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 アルコールが抜けてすっかり素面のはずなのに眩暈がするほどに興奮している。夢中でまさぐるうち、そのふくらみの中でも異端の、そう、先端に指が触れた。

 初めて女が反応した。といってもわずかに吐息を漏らした程度だ。

 ちらりと視線を向けると女はその抜けるように白い頬を僅かに紅潮させ、薄く開いたくちびるからはなにかを堪えるように浅い呼吸を繰り返していた。

 濡れるように潤んだ深紅の瞳で表情を押し殺したように俺を見下ろしている。

 この高慢で底知れない不気味な女が俺の手の動きに肢体からだを反応させている。その確信は俺をこの上なく興奮させた。


 もっと、もっとだ。もっとこの女を乱したい。愉しみたい。貪りたい。蹂躙したい。心行くまで!


 俺は未知の物体を探る愉しみから、相手の反応を引き出す動きへ意識を変えてまさぐりだした。

 単調にならないように、反応のよかったところの周辺で焦らすように指先を這わせ、不意を襲うように強く核心を突き、ときに優しく、ときに乱暴に、ただひたすらに、一心不乱に貪り続ける。


「ん…は、タカシよ、そこまでに、せよ」


 女が乱れ気味の息を漏らしながら静止の声をかけた。顔をあげた俺の額を指先でつつく。


「二十分、二百万の時間は過ぎたぞ。これで仕舞いにせよ」


 すっかり時間を忘れていた。もう二十分経ったのか。くそ、まだまだこれからだっていうのに。

 目の前には乱れた薄絹からはみ出した膨らみがしっとりと汗を帯びて上下している。その吐息も汗もまるで蜜のように甘い香りを放っているようだ。

 今の今まで夢中で気付かなかったが、俺は自分の分身がはがねのように硬く屹立していることを初めて自覚した。

 ここまできて今更やめられるかよ。

 だいたい男の部屋に上がり込んでベッドの上でここまでさせておいて、あんただって本当は満更でもないんだろう?


「な、なあ、このままヤらせてくれよ。金ならあとでいくらでも稼いでくるからさ」


 切羽詰まったように吐き出された俺の言葉を聞いて女は。

 ぬらりと大きく口角をあげて嗤った。

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