第9話 交わりは一直線 ACT 4

彼女の傍に行くと、あの沈むソファーにその身をゆだね、スースーと寝息をたてながら寝入っていた。


その顔を覗き込むように見る。

まだあどけない感じのその顔が目に入る。


何となく、世の中の汚れに染まることなく育ったんだという感じがする。

そうだよな、まぁ、仮に18歳としてもだ。まだまだ子供なんだよな。


「可愛いなぁ……食べちゃいたいくらいだよ」

と、……俺、この子、食うんだ。


本当にいいのかなぁ。でもさ、ここまで来たら今さら迷う事なんかねぇよな。


それにだ、見た目はこんなにあどけないけど、実際の中身はどうだか分かんねぇしな。意外と、やることはやっているのかもしれねぇ。今の高校生は、表と裏がある。それは大人になって行けば必然的な事であり、表だけで見切ってしまうのは危険だ。俺が社会人になって、得た一つの教訓だ。


さて、起こすか……。


そっと彼女の肩に手を添えて「起きなよ。こんなところで寝ていると風邪ひいちまうぞ!」

優しくそっと彼女の耳元で囁くように言う。


しかし、彼女は一向に起きる気配はない。

もう少し強めに言ってみるか。

「なぁ、起きなよ」肩を少し揺さぶった。されど彼女は起きるどころか、ニタぁ―とした締まりのない顔をして「えへへへ、もうお腹いっぱいだよぉ」なんて寝言を言う始末だ。


仕方ねぇ、このままベットまで連れて行くか。

そっと彼女を抱きかかえ……、いわゆるお姫様抱っこと言うやつで俺は彼女をベッドまで連れて行く。


意外と軽いもんだなぁ。もう少し重いかと思っていたんだけど、その軽さにちょっと驚いてしまった。


その時彼女が纏うバスローブの襟元から、チラチラと胸のふくらみの先が見え隠れしていた。

その膨らみが歩くたびに微妙に揺れ動く。

再度「ゴクリ」と喉を鳴らしてしまう俺だ。


このまま、その柔らかいふくらみにこの顔をうずめてしまいたい衝動を押さえつつ、俺はそっと彼女をベッドの上に寝かせた。

バスローブがはだけている。そして彼女が「ううん」と言いながら寝がえりをうつ。腰ひもがほとんど解けた状態になっている。

バスローブの下には何もない。彼女のするッとした肌が露わになる。

俺は来ていたスエットを脱ぎ、そっと彼女の横に座り、あの膨らみに唇を添えた。


綺麗なすべすべとした透明な肌だ。


そっと顔を上げ、ほどけ始めた腰ひもを解き、かぶさるローブを払った。

程よくおおきな胸に均等のとれた身体がこの俺の目の前にある。


その彼女の体に俺の体を覆いかぶせるように二人の肌が触れ合った。

温かい。久しぶりに感じる人肌の温もり。


「あああああ! この温もりを俺は求めていたんだ」


もう寝ていようが構わない。

ぐっと、彼女の柔らかく温かい体を抱きしめた。


その時だ。またグラッと目の前がゆがんだ。

「ん? おかしいなぁ」

そう思い始めた時すでに俺の体は、またあの重い石がいやおうなしにのしかかったように身体が重くなった。


な、なんなんだ……、どうしたんだ。

その重さは耐えきれないほど俺の体を襲う。



次第に体が熱くなる。燃えるように熱い身体。

うううううううううううっ!! 耐えきれない。

いったい……、俺……、ど、どうしちまった……んだろう。




ついに俺の意識は途絶え、彼女の上に俺は覆いかぶさるように、その身をのしかけた。






「ううん……お、重いなぁ」

なんだろう、私の体に覆いかぶさるこの重さは。


ゆっくりと目を開ける。相当深く眠りに落ちていたんだろう。開ける瞼の視界は始めぼやけていた。

徐々に視界がはっきりしてくる。頬のあたりに何かサラサラとした毛の様なものが触れていのを感じる。


「ん?」


なんだろう、薄暗い部屋の中。私に覆いかぶさっているのが男の人だという事にようやく気が付いた。


「あっ……えっ……と」


そして私の肌とその男の人の肌が、直接触れ合っているこの感じを得る。


「ああああ、そうか。あの人と……。私寝ちゃっていたんだ」

彼の重さを感じながらも、その重さから逃れようとはまだしていない。別にこうなることは分かっていたんだから……。


でもいつもと何か感じが違う。

ゆっくりと、片手を自分の”あの部分”へと触れさせる。


「ん?」……えええっと、なんともない。と言うべきか。確かに全裸であることは確かだけど、『その行為』をしたあとは感じられなかった。


「ふぅ―、なんだお互い寝ちゃったんだ」


それならそれでいいんだけど。私は今晩の宿が確保できたんだし、無理に『その行為』をしたい訳でもないんだから。


ゆっくりと彼の体を私から放し、仰向けにさせた。

薄明りに馴れた目に彼のその姿が目に入る。彼も全裸であった。


「ええッと、まっいいかぁ」そんなことを言いながら、毛布を彼と私の体にそのままかけてまた寝ようとしたが「んんんんっ」。下着は付けよかぁ。

バスローブをはおい脱衣所に行き洗濯を見つめる。洗濯機はすでに乾燥までを終え止まっていた。


ドラム式洗濯機のハッチを開け、洗濯ものを取り出した。

「んッと、これとこれと、あれと……」下着は取られていないようだ。彼が言ったように下着を取られずに済んだ。


この前は、一枚でいいから私のパンツちょうだいって言って来た、変態さんもいたっけ……。新しいの買ってもらうのを条件にあげちゃったけど、その後あのパンツ君はどんな運命をたどったのかを考えるとゾッとする。


「うんしょっと」パチンとは音は鳴りはしないが、お尻のあたりのめくりを直して、パンツ装着。ブラも付けよう。あとは借りてあるあるバスローブを羽織ってまた寝ちゃおう。環境のいいところで寝れる時は出来るだけ寝よう。


もそもそと、またベッドに戻り彼と自分に毛布を掛け、私はまた目を閉じた。

隣には知り合って? と言うか拾われてまだまもない男の人が寝ている。

それでも、もう何となくこんな状況で寝ることに馴れてきてしまっている自分が、何か虚しいような気もする。


少し彼の体から離れるように自分の体の置き場所を決める。

「うんうん、これで落ち着いて寝れるなぁ」

でもなんだか少し熱いような感じがするのは、気のせいなんだろうか?


もしかして、私の体火照ってる?

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