2.転生準備
『目覚めたか、人の子よ。それでは今後のことを説明してやろう』
気がつくとこの部屋にいた人間、全員が目を覚ましていた。
そして、謎の声が聞こえる天井の方に向かい視線を向けている。
『まずは状況を説明しておこう。お前たちは全員が異世界転生の承諾を前の生で受け入れた。その記憶はすでにないが、そういうことだ』
ずいぶんと記憶があいまいになっていると思ったが、この神様のせいということか。
しかし、全員が受け入れたというのはどういうことだろう。
これだけの人数がいれば、何人かは拒否していそうなものだが。
「神様! 私がそんなことを受け入れているとは思えません! お願いですから、元の場所に戻してください!!」
俺の前の少女が叫び声を上げる。
確かに、さっきの話だと転生を受け入れるような理由はないのだが……。
『ふむ……お前か。まあいいだろう。お前が転生を受け入れた理由を特別に教えよう。お前の家族は強盗に遭遇し、全員が殺害された。その後、お前が飼っていた犬も死に人生に絶望していたところ転生を受け入れたのだ』
「そんな、そんなこと覚えていません!」
『覚えていないように記憶を操作したからな。他のものも大なり小なり記憶を操作しているゆえ、自分の状況把握は諦めることだ』
……なるほど、ここにいるのは何らかの理由で異世界に行ってしまいたいと思った連中というわけだ。
かくいう俺もそんな一人だったんだろうがな。
記憶がないっていうのはこうも恐ろしいものなのか。
『さて、状況を理解してもらったところで話を進めよう。私はこれからお前たちが暮らしてもらう
「あの、神様。そのリバーンという世界はどのような世界なのでしょう?」
『お前たちが想像しているような、魔法のあるファンタジー世界だな。だが、地域によっては魔法科学や錬金術が進んでおり、地球の暮らしと変わらないレベルの暮らしもできるだろう』
地球と同じ文明的な暮らしか……それはいいことだ。
もっとも、法整備とかがどうなってるかわからないから奴隷制度とかがあるかもだが。
『それから、リバーンの暦や長さの単位、重さの単位は地球と一緒だ。まあ、これは地球からの転生者が設定したものだから当然だがな』
なるほど、俺たち以外にも転生者はいると。
「神様、転生者ってどの程度の頻度でやってくるものなんですか?」
『ふむ……そうだな。大体、30年から40年程度の間に一度は送っている。今回は日本人を対象に送っているが、別の国の人間が対象のこともある』
「やっぱり、国ごとに固まっているのはコミュニティを結成しやすいためですか?」
『そういうことだな。やはり、同じ国の者同士の方が協力しやすい』
結構、それって大事だよなぁ。
国を超えて移動した経験がある人間ならともかく、特定の国内でしか活動していないと外国人っていうだけで避けてしまうもの。
……って言うか、日本人だからあまり問題ならないけど別の国だと国内でも差別とかがひどいんじゃなかったか?
『リバーンの説明はこれくらいにしておこう。それでは、お前たちに転生するにあたってのギフトを授けよう』
神様の声が聞こえた途端、「待ってましたチート能力!」という叫び声が何カ所かで聞こえた。
これってそんなにすごいことなのだろうか。
『まずは、向こうの世界で暮らすのに困らないように最低限の【鑑定】スキルと【異世界言語】の知識を与えよう』
【鑑定】と【異世界言語】か。
【鑑定】はよくわからないが、【異世界言語】は大事だよな。
コミュニケーションがとれないのはつらい。
『それから、【ステータス】と言えば自分の所持しているスキルやステータスを確認できるぞ。これはリバーン人も同じことだがな』
ステータスがあるのか……。
なんだかゲームみたいだな。
『さて、お待ちかねの各個人に与えるギフトについてだ。各個人のギフトは各自の目の前にある黒い箱へと入れてある。取り出して見るといい』
ふむ、これの中に俺に渡されるギフトとやらが入っているのか。
それじゃあ、早速開けさせてもらおうか。
《***はスキル【ソウルパーチャス】を入手した。初回特典として15,000ソウルを入手した!》
ソウルパーチャス?
これが俺の個別ギフトか?
どんなものか調べてみないと……。
『これでお前たちに与えられるギフトはすべて行き渡った。これより30分以内に種族設定をして初期パーティを決定せよ。30分後、お前たちをリバーンに転送する』
ちょっと待って、神様!
さすがに無茶ぶりが過ぎませんかね!?
************
どこかで質問があった気がするので捕捉
与えられるギフトは各個人で異なるものですが、固有(ユニーク)ではありません
逆をいえば同じスキルを別の人間が持っている可能性もあります
ソウルパーチャスなんかもユニークスキルっぽいですが違います
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます