第45話 思い出して

「レン~!気分転換に外出しようぜ」






「外出?」






「ずっとこんな所にいたって考え事がつのるだけだろ。コンビニでも行こうぜ」








「世間が僕の事で騒いでるこの状況で?」








「それはそうだけど、、じゃあお前、永遠にここにいるつもりか??」








「それは、、」








「ほら行くぞ!」








僕はケンに引かれるまま変装をして外に出た。









しばらく歩いたところでケンが立ち止まる。









「やべー、財布忘れた!先行ってて!」








「あ、おい!」









何だよ、、別に僕は行かなくてもいいのに、、









そう思いながらも歩き出そうとゆっくりと前を向く。








「…詩音」








聞き慣れた声が正面から投げかけられる。








ずっと見たかった顔が目の前に現れて僕は目を見開く。








「……めぐ?」







名前を呼ばれた彼女が抱きついてくる。







「ごめんっ、ごめんね詩音、また勝手に離れてごめんっ、辛い時に1人にしてごめんっ」








「……」






泣いてごめんと繰り返す彼女に僕は立ち尽くす。







「…戻ってきてくれたならそれでいい」









そう精一杯の言葉を吐き出して僕は抱きしめ返した。








「戻って…いいの?私がまだ詩音の彼女でいてもっ…」









「僕にはめぐがいないとダメだ。めぐさえいれば…それでいい」







「っ!」








「もう…何もいらない。めぐがいればアイドルとかもうどうでも…」










「…詩音。








私はキラキラ輝くアイドルのレンが大好きだよ」









「…っ」







「本当に楽しそうにしてステージの上にいるレンが好き。ファンと話す時は優しい笑顔になるレンが好き」








「…やめてくれ」








「インタビューとかでファンの事を聞かれると幸せそうに話すレンが好き。ファンに良いステージを見せようと寝る間も惜しんで練習に勤しむ努力家のレンが好き」








「やめてくれよ!!!」








「やめない!!私はShineのレンも香流詩音も大好きなの!!…だからお願い…どうでもいいなんて言わないでっ、、今まで応援してきたファンの気持ちは?一体どうなるの?」







「それは…」







「思い出して、Shineを見てキラキラ輝く笑顔を浮かべてたファンの事。みんなの笑顔に、言葉に、今まで沢山救われてきた詩音を私が見てた。知ってるよ。」







「…っ!」







「恩返し…するんでしょ?待ってるよ、私も。みんなも。」









「僕は…っ…」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

壊れたあとにまた始めよう 赤月紅葉 @maple27

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ