進捗

「篠原君の趣味ってなに?」

彼について、どんな人間なのか純粋に興味が湧いていた。

「特にないよ。」

作業を続けながら彼はそっけなく答える。

「強いて言えば?」

私は食い下がる。

「マンガ読むことぐらいかな。」

答えを貰えて私は満足しかけた。彼の心をこじ開けた気がして。でもまだまだ開いてない。話を続けなくちゃ。

 傍から見たら私たちの班は不真面目に映っただろう。私が世間話を始めると他の班員も雑談し始めた。先生には申し訳ないが、彼の心を開放するためなので、という身勝手な理由をつけて私は話し続けた。


 この数ヶ月の間、その講義が始まって終わるまで、私は瑞樹君と話し続け、個人的には仲良くなれたと思った。呼び方だっていつの間にか瑞樹君、になっちゃってるし。まあ彼が私のことをどう思っているのかは置いておこう。

 今日で講義が終わったのが残念だ。もしかしてもう彼に会えなくなるのだろうか。休みの日に会うことはおろか、その講義以外で話すこともないし。学部が違うから見かけることすらめったにない。自分の寂しがり方に若干の違和感を覚えたが、気付かなかったことにしておく。


 その1週間後、瑞樹君からLINEがきた。お誘いのLINEだ。その日は夜までバイトだし、悪いけど断ろうと思ったが、その日は彼の誕生日の前日であることを思い出した。彼の特別な日に、まあ前日なのだが、断るのも悪いので夜遅くでも会おうと思った。実際、彼に会いたいと思う気持ちに嘘はない。バイト前に何かプレゼントを買っておこう。彼は自分のことをさらけ出さないからほしいものがわからない。彼の真似をして無難なものを買おう。そこまで考えて、眠りについた。

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