15

「がはあっ!?」


 突然鮮明になった意識と共に恐怖が溢れて飛び起きる。

 リアルな死の予感に怯えながら周囲に視線を巡らせると、意識を失う前と変わらない室内で女がベッドに腰掛けたまま自分の膝に頬杖をついてニヤニヤとこちらを見ていた。


「あの程度で意識を失うとは根性がないのう。まあよい。いいかげん、我が権能を片鱗たりとも理解したであろう?これくらいで勘弁してやろうではないか」


 言われて気付いたが呼吸に先ほどまでの違和感が無い。下のほうも最後までは至らなかったらしく下着は無事だった。代わりにやや落ち着いたものの下腹の奥底で溶岩のように劣情が蠢いているのを感じる。


「わかった、俺が悪かった」


 酷い目に遭わされた俺のほうが謝るのは釈然としないが、あまり反抗的な態度を取ると次はなにをされるかわかったものではない。

 この女なら俺ひとり殺したとしても俺の存在自体を社会的に抹消してなに食わぬ顔をしているだろう。

 ヤバい。

 最初からこの女はヤバいと思っていたが、ここに来てヤバさの質が明らかに変わってきた。


「よいよい。わかれば良いのだ。さて、それでわしを抱きたいという話じゃが、いきなりひとを殺すのは少しハードルが高いとみえるのう」


 少しじゃなくハードルが高過ぎんだよ。正しい手順を踏めばいつかは殺せるようになるみたいな言い方はやめろ。


「しかし貴様が欲しいのは実のところ肢体からだだけであって、わしではあるまい?それであれば折衷案がなくもない」


「折衷案?」


 いったい今度はなにを言い出すんだと不安な気持ちで聞き返すと、女は今度は白いリモコンを投げて寄越した。

 俺は取り落としそうになりながらそれを手に取ってマジマジと眺める。正直色以外は今までのふたつとまったく同じだ。

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