第169話 ぎゅうぎゅう

「なんや話し声聞こえるから」


 とドアを開けてハジメがやってきた。

 ベッドの端っこに座る。

 陽太はおれが寝てる右側にわんこのおすわり状態だから、おれ挟まれてる。密度がすごい。


「寝なくていいの?」

「クレアにお伺いたてたら蹴り飛ばされたし来たわ」

「寝ろって?」

「行けって」

「そういうことは、ウグイスなんだー」


 性格コワくても。


「どうやって設定したの?」

「設定?」

「ウグイスの性格」

「あー、設定いうか、お願いした。優しくせんといてって」


 驚愕。

 優しくして欲しくない人なんているんだ。


「俺、甘やかされるとダメんなるんよ。ずっと甘えてまう。厳しゅうされんと、絶対サボってダラダラして、やりたいことでけへん思て」

「あー、分かる」

「コーチとか監督だね」


 おれも甘やかされてる、って思ったことあるから分かる。

 でも、おれには師範も部活の顧問もいるからな。


「僕のウグイスは助手なんだ~」


 自慢げに陽太が言った。


「へえー」

「だから助手って呼んでる」

「何手伝うてもろてんの」


 あ、内緒エリアに触れる質問だ。


「研究。色んな論文とか情報のアクセス早いから」

「ガチやん! 何の研究してん」

「生体アンドロイド」


 あ、言っちゃった!

 ハジメはいいのかな?


「誰にも言わないで、絶対秘密にして。約束して」

「お、おう」


 いつもの陽太に似合わないマジな上目遣い。


「大丈夫情報源守るのは記者魂に刻み込まれてる」

「うん。ハジメだから言ったんだよ」

「秘密は守る」


 はっくちん


 くしゃみまで可愛いかよ。いや身体冷やしちゃいかん。


「さむい? ふとん着る?」

「うんありがと」


 ねまきというにふさわしい甚平姿、気持ち良さそうだけど、ガーゼみたいな薄い生地。白地にマンボウ柄なのはともかく。


「エアコン上げる?」

「だいじょうぶ」


 口元までふとんかぶった陽太、その横に膝掛け状態のおれ。ハジメが言った。


「なんや俺も入れてくれ」

「えっ、うそっ」


 強引にふとんに入ってくる。


「入る? ちょ、わ」

「もう詰めれないよー」


 おれも横になって、なんとかしようとする。横向きになればいい?


「わー」

「もうちょっと」


 ぐいぐい


「入るじゃーん」


 ハジメがやったぜ☆ みたいに言った途端、「わああ」どたっと陽太落ちた。めっちゃ笑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る