第4話 女子高生をお持ち帰り……してしまった。ACT 4

途中にあるコンビニに、俺の足は吸い込まれるように向かう。

「あのさ、ちょっと買い物してきていい?」

「いいですよ。私は外で待っていますから」

そう言いながら彼女はコンビニの入り口から少し離れたところで待つように足を止めた。


さぁてと、何か腹に入れられるものでも見繕っておくか。


あ、……そうだ。”あれ”あったかなぁ。


”あれ”とは、これから行う行為に必要なものだ。香はピルを飲んでいたから必要なかったんだが、彼女は必要だよな。

おもむろに、生理用品が並ぶ棚の中からお目当ての子箱を、さっと手に取る。

ちょっと気恥ずかしい感じもしたが、これは外せないだろう。


後は食いもんだ。

なにせ最近はほとんど外食ばかりで……いや飲みに行きっぱなしで家で飯を食うって言う事をしていない。当然ながら、冷蔵庫はすっからかんだ。


これから飯を作る気にもなれぇし、て、いうか料理はあんまり得意じゃねぇからな。弁当でいいかぁ。

何気なく、冷蔵ケースに残り少なく陳列されている弁当を眺める。


「オムライスかぁ」ふと声に出てしまった。

香の得意料理の一つだったな。

スッと手に取る。

コンビニのオムライスは俺自身あまり食う気にはなれないが、あの子にはちょうどいいかもしれない。


俺はパスタでいいか。パスタは俺の好物だ。まぁコンビニのパスタには期待はしていないが、パスタに関しては正直うるさい。こだわりも持っていると自負している。

料理は得意ではないが、パスタだけは作るんだなこれが。まぁ、好きなものは下手な手習いもうまくなると言ったところだろう。


後は飲み物と……あ、そうか今晩泊めるんだった。朝食くらい出してやってもいいよな。

手に抱えきれない状態になりつつあるのを感じ、かごを手に取り、商品をかごへと入れていく。


ある程度、決まったと思うところで、レジに向かい。あ、236番の煙草二箱くださいと追加注文をする。

店員はそつなくバーコードをスキャナーで読み取り金額を表示させ、俺はスマホを端末ステーションにかざし決済を終えた。


店を出ると、彼女は下を俯きながら俺を待っていた。

「ごめん待たせたね」

その俺の声に反応するかのように顔を上げ、ニコットほほ笑みながら「そんなことないですよ」と答えた。


「でもいっぱい買ったんですね。大きな袋二つも」

「あははは、そうだな。なにせ一人暮らしだから、家に食いもん何もなかったからついな」


「ふぅ―ン、一人暮らしなんですね。でも彼女さんくらいはいるんでしょ。お兄さん見た目カッコいいんだもん」

「お、嬉しいこと言ってくれるじゃん。これもサービスの一つなのかな?」

「サービス?」ん、と彼女は首を傾げる。


何となく不思議な感じのする子だ。ことあることに首を傾げ、”あれ?”て言う感じの表情をする。

まぁこの子だったらそんなジェスチャーは、可愛さをアピール一つの効果でもあるんだろな。


「ねぇ、本当は彼女はいるんでしょ」

上目使いで俺を見つめ、もう一度そのことを問いかけてくる。


身長177センチの俺、彼女の身長はどんなに高く見ても160センチちょいくらいかな。俺から見たら小柄の感じの子に見える。だから歩きながら話を俺の顔を彼女が見る時は、どうしても上目使いになってしまうのかもしれない。


「彼女かぁ今はいねぇよ」

「嘘でしょ!」


「嘘なもんか、最近別れちまった」

「……ご、ごめんなさい変なこと訊いちゃって」

「別にぃ、だから今こうして一緒にいるんだろ」


「あ、そうかぁ。……だよね」


今の彼女の言葉が、なぜか妙に引っかかった。俺の求めている、思惑と彼女の求めている思惑が何か交差したようような気がした。

そんなたわいもないことを話ながら、俺たちはマンションに着いた。


エントランス入り口のセキュリティーにカードを差し込み、エントランスドアを開ける。すぐ横にある荷受けボックスを開け、中にある郵便物を手に取り、部屋へと向かった。


俺の住まいはこのマンションの3階だ。エレベーターで3階のボタンを押し、ドアが締まりエレベーターは上昇し始めた。

その間彼女は今まで屈託なく話していた口を閉め、ずっと下を俯いていた。


緊張してんのかなぁ。それもそうだろうな、身も知らない今さっき出会った男の家に今彼女は連れ込まれようとしているんだから。こういうのには場慣れしてなさそうな子だし、これから自分の身にのしかかる事を思えば緊張もするかもな。まして経験が薄いとなればなおさらだろう。


エレベーターのドアが静かに開き、数歩歩いたところのドアの前で、俺は足を止めた。

カードキーを差し込み、セカンドロックに鍵を差し込んで回すと、カチャっという音がしてドアロックが解除される。


ゆっくりとドアを開け、玄関の三和土へを足を踏み入れる。

俺を感知したライトが、三和土を照らした。


壁にあるスイッチパネルをオンにすると廊下、居間の明かりが灯された。



「さぁ……入って」


と、彼女を家の中へと招く。

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