都への道程

灰と黒の狭間に

4.リバーンの地で自己紹介

「よっ、と」


「わひゃあ」


 軽い浮遊感のあとにたどり着いたのはどこかの森の中。

 すぐそばに泉があるし、水分不足で死ぬことはないだろう、多分。


「ほいっと、ミキはどんくさいなぁ」


「ありがとう、アヤネさん。ごめんね、こんなことで転んじゃって」


 “ミキ“と呼ばれた少女を“アヤネ”と呼ばれた少女が助けおこす。

 それが彼女たちの名前か。


「かまわないわよ。それで、そこのにーさんはいつまで周りを見てるのよ?」


「こういうとき、周囲の警戒は怠れないだろう」


「むむ、確かに。それににーさんの服。私らのより豪華じゃん」


「あ、本当ですね。私たちは普通のレザーアーマーなのに」


 気がつかなかったが、こちらの世界に転送されたことで初期装備とやらに変更となったようだ。

 ローブ型の装備に樫の杖か……魔法使い感が出てていいじゃないか。


「周囲の警戒もいいけど、とりあえずこっちで座らない? なんだか気疲れしちゃって」


「私もです。おにーさんもどうですか?」


「わかった。そうさせてもらうか」


 俺は残っていたソウルポイントで気配察知レベル5を取得した。

 もったいないとは思うが、これがあれば半径2,000メートルまでの生命体の位置がわかるから先行投資と言うやつだ。

 ちなみに、これで残りの残ソウルポイントは3,300だな。


 俺は“ミキ”と“アヤネ”のそばに座り、“アヤネ”の方が話し始める。


「さて、私たちはパーティーになった訳なんだけど……。とりあえず自己紹介から始めない? お互いになにができるかはわからないし」


 確かに、お互いなにができるかがわからなければ、戦闘でどう動けばいいかわからないからな。


「まず私はアヤネ。もらったギフトは、【棒術レベル5】【盾術レベル6】【礼儀作法レベル2】【不眠耐性レベル2】【重装備軽減レベル4】かな」


「それで、下げている武器が特殊警棒で盾がポリカーボネイト?なのか」


「多分そういうことじゃない? 私、覚えている限り、生前は警備員だったらしいし」


 さらっとソウルパーチャスで取得ポイント値を調べたら【盾術レベル6】が7,000ソウル、【棒術レベル5】が2,000ソウル、【重装備軽減レベル4】が1,000ソウルだった。

 レベル6以上は取得ソウルポイントが跳ね上がる……?


「警備員って、ポリカーボネイトの盾なんて使ったか……?」


「アヤネさんすごいです! 女性警備員とか憧れます!」


「構成からして、私はみんなを守る役目ね。敵を倒すのは任せるからよろしく!」


「はい、次は私ですね。私はミキっていいます。猫じゃなく虎の獣人です! ギフトは、【格闘術レベル7】【歩法レベル4】【気功術レベル3】【楽器演奏レベル4】【礼儀作法レベル4】になります」


 こっちもソウルパーチャスで調べるが、【格闘術レベル7】が12,000ソウル、レベル4スキル3つが1,000ソウル、【気功術レベル3】も1,000ソウルだった。


「これまた偏った構成だな」


 この二人の話を聞く限り、最初に与えられるスキルのソウルポイント合計は15,000前後になっているようだ。

 それがどういう風に割り振られているかは、前世の感覚に引き寄せられているとかかな。

 俺はよくわからないけど。


 好きなスキルを手に入れられるソウルパーチャスを覚えられる前世ってなんだよ。


「……そう思いますよね、おにーさん。ちなみに【気功術】は気合いを貯めて攻撃力を上げたり傷を癒やしたりするそうです。……よくわかりません」


「……まあ、使い道のわからないスキルだってそれなりにあるさ。さて、次は俺の番だな。俺は……」


 あれ、俺の名前ってなんだ?

 いくら思い出そうとしてももやがかかったように思い出せない。


「あー……いいにくいんだけど、前世での名前は思い出せないみたいよ。私もミキも黒い部屋でいいだけ悩んだんだから。諦めて新しい名前をつけなさい」


 新しい名前か……それなら、俺が好きだったあの作品から取って……。


「フートだな。俺はフートだ」


「そう。それじゃあ、フート、あなたのできることを教えて」


「できることといってもなぁ。【鑑定+】に【真異世界言語】、火・水・風・土・雷の各属性精霊魔法をレベル3、それに生活魔法と気配察知とかだぞ」


「……ずいぶんと都合よく揃ったビルドね」


「でもでも、よかったじゃないですか、アヤネさん。私たちの弱点だった魔法攻撃が一気に揃いましたよ!」


「そうね。……贅沢を言えば回復魔法とかそう言うのもほしかったんだけど」


 回復魔法ね。

 よし探してみるか。

 ……【鑑定+】先生の更新にヒット。

 【回復魔法】もレベル3から本領発揮みたいなのでレベル3で覚える。

 あと一緒に【支援魔法】もお勧めされたためこっちもレベル3で覚えた。

 支払いあわせて1,000ソウルなり。

 

 そのほかにも【鑑定+】先生のお勧めスキルとしてあげられたのが、次のふたつ。

 ひとつ目が【ソウル取得量1.1倍】。

 このスキルのお値段はなんと1,000ソウルだった。

 たかが1.1倍と驚く事なかれ、ちりも積もれば山となるんですよ。

 10,000稼げば11,000になっているそのすごさ。

 上位には1.25倍や1.5倍なんていうのもあったけど、さすがにそちらはソウルポイントが足りなかった。


 もうひとつお勧めされたのが【魔法発動高速化】である。

 これは読んでそのまま、魔法が早く発動するようになる。

 レベル1しか覚える余裕がないが、それでも20パーセント早くなるんだから儲けものだろう。

 こっちは500ソウルね。


「あー、回復魔法と支援魔法だが俺も使えるぞ?」


「え? そうなんですか!」


「ちょっと、なんでさっき言わなかったのよ?」


「いや、どこまで話した方がいいのか悩んでな」


「……できればできることはすべて話してちょうだい。この三人は最低でも人里にたどり着くまで運命共同体なんだから」


「了解。なるべく隠し事はしないようにするよ」


 とはいえ【ソウルパーチャス】のことはまだ話せるほど信用できないし……。

 うまく隠しながら進めるかな。

 そういうの下手なんだけど。


「さて、それじゃ、最終確認。全員、レベルを見せて」


************


~あとがきのあとがき~


主人公の名前が銀翼のとごっちゃになりそうですが由来は違います。

銀翼の主人公フィートは長さの単位のことで、フートはWelcome to Windy Cityなあれから取っています。

ぶっちゃけ、この小説ってリハビリ用だったのであまり気にせず書いてました。

ごめんなさい<(_ _)>

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