未来を変えて、君と未来を

三浦航

4月14日

 横にいる男子。いつも無難なことばかりする、らしい。

 篠原瑞樹君はいつも無難な道を選ぶということで噂だ。無難な生活をしているのに噂になるのは気の毒かもしれないが。

 私たちは講義の班が一緒になって、初めて話をした。他愛もない話。ここに書こうにも記憶に残っていない。


 大学が休みの日、友達とファミレスにご飯を食べに行った。注文しようと店員さんを呼ぶと篠原君カウンターから出てくるのが見えた。ここでバイトしているは知らなかったが、友達と一緒にいる心強さもあってかさほど驚かず、注文した後むしろ軽い感じで話しかけた。

「篠原君ってここでバイトしてるんだ。」

「ああ、生活費は自分で稼ぐって親と約束してるから。」

 思ったより驚かれず、ちょっと拍子抜けした。知り合いが急に来ることで、いつもおとなしく、無難に生きる彼が感情的に驚いてくれるんじゃないかと少しは期待したのだが。無難に生きている人間は驚くということへのハードルが高くなってしまうのだろうか。

 それから少し彼を観察してみたものの、特に目立つ行動はなく、無難に仕事をこなす姿を見せつけられてしまった。

 その後、友達から篠原君は昔、目立ちたがり屋だったことを聞き、逆にこっちが驚いた。

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