第35話 決意
詩音とずっと一緒にいたい。
仕事でなかなか会えなくてもたださっきみたいにたまに会えた時に抱きしめてもらえるだけでいい。
私はそれだけで幸せだ。
だけど私がそれを望むことで詩音が不幸になるのだとしたら私は。
「私は…」
「…詩音の幸せを選びます」
大好きな詩音と別れるのは嫌だ。
辛いし胸が痛くなって今にも泣きだしたくなる。
けど、それ以上に詩音が不幸になる事の方がもっとずっと嫌だった。
「それじゃあ別れてくれるんですね」
ユカが私の答えを聞いて満面の笑みになる。
「…約束は守って下さい」
「もちろんです」
「私がレンくんを幸せにしますから安心してください」
結局こうなるのなら最初から付き合わなきゃよかった。
付き合わなきゃこんなに傷つくこともなかった。
詩音の正体を知ったあの時に逃げてしまえばよかった。
なのにどうして私は詩音の手を取ってしまったんだろうか。
けど、もしもう一度あの時に戻れても私はきっと同じ選択をする。
たとえこの同じ結末が私を待っていようと
傷つくことになったとしても。
もうどうしようもないくらい詩音が好きだから。
その時間がわずかであろうと一緒にいたいと思うから。
ただの一般人の私がこの数か月、憧れのアイドルの恋人だった
その事実だけで私は幸せなんだ。
その事実を噛みしめ自分に言い聞かせて、今にも溢れそうになる涙を必死に堪えた。
詩音ごめんね。
一緒にいるにはあまりに短かったけど、詩音と過ごした時間はすごく楽しくて幸せだったよ。
苦しくてしょうがない時に私の前にふと現れて、運命だとも思った。
知り合って間もない私を1番そばで支えてくれた。
私に初めて優しさを、温かさを教えてくれたあなたが大好きでした、、ううん、大好きです。
「幸せに…なってください」
私は精一杯そう言葉を絞り出して、今度こそ会場の出口へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます