第160話 中学生寝過ぎ問題

 そのまま無言で階下へ降りた。


「玄以様は7時にならないと帰らないの。さあゴハンにしましょう。冷や麦ゆでたのよ」


 ザラッと氷を乗せられた、キラキラした大鉢に盛られた冷や麦がテーブルに置かれた。

 涼しげな白い麺に氷、プチトマトが飾られてなんだか可愛い。


 大鉢は3つ、そのまわりに色鮮やかな小鉢が次々と並べられる。

 これはアレだ。

 伝説の、ひいばあお手製の常備菜!


「ひいばあ直伝彩り薬味の冷や麦、召し上がれ」

「いっただっきまあす!!」

「コレかあ、伝説の……」

「そうそう。めちゃウマなんだよ、マジで」

「ヒョヒョ」

「いっぱい食べてね」


 おれ達はその大層ウマい冷や麦を、モリモリ頂いた。

 特におれとハジメは仲良く大鉢を一杯ずつおかわりした。


「腹いっぱい。幸せだ~」

「ごちそうさまでした!」


 元気よく言うと、ハノさんはニコニコしていた顔をもっと嬉しそうにしてくれた。


「ほんとにたくさん食べてくれた。気持ちいいわね!」

「僕もこねこちゃんも、そこまで大食いじゃないもんね」

「そうね。滝夜くんは特に運動してるから、どんどん食べてちょうだいね」

「はい。ありがとうございます」


 ご褒美が過ぎますね、ほんと。


「これからどないすんの? いつも」


 ハジメが聞いた。

 おれは決まってるけど、ふたりは知らないな。


「おれは昼寝」

「僕もお昼寝~」

「じゃあわしも昼寝じゃな」

「ええ~!」


 中学生寝過ぎだろ。

 そしてハジメは寝ない派。


「寝ないんならやりたいことやりなよ。動画とか」

「そやな。考えよ」


 そうと決まれば撤収だ。


「片付け手伝うので指示だけして下さい」


 おれもこんなこと言えるようになったのだ。

 と感慨に浸る間もなく。


「あらいいのよ、お部屋行って寝て頂戴」

「え、でも」


 断られるとは思わなかった。いいの? やらなくて。


「おだいどこ、触られたくない人だっておるのじゃ」


 なるほど。

 確かに人の家だし、どこまでがプライベートゾーンかは、その人によるんだろう。


 おれ達はお言葉に甘えて二階へ上がり、おれについてはふとんもかぶらず爆睡した。

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