第158話 みんなでお泊まりだ!

「ハルちゃ~ん、ネコちゃ~ん」


 小さな子どもでも呼ぶような声がした。玄関かな。


「あ、ハノさんだ。こっちだよ~」

「聞こえる?」

「うん」


 しばらくして、ほんわかした声がやってきた。


「まあいい匂い。ネコちゃん、わたしにもくれる?」

「もちろんじゃ」


 現れたのは、少女のような雰囲気を持ったマダムっぽい女性。母さんくらいの年齢かな? もちょっと上かな?


「お母さん?」


 陽太のお母さんを見たことないハジメが聞いた。


「ばあちゃん」

「ええっ!!」

「ウッソー!!」

「おまえんとこの遺伝子どうなってんの!」


 若い! 若すぎる!


「温泉のチカラか……??」

「宣伝になるんじゃね?」

「可愛いでしょ」

「可愛いいうか、お母さんやないの」

「ばあちゃん。でもハノさんて呼んでる」


 そこへ隣の席についたハノさんが言う。


「そうなのよ~ハノちゃんって呼んでって言ってるのに」


 そ、そうですか……


「貴方が滝夜ちゃんね? こっちがハジメちゃん」


 ちゃん????

 混乱して口の動きがバグった。


「よろ、よろ……」

「あ、できれば「さん」か「くん」でお願いします」

「あらま。じゃあ、ハジメくん、滝夜くん」

「よろしくお願いします」


 バグは直った。ああ良かった。


「紅茶いれたぞよ」


 さっきみんなでコーヒー飲んだから、素直にハノさんは紅茶党なんだな、と思った。


「まあありがと。いただくわ」


 ハノさんは優雅な手つきでカップを持ち、一口飲んで言った。


「あ~美味しい。ケーキも頂くわね? うん、とっても美味しい。ネコちゃんほんとにお上手ね」


 あ、あの嬉しそうな顔だ。可愛く見える顔。

 陽太がそれを嬉しそうに眺めてる。


 それを見て、ああ、好きなんだなって思った。

 おれはまだ誰にもこんなじゃない。

 まだ。


「じゃあ行きましょうか」


 綺麗にケーキを食べ終えて、口元をハンケチで拭ったハノさんが、最後のお紅茶を飲み干して言った。


「あ、僕もいくー」

「まあ久しぶりね、じゃあネコちゃんもいらっしゃいな」

「うむ」


 なんか楽しい流れだぞ?

 みんなでお泊りだ!

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