ご援助契約成立。ルームシェアの相手は、まさかのお嬢様女子高生

さかき原枝都は(さかきはらえつは)

Chapter 1:まさか援交目的で誘った女子高生と、援助契約するとは思ってもいませんでした。

第1話 女子高生をお持ち帰り……してしまった。ACT 1

行きかう人の波。

光り輝く街の光が目に映る。夜の街は華やかだ。


雨上がりの歩道のタイルが、雨水に濡れて輝いて見える。

ボーっとしながらこの街をさ迷っていた。

学校が終わってから私はこの街にやって来た。何か目的がある訳でもない。

ただ帰りたくなかっただけだ。


あんな所には帰りたくない。……ただそれだけだった。


「はぁ―、どうしよっかなぁ……」

時は4月半ばを過ぎたあたり。さすがに夜はまだ寒い。

制服のブレザーだけでは肌寒く感じる。


『ドン!』すれ違うスーツを着た男の人に、私の肩がぶつかって、尻もちをついた。

「あたたたっ!」

「大丈夫君?」その人は手を差し伸べてそう言ってくれた。


「うん、ごめんなさい。私ボーっとしていてて」

「怪我とかないといいんだけど」

「大丈夫です。済みませんでした」立ち上がり頭を下げて謝罪した。


そして、その場を立ち去ろうとした時―――――、声をかけられた。

「何か温かいものでも飲む?」

その声に素直に反応した。


「……はい」


これが始まり。私の始まりの夜になった。



温かい部屋と食べ物。ホッと一息つける空間を得る。その代償に差し出せるもの。

それは、……この躰しかなった。




◆◆◆◆◆◆


「はぁはぁっ」

「うんっ……あああああ!」


俺とかおりはぐったりとすべての力が抜けきった様に、汗ばみ湿ったお互いの肌を密着させ抱き合った。

「ふぅ―」と、いつもの様に煙草を銜え火を点け、軽く煙を吸い込む。


この余韻がなんとも言えない。


ベットの上で煙草を吸うのは厳禁だ。出来ればあまり動きたくはないんだが、灰皿が置いてあるソファーまで移動して俺は煙草を吸に行く。


その横に軽くバスタオルを躰にまとい、俺の横に座り「私にも1本ちょうだい」とテーブルに置いてある俺の煙草に手をかけた。一本を銜え、俺のジッポライターで火を点け「ふぅ」と、彼女も白い煙をゆっくりと吐き出す。


ベットよりも柔らかいソファーに躰を沈め、お互いの顔を見詰め合わせ、自ずと俺たちの唇は重なり合う。


蓬田香あいだかおり。彼女は部署こそは違うが、同じ会社に勤める俺と同期の社員だ。その香との付き合いは、今年で3年目になる。

そろそろ俺たちの年齢もいいころ合いの年に差し掛かっている。今年でお互い28歳と言う、もう若者とは呼ばれない歳に気が付けばなっていた。


俺たちの関係は良好だ。


多分……いや、俺は香と結婚するんだな。

そんな思いはすでに俺の中では、決定事項の様に決まり始めていた。


当然、香も俺と同じ気持ちでいると思っている。

二人で暮らすには俺の家、と言ってもアパートの一室ではあるが、手狭だ。香の住むマンションも一人暮らし用で、さほど間取りも広さはない。

どちらにしても一緒に暮らすのであれば、今いるところでは無理だ。


俺は香りに内緒で二人で住める広めの住まいをずっと探していた。

一戸建てとも考えてみたが、今はまだ時期早々な気がしている。結婚して、俺たちの間に子供が出来たら……。その時に考えるべきだろう。

色んな物件を探し、ようやく納得できる所を探し当てた。


二人とも同じ会社だ。通勤の距離も考え、今よりも効率よく通勤できるところを心掛けた。もちろん街の雰囲気も大切な要因だと思う。色んな想いと、これから始まるであろう、香との生活を夢見ながら探し当てた物件。


香にも契約する前に一度見せるべきかと……。二人で住むんだから、香の意見も聞くべきだと一瞬俺の心の中でそう聞こえてきたが、ここであれば香も喜んでくれるという自信があった。


賃貸のマンション。立地と外装内装を見ても綺麗だし、家賃も妥当な金額だ。俺の給料だけでもやっていけるだけの金額だというのもあった。


俺は香りに内緒でこのマンションの契約をした。


後で香りを驚かせ、彼女の喜ぶ顔を見たい。そして俺はこのことをきっかけに……。


香にロポーズする予定だった……のだ。


吸っていた煙草を灰皿でもみ消し、香の顔を見つめた。

香はその俺の視線に、にっこりと答えた。

もうじきだ、その笑顔が感激の顔に変わるんだ。


「なぁ香、話があるんだけど」俺はようやく切り出した。

「ん、そうなの、私も雄太に話があるんだけど……」


そうか、なんだろな。もしかして香の方から『結婚してぇ―』って言ってくれたりして。あははは、そうだと嬉しいな。ま、でもそれはこの俺から言うべきことだ。


今ここでプロポーズはしない。まぁ生まれたままのこの一糸まとわね姿で、プロポーズするのもある意味新鮮味もあるかもしれないが、それでは感激の度合いが変な方向に行ってしまいそうだ。


香をあの新居に連れ出し、そこで俺はプロポーズをする予定だ。

指輪も、ちゃんと用意してある。当たり前だろ。


かさなるサプライズで、香の奴感激のあまり泣くんじゃねぇのかな。

まぁ俺の方はすでに段取りが整っている。急ぐ必要もねぇ。


「なんだよ香、話って……」



次の瞬間、香から発せられた言葉に俺は耳を疑った。


「ねぇ、雄太私たちもう終わりにしない」

その一言が彼女の口から発せられたのだ。



俺は耳を疑った。いやこれは冗談なんだと、今、香が発した言葉を理解しようとはしなかった。

「雄太凄い顔しちゃってるね」

「そりゃいきなりそんな冗談言われちゃ、びっくりすぜ」

「そうぉ。でもさ、これ冗談じゃなんかじゃないよ。私たちのこの関係、終わりにしようよ」


俺は……香も俺と結婚をする事に、同意しているものだとばかり思っていた。

しかし、彼女の方はその逆の事を思っていたようだ。


「雄太とは、結婚は出来ないよ……」

「……どうして? 俺の事が嫌いになったのか? それとも……ほ、他に好きな奴でも出来たのか?」


その問いに彼女は全て頭を横に振った。


「あなたの事が好きだから……。この関係を私は先には進ませたくはないの。このままの関係が私はいいの。でもあなたは先に進もうとしている。……だから。別れよ。ね」


意味わかんねぇ!!


「どうすんだよ! もうマンションの契約も済ませているのに」

そのことを彼女に切り出すことも出来ないまま、俺たち二人の付き合いは終わった。



あっけないものだった……。

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