8月19日

「お前何しゃべってるのかわからなかったぞ。」

笑いながら友達が話しかけてくる。

「ごめん。」

怒られているわけではないが僕は謝った。

 自分でもあんなことになるとは思わなかった。小学5年生のことだ。


 俺は学校代表に立候補し、市の行事の中でスピーチを行い、大失敗をした。その姿は観客はもちろん、テレビの生放送でも流れており、自分の不甲斐ない姿を全国にさらしてしまった。

 いつもはスピーチぐらい難なくこなすのに、テレビ局が来ていることや大人がたくさん見ていることで緊張したのだろう。過呼吸のような状態になり、まともに聞き取れるものではなかった。それから俺は変わってしまった。目立つことをするから失敗するんだ、何事も控えめに、出しゃばらずに。そう考え無難に生きるということを決めた。その次の日の俺の誕生日は、生涯で最も暗い気持ちで迎えた誕生日だろう。

 

 そんな誕生日に、神様が俺に力を与えてくれた。とてもつまらない力を。

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