第三話 いってら~
ON-AIR #09
三者面談のためにパートを休んだ母親と登校。
校長や教頭と歩く方がどれだけマシか。
沈黙に次ぐ沈黙。
たまらなく嫌な空気の中で、ふいに発せられる僕への愚痴。
ぐだぐだ言われたって、現状がその場で変わるわけないのに。
それに僕の思いと親の思いはかみ合っていない。
学校の成績が良ければ何も言われないかと思いきや、そうでも無いと聞く。
数少ない友達で成績の良い一人から聞いた話にはこんなのがある。
行きたくもない学校へ進学させようと、勝手に先生と決めそうになったとか。
知らない間に塾に入れられていたとか。
成績が良いとかえってさらに上を目指すよう指示されることがあるそうな。
一例でしかないけれど。
こんなことを思い出して親の愚痴を全てスルーしていると学校に到着した。
ON-AIR #10
「良いお話ができてこちらも安心しました。ご足労いただきありがとうございました」
なんと。
アナちゃんは親の説得に成功した。
何も言わさないマシンガントークで畳みかけ、確キルをあっさり取るだなんて。
アナちゃんが先生というのは伊達ではなかった。
帰り道での母は時折ため息をついたけど、僕は何も言われないまま帰宅した。
アナちゃんが進学は出来るとひたすら言い続けてくれたことが功を奏したみたい。
アナちゃん、凄いや。
ON-AIR #11
配信と勉強、どちらもできてえらい!
最近の配信では、そんなリスナーのコメントを見るのが嬉しくなっている。
実は今、勉強とは違うことをしている。
進学先となった学校のパンフレットを見て、どの部活に入ろうか悩んでいるところ。
学校絡みのことをしているから許してと、心の中で思いつつ配信を垂れ流している。
勧められたから行くというより、ここなら行かせてもらえるという形での進学。
そのはずなのに、本当に僕が行ってもいいのかと疑ってしまう程面白そう。
各コースが専門的なだけでは無かった!
部活がめっちゃ豊富だ!
専門的なコースでは物足りないのかな。
どれもさらに絞った内容ばかり。
その中で僕が興味を持ったのがズバリ、ライブストリーム部。
僕のためにあるような部じゃないか!
こんな出会いってある?
少し変な汗が出てきているよ。
まさか学校へ行くのが楽しく思えてくるなんてね。
失礼なことに、忘れそうになっていたリスナーを思い出す。
コメントを見なきゃ。
ずっと笑っているね。
進学がなんとかなりそうで安心したんじゃない?
見ているこっちまで嬉しくなるな。
頑張れ~。
寝落ちに気をつけろよ~。
など、とても温かい世界になっていた。
配信はやめられない。
ON-AIR #12
なぜだろう。
高校の入学初日なのだけど、一緒にいるのはアナちゃんだ。
「押戸君、こっちよ!」
僕はワクワクしながら来ているけれど、それに輪をかけて楽しそうなアナちゃん。
アナちゃんが通いたかった学校なのかな。
職員室へと入っていくから僕もついていく。
「先生! この子です」
「ほうほう、その子が例の。初めまして、教頭の――」
アナちゃん、展開が早すぎ。
いきなり教頭先生に会わされても手に汗握る展開にしかなっていないよ。
決して熱い展開ではなく、冷や汗をかいているんだ。
「ではライブストリーム部に入ってもらって――」
え。
そこに入りたいと思っていたことをなんで知っているの!?
「押戸君、今は私に任せてね!」
「あの、えっと、アナちゃん?」
「大丈夫。あなたにとって最高の環境が待っているわ」
「はあ……」
もうね、「はあ」しか出ないよ。
だって、わけがわからなさ過ぎて。
草も生えない。
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