第168話 夜更かしは楽しいけど

「朝4時ね」

「ええ!!!?」

「無理しなくていいのよ?」

「行きます!」


 ハジメ、朝苦手なんかな。


「陽太はもちろん────」

「行かないよ?」

「だよね」


 知ってた。

 しかし小猫が珍しく言った。


「わしは行こうかな」

「やった、二人とも、俺起きて来なかったら起こして!」

「意外な弱点」

「夜更かしなら強いんだけど……」

「夜は寝ぇや」


 おれ達はついつい夜更かししてしまう生き物だけど、ほんと何日かすると朝起きられない。去年の夏休みに朝練寝坊して思い知ったおれは、ほとんど夜更かししなくなった。次の日何もないときだけ。

 楽しいんだけどな。

 おれの場合、マジ起きられないから。


 ごちそうさまをして、少ない手伝いをさせてもらった。

 おれ達はもうお風呂に入っていたから、眠るまで自由時間な訳だけど。


「寝る?」

「い……いや、まだ大丈夫。……たぶん」


 うわぁ、自信なさそう。


「じゃあ、9時までにしよう。おれも9時には一緒に上がるよ」

「サンキュー滝夜。恩に着る」

「じゃあみんなでコレやろう!」


 準備よくサッとテーブルに乗っけた巨大な物。カラフルだけど、何?


「ジェンガだよ!」


 元気よく答えてくれたけど、おれの知ってるやつと違う。


「ハノさんが綺麗だからって買ってくれて、ここに来たらいつもやるんだ~」

「へええ」


 団らん的なやつだ。



 洗面まで完備した部屋でしゃこしゃこし、パジャマ代わりのジャージを着て、ベッドに入る。

 目覚ましの時間を合わせて、スマホを枕元に置いて、目をつぶった。

 いつもより早いから、すぐには眠れないかも────


 ボスッ!


「フォッ!」


「寝れないよね? もうちょっと話そ」


 ────陽太!

 いきなりベッドに飛び乗るんじゃない。


「びっくりした……おどかすなよ」

「おどかすならもっとちゃんとやるし」


 コワいことサラッと言った!


「ジェンガ付き合ってくれてありがと。あれ、やることになっててさ」

「定番ってやつ? いいよ、うちだってトランプとかやる時あるし」


 親とかと遊ぶのって、友達とは違うもんな。


「うん。あとさ、試合、小猫ちゃんと見に行っていい?」

「いいけど? 面白いもんじゃないと思うよ?」

「なんで? 僕大勢で稽古したことなかったから普通に見たいし、応援するよ?」

「そう? ありがとう、頑張るよ」


 知った顔が増えるのは、なんだか嬉しい。やってる時はたぶん忘れてるけど、終わって顔見たら、たぶんホッとするから。

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