第2話 女子高生をお持ち帰り……してしまった。ACT 2
最後まで香はにこやかだった。それがいっそう俺の心に深く槍を差し込まれたように痛かった。
それからの数日間、俺は失意のどん底に落ちて行った。
酒におぼれ、仕事はミスの連続ばかり繰り返していた。
未来への希望も何もかもが、崩れ去ってしまった感じが俺を襲う。
契約を済ませたばかりのマンションに俺は仕方なく引っ越した。キャンセルすれば多額のキャンセル料金が課せられる契約だった。
入居してみると、予想以上にがらんとした広すぎる部屋に、その喪失感は後追いをかけて行った。
マンションに帰ることさえ拒むようになり、帰りは深夜まで飲み屋を梯子し、酒におぼれていく。
そんな俺を襲う喪失感は人寂しさと人の温もり。彼女と抱き合っていたあの温もりを後追いをかけるように欲してくる。
柔らかく温かい彼女のあの肌の感触を……。
その温もりにふれることを今まで抑えに抑えてきたが、実際俺はもう限界に近かった。
スッと、無意識に上着のポケットに忍ばせていたスマホに手が行く。
一夜限りの温もりを感じることで、この湧き出る衝動を何とか抑え込もうと思ったのだ。
検索ワードに『援助交際』と打ち込む。
何故『援助交際』と打ち込んだのかは、当の本人も分からなかった。ただその言葉が頭に浮かんだから打ち込んだだけだった。
すらっと検索ワードに引っかかったサイトが表示された。その中から適当なサイトを選び、軽く見流すようにそのサイトを目にし、コンタクトを取る画面に移動した。
この際どんな子でもよかった。今のこの俺の気持ちを少しでも治める事が出来るのら……。どんな子でも……。
手続きは意外と簡単で、チャットでお互いの意志が合意した上で、その子と会う場所を連絡するだけだった。
後は当人と会ってからの交渉という事になるんだろう。
おもむろに財布を取り出し中身を見る。
中には諭吉が2枚。「んー、これじゃ足りねぇだろうな」
時計を見てまだ、ATMが空いている時間であることを確認してから、一番近くのATMで金をおろした。
「ま、これだけあれば何とかなるだろう」
待ち合わせ場所は、ここからさほど遠くない公園のベンチ。
あまり人気のないところを選んだ。
どこでどんな目が見ているか分からないのが社会人の常の心配事でもあり、自信の身を守るすべでもある。
こういうところだけには、的確に慎重に反応する俺自信になぜか苦笑した。
『援助交際』今までの人生でそんなことに足を踏み入れたことなんか一度もなかった俺が、今その現実的には違法な世界に足を踏み入れようとしている。
罪悪感がないと言えばそれは嘘になるが、今欲する欲情の方がそれを押し込めていた。
「寂しいパパの応援サイト」そのサイトのタイトルだ。寂しいパパかぁ、パパねぇ……。俺もパパと呼ばれる年なんだろうなぁ。
それにしても一切表面上には『援助交際』などと言う言葉は見当たらなかった。
上手いもんだなぁ、『援助交際』なんていう文字があれば摘発の可能性ありありだしなぁ。しかし、功名な手口だ。だが、あのワードで引っかかるという事は、それなりのサイトであることは確信が持てる。
そんなことを考えながら、足早に待ち合わせ場所の公園へと向かった。
街灯の下にあるベンチ。そこにポツンと座り込む女の子の姿が目に入る。
「やべぇ、待たせてしまった」
背を丸め、まるでネコの様に小さく見える彼女に近づき
「ごめん遅くなっちゃって、待たせちゃったね」
スッと顔を上げ俺の姿を見上げるその子の顔を見た時、俺の胸の鼓動は「ドキ」っと高鳴った。
サラッとした背中まである髪。こう言う事をする子はもっと何となくケバイ感じの子を想像していたが、この子からはそんなイメージは湧かなかった。
少し幼顔にも見えるが、目鼻はきちんと整っている。あ、整っているという表現は失礼か? と言うか、物凄く可愛らしい子だという事だ。
まだ高校生くらいなんだろうな。自ずと俺の視線は彼女の胸に注がれた。
意外とでかいかもしれない。
でも爆乳と言う感じでもない。俺が対象視覚出来るのは、思い出すとまだ苦しいが、『
で、その後に俺は気づいた。
高校生くらいだろうなと思う事よりも、彼女が着ているのは高校の制服ではないだろうか?
こういう事をするのに高校の制服を着たままだと、彼女自体の素性がばれるのではないかと心配になる。
何を気にしているのか、俺もいささか混乱気味であることは確かだが、ちょっと違和感もある。
「あのさ、高校の制服着て来て大丈夫なの?」
「えっ! いけないんですか?」
「いけなくはないんだけど、誰かに見られたらまずいんじゃない?」
「あ、そうなんですね……。そう言う事まで考えていませんでした。済みません」
少し震えたような声。緊張でもしているのかな? この子は経験がそんなにないのかもしれない。
「大丈夫だよ人目につかない様にするからさ」
「そうですか。ありがとうございます助かります」
「それじゃ行こうか……」
スッと彼女の手を取ると、少し震えているのが分かる。でも女の子のその手の柔らかさを俺の手が感じ取った時、その震えている彼女の事など気にすることもなく、これから行う事への期待感が先走っていたのは本音だ。
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