第159話 豪華お洒落洋館

 てくてく歩いていくのは、陽太んちからちょっと戻り、ホテルの前にあった駐車場からこっそり続く細道。こういう、山田家にしか分からない道、まだまだありそう。


「お花、綺麗だねっ」

「ありがと」


 確かに綺麗な小さい薔薇みたいな花が、たくさん咲いている。小道沿いの両側にこの花の垣根が続き、何となくメルフェン。


「ミニ薔薇? カラフルやね」

「色んな品種を絡めたの、ウフ」


 話し方、ほんとに可愛いな。

 やがて樹々の間から見えた建物は、オウ、メルフェン!


「ここ、じいちゃんち」


 見上げたのはお洒落な洋館二階建て。

 何風っていうんだろ、レンガ造り? 出窓があって、喫茶店みたいな雰囲気。

 師範、こんなとこに住んでんの……?

 似合わねえ。


「ここは完全にわたくしの趣味。我儘でしょう?」


 そうですねとは言えませんけど。


「でも玄以様のお部屋は和室だし、御刀のお部屋もちゃんとあるのよ?」


 つまり大きな建物であるようだ。

 さすが山田家。


「ハノさんは押しかけっていうか、じいちゃんと強引に結婚したからね」


 カランカラン言わせてドアを開ける。喫茶店風味。


「やあね、ハルちゃんったら」


 まんざらでもなさそうに陽太の肩をたたくフリをする。

 ハノさんは初々しくて、新婚さんみたいだ。新婚さん見たことないけど。


 中に入ると、広い居間は完全にペンション。めっちゃお洒落で、壁にも調和の取れた小物や写真、絵画なんかが飾ってある。


「お二階にお部屋があるの。好きなように使ってくれて構わないわ。そこの階段上がってね」

「ありがとうございます」

「ごゆっくりね」


 途中で90度折れる階段を上がり、ドアが開け放たれた二部屋が目に入る。他にも部屋あるけどドアは閉まってるから、この二部屋を使えって意味だろう。

 中を覗くと、落ち着いた色の豪華なカバーがかかったベッド、アンティークっぽいテーブルと椅子。蓋が閉まった? アンティークの机。明るい出窓には花が飾られている。


「やべえ部屋だな」


 ついうっかり本音が出た。


「せやな……」


 男子中学生には過ぎた部屋だ。あまりにも。


「どっちにする?」

「どっちでもええけど……じゃ、こっち」


 どっちでも一緒だけど、角部屋を避けたのは、気遣いかな。

 中に入って荷物を下ろし、調度をまじまじと見た。


 高級なホテルみたい。こんなベッドに寝たらもう起きられないぜ。

 机は蓋を開けたらテーブル部分になった。つやつやした茶色が美しい。

 出窓の向こうには、眩しい緑の森が広がっていた。


 ふと見ると、角の壁が暖炉みたいになっていて、御刀が置ける台がある。

 ハジメ、これ気付いたの? すげ~。

 とりあえず御刀(模擬刀)はそこに置いた。


 とにかく何もかも豪華。そしてお洒落。もったいない。

 ぼーっとした頭で部屋を出ると、おんなじ表情したハジメと目が合った。


「スゴイな」

「そやな」


 色々な意味で。

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