第3話 女子高生をお持ち帰り……してしまった。ACT 3
彼女の手を引き、立ち上がらせると「ちょっとすみません」と、彼女の手が俺の手から離れた。
その手を自分の尻のあたりに回し、スカートの皺をほぐすしぐさをしている。
何となくそのしぐさがなまめかしく感じた。
しかし、その動きはなまめかしい感じと共に、上品さをも俺に植え付けさせていたようだ。
スッと彼女のその瞳と俺の視線がかさなった時、潤んだ瞳から発せられる彼女の気品が俺を引き付ける。
もしかしたら本来この子は、こんなことをする様な子ではないのかもしれない。
それとも単なるこの年頃の好奇心と言うものがこの子を駆り立て、たまたま俺がその相手になったという事なのかもしれないな。
だとしたら……もしかして今日が初めての事? え、処女だったりして……。
「君、こう言うの初めてなの?」
その問いに彼女は答えなかった。ゆっくりと地面を見つめ。
「それじゃ行きましょうか」と言う。
今の俺の質問は彼女にとって失礼に値するものだったのかもしれないな。
例え初めてであれ、今この子はこの俺と肌を触れ合わせることを了解しているのだから。
そもそもこの俺も、こう言うのは初体験なのだから、もっと積極的な子だったら。
「おじさん、もしかしてこういうの初めてなの?」なんて言われて笑われそうな気がしてきた。
あれは本当に失言だという事を、今さらながら反省している。
さて、それよりもだ。これからどうするべきなんだろうか。このまま真っすぐホテルに直行というパターンでいいのだろうか?
それとも今の時間なら、まだ夕食をとってもいい時間かもしれない。しかしこの子の様に若い子にとっては少々遅い夕食時間という事になるのだが。
その時だ、キュゥーと彼女の腹が鳴ったような気した。
やっぱりここは、飯を食わせてやった方がいいのかもしれない……と思った。
「なぁ、腹減ってんのか?」
ま、これは訊いても悪い気はしないだろう。
彼女は少し恥ずかしそうに小さく『こくり』と頷いた。
「そうか、俺もまだ食ってねぇからな。それじゃ何か食いに行くか」
と、言ったものの、飯と言えるものを食える店があるのは駅前の通りだけだ。しかも、この通りは居酒屋が多い。高校生の制服を着た女の子と一緒に居酒屋という訳でもないだろう。いやそれはまずいと思う。
ふとああ、そう言えば全国どこにでもあるハンバーガー屋があったのを思い出す。そこならまだこの子と入れる気がする。
……いや、待てよ。まだこの時間ならこの子と同じ年代の子たちが店にいてもおかしくねぇ。こんな年の離れた俺と一緒に同伴でハンバーガーなんか食っているところをマジ見されたらいらぬ誤解……いや誤解じゃねぇんだけど。やっぱまずいんじゃねぇのか。
それと大きな盲点を見逃していたことを思い出す。
この町にはホテル……ラブホが無いという事だ。それなりのホテルを利用するのなら電車で隣町まで行かないといけねぇ。
「はぁ―」
「どうしたんですか?」
「……いや別に」
「何か困ったような顔をなさっているように見えるんですけど」
「別に困ってなんかいねぇよ。それより何が食いたいんだ?」
「私はなんでもいいでけど……」
「んー」
「ほら、何か困っていますね」
「あ、いや。困っているというほどでもないんだけど、ただ飯食える場所がここら辺居酒屋ばかりなんだよ。ハンバーガー屋は確かにあるんだけど、俺と一緒の所、君と同年代の子たちに見られたら、変に思われるんじゃないかなぁって思ってね」
「う―――ん、私は別に何ともないんですけど、そちらが困るのであれば無理にとは申し上げませんけど」
まぁ、それと一番の問題がまだ残っているんだけどな。……肝心のラブホがねぇんだよ!
しかし何で俺は待ち合わせ場所をここにしたんだろう。確かに人目のつかないところではあるが、こう言う事に関してはまったく機能しない地域だ。
ただ、マンションまでは歩いて、7、8分の場所だという事だけなんだけど。
はぁ―、なんか選択肢は一つしかねぇ様な気がしてきた。
「あのさ、よかったら家でいい?」
「家?」
彼女はちょっと首を傾げた。
「いやぁ、なんていうかさ、こんな場所を指定した俺が悪いんだけど、ほんとここ何にもねぇんだよ。……ホ、ホテルとかさ」
「ホテル?」
んっ、と、彼女はまた首を傾げた。
「やっぱ家は嫌か?」
「別に私は構いませんが……そちらがよろしいのであれば。……ただ一つお願いがあるんですけど」
「お願いって?」
「出来れば泊まらせていただければ、助かるんですけど」
「泊まるって」
「だって、……そう言う事になるんですから」
そう言う事。その言葉が妙になまめかしい。
そうだよな、やっることやって、はいさようならて追い出す頃の時間は多分深夜だろうし、こんな子を深夜一人でうろつかせたら、それこそやばいよな。
「分かった」
ま、いいだろう朝まで彼女の人肌の温もりを堪能しようじゃないか。
「よかったです。それじゃ行きますか」
ニコットほほ笑む顔に、ホッと安堵したかのような表情が混じっているような感じの顔をする彼女。
泊めてもいいんだけど、それこそそっちの親とかは何にも言わねぇのか?
ま、今どきの高校生は何かとこういう事に関しては、上手くたちまれるようだからな。そう言うのって、俺も仕事でちょっとは見習わないと……なはは、何考えてんだ。馬鹿か俺は。
ようやく俺たちはこの公園のベンチから、一歩を踏み出し始めた。
公園の出口に差し掛かった時、俺たちがいたベンチの方から声が聞こえて来た。
「あれぇ! いないじゃん。なんだよぉ、やられたぁ――――!!」
女の子の様な感じの声だったように聞こえたが、そんなことあんまり関心もなく、俺たちは公園を後にした。
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