ソウルパーチャス! ~魔獣の魂を集めてスキルを購入!~

あきさけ

黒の部屋とギフト【ソウルパーチャス】

1.気がつけば黒の部屋

「うーん……ここはどこだ?」


 俺は激しい頭痛とともに目を覚ます。

 目を見開けば、そこは真っ黒に覆われた空間。

 天井を見渡せば、プラネタリウムのように星のようなもの輝いていた。

 そして、そんな部屋に白い服を着た人間が何十人といる。

 我ながらこんな薄暗い部屋でよく見えると思うのだが。


 ……って、俺の服も真っ白になっているぞ?

 こんな服持っていた記憶はないんだが。


「……えーと、昨日は確か、夜遅くまでビジネス書を読んでいて、それから…」


 きちんとベッドに入って寝たはず。

 なのに、記憶がすごいあいまいだ。


「ああ。君も目を覚ましたんだね」


 体を起こし隣を見ると、俺の隣に立っていた少年が声をかけてきていた。

 見た感じ15から16歳程度だと思うんだが……。


「そんなに警戒しなくてもいいよ。この状況を把握している人間は誰もいないから」


「状況を把握していないというわりには落ち着いているんだな、お前」


「うーん、そこはほら。小説やアニメでよく見る異世界転生とかに憧れてるからとか」


「……異世界転生ねぇ……」


 最近はアニメも漫画も見なくなったけど、そういうのが流行っているのはなんとなく知っている。

 だが、自分がそんなのに巻き込まれるとは思いもよらなかったぞ?


「ちなみに聞くけど、異世界転生ってどんなパターンがあるんだ?」


「そうだね……なんの説明もなしに王様とかの前に召喚されて「魔王を倒してくれ」とか、神様が現れて異世界転生してくれるとかかな。あとはもう、なんの説明もなしに、いきなり異世界に放り出されるパターンもあるよ」


「……説明ありがとう。ちなみにこれはどのパターンが当てはまりそうなんだ?」


「二番目の神様説明パターンかな? ただ、僕らの目の前にあるこの黒い箱の意味はわからないし、なんというかあまりサポートしてもらえなさそう」


「……サポートなしで異世界かよ。きつそうだな」


「ははは……そこは諦めるしかないね」


 隣の少年と会話をしていると、俺の反対側からも起き上がる気配を感じた。

 そっちに目を向けると……これまた少年と同年代くらいの美少女と呼んでいい少女だった。


「……なにここ。こんなところに来た覚えはないんだけど」


「お、目を覚ましたか?」


「え、あ。そうみたい。それでここはどこ?」


「さあなあ。俺も知りたい」


「多分、異世界転生とかそういうのに巻き込まれたんじゃないかな」


 俺の隣の少年がそんなことを告げると、少女の態度が一変した。


「よっしゃー! 待ちに待った異世界転生! これであのクズみたいな家族ともおさらばできる!!」


 ……人にはいろいろあるようだ。

 俺はまあ、人並みの生活というものを送ってきたから家族と別れることは……最後にお別れを言えなかったことが気がかりなくらいか。

 一人テンションが上がった少女は置いておいて、俺の前に倒れていた少女も目を覚ましたようだ。

 こちらは……さっきの少女が活発系美少女なら、おっとり系美少女と言った感じか。


「……あの、ここはどこでしょう?」


 上体を起こして周りを見渡し、近場で目を覚ましているのが俺たちしかいないことを確認すると、俺に話を聞いてきた。


「ここはどこかは不明だな。隣の少年いわく、異世界転生の入り口らしいけど」


「異世界転生ですか?」


「そうそう、異世界転生。いままでの現代とはおさらばして、別の世界に旅立てるんだよ!」


「そんな! いきなり私がいなくなったらコロ丸ちゃんが困ってしまいます! それにお母様たちにも連絡を取らないと!」


 そう言って少女はいろいろと自分の身の回りを探してみるが……。


「そんな、スマホがないなんて! 昨日寝るときも、スマホを持ったまま寝たはずなのに!」


 ……スマホを持ったまま寝るのもどうよ?

 とりあえず前の少女をなだめて落ち着かせる。

 隣の少女の方は……いつの間にか落ち着いていたようだ。


「ふーん、そっちの話を聞いていると現代に未練がない人間が選ばれたってわけでもなさそうね」


「……そのようだな」


「……そういえば、なんだかあなたの口調が偉そうなんだけど何様?」


「別にそんなつもりはないんだが、一応年長者のようだし」


「年長者? 私たちと同じくらいの年齢にしか見えないわよ?」


 なんだと!?

 つまり、俺も15歳前後まで若返っているのか?


 軽くパニックを起こしかけたそのとき、星空が陰り黒いなにかが現れる。

 それはなんとも形容しがたい影のような存在で……。

 ただただ圧倒される中、は話し出した。


『目覚めたか、人の子よ。それでは今後のことを説明してやろう』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る