Dive to Witch's world ―3
さて、そんな作品であるから、当然ファンの間でも単なるライバルキャラの比ではないくらいにカトレア嬢の人気は高まった。
そして、私もそんな他分に漏れず、彼女のファンになった一人だった。
いや、それはもはやファンというのも生温いほどの熱烈な勢いで彼女を好きになってしまったと言えるだろう。
気高く、美しく、魅力に溢れた素敵な女性であり、主人公の尊敬出来る先輩として、ゲームの中では一貫してそう描かれてきたカトレア嬢――いや、こんな呼び方ではあまりにも失礼極まりない、私から呼ばせていただくならばそう、"カトレアさま"こそが相応しい――とにかく、そんなカトレアさまに、私はゲームの全ルートをクリアし終えた後となってはまったくハートを射抜かれまくってしまっており、心の底から彼女の格好良さと素晴らしさに惚れ込んで、夢中になっていた。
私はこのゲームにおいて夢見る女の子達にとっての理想のように完璧で魅力的な
私が『ナイウィチ』という作品の中で一番大好きで、愛しているキャラクターは、紛れもなくカトレアさまだった。
それどころか、私はむしろ『ナイウィチ』という作品そのものすらどうでもいいものとして横に押し退けて、ただカトレアさまだけが好きだった。そう言ってしまってもいいかもしれない。
私は『ナイウィチ』という乙女ゲームコンテンツがそこまで好きなのではなくて、あくまでその作品の中のキャラクターの一人である『カトレアさま』にドハマりしていた。
『とある乙女ゲームにドハマりしていた』という事実をより正確に言い表すとするならば、そういうことになるだろう。
私自身も、二次元キャラクターの一人にガチ恋しているくらいの勢いでハマりこむ人間がこの世に存在することは知っていた。
そして、これまではそういう"存在"自体は理解して認めつつ、同じオタクではあっても自分はその"気持ち"までは理解することは出来ないだろうなとぼんやり思っていた。
しかし、こうしていきなり、まさに“そんな人間”そのものに自分がなってしまった。
この時の私はまさしくカトレアさまに"ガチ恋"してしまっていたのだ。本当に人生とは何が起こるかわからないものである。
とはいえ、そのガチ恋の対象が異性キャラクター――それも乙女ゲームにおける攻略対象のキャラクターであるならば、その想いは正しく、そして確実に、あくまでもフィクションであるとはいえ満たされ、報われることだろう。
全てがゲームの中だけのことであるとしても、確かにそのキャラクターと恋に落ち、結ばれることが出来るのだから。
しかし、私の"それ"は違った。
私のこの想いだけは、決して、
何故ならカトレアさまはあくまで主人公のライバルでしかなく、
端的に言おう――『Knight of Witches』には、"カトレアルート"というものが欠片も存在していなかった。
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