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 突然、喉に違和感が生まれた。呼吸のたびになにか引きずるような振動を感じる。息苦しい。息を吸っても十分に空気が肺に入ったような気がしない。ゼエゼエという音が呼吸に合わせて繰り返され、どんどん息苦しくなっていく。

 なんだ、これは。


「貴様の気道にフィルタをかけたのじゃ」


「あ゛あ゛!?な゛、に゛を゛…」


「気道に炎症を起こす病いがあるであろう、あれを再現してやった。重篤なものは死に至ることもあるそうなのでのう、安静にしておったほうがよいぞ?」


 女は少し楽しそうに言うと足先で俺を押しのけた。十分な呼吸ができない俺は足元がふらついてベッドの下でしりもちをつく。無様にへたり込む俺に向けられた視線が顔から下がっていくのを感じた。


「とはいえ、そちらはまだガチガチのままか。くはは、よいよい。鞭ばかりではひとはついてこんでのう」


 俺はずっとこの女の嗤い顔に悪意の片鱗のようなものを感じていた。

 けれども。


「わしがまた直々に慰めてやろうとも。なあ」


 こんなに邪悪まるだしの表情は初めてだった。


「や゛、や゛め゛ろ゛、お゛い゛!が゛は゛っ」


 身じろぎもしたくないほどの呼吸困難に陥っている今そんなことをされたら死んでしまう。お前自分で安静にしてろって言っただろうが!


「くはは、遠慮するでないぞ。わしを殺さんばかりに盛っておったではないか。のう?」


 後ずさりしようとするが体が満足に動かない。女の足先が逃げられない俺に触れ、無理やり快楽を引きずり出される。


「ひ゛ぎ゛ぁ゛、あ゛が゛っぐ゛あ゛あ゛っ」


 酸素を十分に得られない苦痛に息を喘ぎ、望まないにも関わらず与えられる快楽に呼吸が乱れ、また空気を求めさらなる苦しみに陥る地獄のループ。


 視界が暗くなり、意識が遠のく。自身の喘鳴と女の足先の動きだけを感じながら、俺は意識を失った。

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