第39話 憧れの人
アイドルになりたいと思ったきっかけは単純だ。
ある日、僕がまだ中学生の時。
注目新人アイドルのヒナタという男性アイドルがテレビで歌って踊っているシーンをたまたま見た時の事だった。
初めてだった。
こんなにキラキラしてる人を見るのは。
そのアイドルの表情が反映されるようにステージを見ている観客の顔も輝いていた。
力強い歌唱力と体を自由自在に操るようなしなやかなダンス。
僕はそのパフォーマンス力に圧倒された。
凄い、、
すぐにその世界観に引き込まれて、僕もその世界に飛び込むことを決めた。
あれから国民的アイドルまでに登りつめたヒナタに憧れながら。
そのキラキラした世界の裏にある汚れた現実を知ろうとすらせずに。
ーー僕はアイドルになる事を決めてから、歌とダンスのレッスンを3年間ほど続け、大手の事務所のオーディションに無事合格し、練習生となった。
高校2年生の時の事だった。
そこは僕がアイドルになろうと思ったきっかけになったヒナタが所属する事務所だった。
ずっと尊敬しているアイドルが僕の先輩になるなんて…
考えるだけで胸が弾んだ。
いつか先輩後輩として会える日が来るのかな…
そう夢見た。
実際にそれは意外にも早く現実としてやってきた。
練習生になってから半年を過ぎた頃だった。
「次の評価でデビューするメンバーを決める」
事務所の社長からそう告げられたのは、いつも通り週に1度与えられる課題曲のパフォーマンスをし、評価を貰った後だ。
「今度のテストはお前達にとって今まで最も意味のあるテストになるだろう。そして、いつもならば評価するのは私だけだが今回は違う」
「お前らの先輩アイドルにあたるヒナタにも審査してもらう」
衝撃が僕を貫いた。
あの憧れてきたヒナタさんが僕のダンスを見てくれる…?
夢にも見た現実に心が震える。
と、同時にプレッシャーにも押し潰されそうになる。
「練習期間は1週間。課題は3人~6人のグループを組んで、自分達で作詞作曲し振り付けまで考え、パフォーマンスをする事。もしデビューグループとして選ばれた場合、その曲はそのままデビュー曲になる」
「自分達で?」
「1週間じゃ無理だ」
「俺らが作った曲がデビュー曲…」
社長の言葉に練習生の間からそんな声があちこちであがる。
「無理ならやめてくれても結構だ。こんなこともできないようならデビューも諦めろ」
さすがにその言葉にまで反論する者はいなかった。
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