第34話 分かれ道
「来てくれてたんだ」
「うん!一度ステージが見てみたくて!最高だったよ~!」
「ありがとう」
ユカというその女性はテレビで見るよりももっと綺麗で女の私でもつい見とれてしまうほどだった。
ユカに視線を向ける詩音を見て胸が苦しくなる。
「…そちらの方は?」
「あ…私はジミナの…友達の園田めぐといいます」
「そうなんですね!私は姫野ユカといいます!」
「テレビで何度か見た事ありますよ。実物の方がもっとお綺麗なんですね」
「え~!?やめてくださいよ~!」
私の言葉に答えるユカの目は笑っているのにどこか鋭く感じて怖くなる。
「それじゃあ…そろそろ私行くね」
ユカのその視線にとてつもなく居心地の悪さを感じて私は退室しようと詩音に声をかける。
「え、もう?」
詩音がしょんぼりした顔をして私を引き留めたけれど、この空気感が耐えられなかった私は結局詩音に別れを告げてから楽屋を出た。
そしてそのまま会場の出口に向かっているとーー
「めぐさん!」
ユカが私を走って追いかけてきた。
「…どうしたんですか?」
問いかけながらも嫌な予感を感じる。
「聞きたいことがあって…」
「聞きたいこと?」
何だろう?
全く予想がつかず恐る恐るユカの言葉に耳を傾ける。
「めぐさん、レンくんと付き合ってますよね?」
「え」
全く予想してなかった言葉に思わず声が漏れる。
「さっき楽屋で話してたの聞いちゃいました。レンくんのファンだったんですよね?応援してた人の彼女になれたなんて凄い」
どうしよう、まさか聞かれてたなんて、、
「あ!でも安心してください!私、口は軽くないんで」
「…黙っててくれるんですか?」
「もちろんです!ただ、、
黙ってる代わりに条件があります」
「条件、、?」
「レンくんと別れてください」
頭を殴られたような衝撃が走った。
詩音と別れるなんて、、
そんなの絶対嫌だ…
「レンと別れることは…」
「まさかできないとか言わないですよね?」
「っ!!」
「実は私、レンくんとめぐさんが抱き合ってる写真撮っちゃったんですよ。お二人が付き合ってるのが世間にバレたらどうなるか分かってますか?」
「…あなたじゃなくてレンくんが苦しむんですよ?批判を受けるのはレンくん。可愛くもない自分のファンに手を出した、、ファンもガッカリでしょ」
さっきとは表情がうって変わり、口調が段々と荒くなるユカはさっき詩音と話していたユカとは別人のようだった。
「でももしもレンくんの相手が私だったら…みんな納得すると思いませんか?」
「……」
確かにユカは誰が見ても凄く可愛くてスタイルもいい。
私が勝てる所なんて何一つとしてなかった。
みんなが口を揃えてお似合いだと言うだろう。
悔しいけれどユカの言葉には納得せざるを得なかった。
「私もレンくんが好きなんです。諦めきれない。だから私にレンくんを譲ってください」
「…選んで下さい。
自分の幸せか、レンくんの幸せか」
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