私たちと一緒に行動しましょう」


「……なにがちょうどいいんだ?」


「私たち二人、どっちも前衛系のギフトなのよ。だから、一緒に行動するならちょうどいいかなって」


「ダメでしょうか?」


 うーん、確かに魔法使いが一人で旅をするっていうのは厳しそうだな。

 この二人の真意はわからないが、とりあえずこの話、乗っておくか。


「かまわないぞ。これからよろしくな」


「ええ、よろしく」


「はい、よろしくお願いします」


『さて時間だ。同じパーティのものは同じ円の中に入るがいい。そうすれば同じ場所に転移される。……そうそう。言い忘れたが、途中死ぬことがなければ、お前たちの寿命は種族にかかわらず標準で300歳ほどになっている。260歳くらいまでは若い姿のままだな。不老の法を探すもよし、300年を生きるもよし。あとはお前たち次第だ。ではさらばだ』


足元に出現していた円の中に入り、俺たち三人はこの黒い部屋をあとにするのだった。


『……さて、今回の40人。果たして10年後にはどれだけ生き残っているか。見物だな』

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