第143話 ひいばあお手製の常備菜

 トイレ行ったり参がくれたお茶飲んだりして、おれ達が食堂行ったのはゆっくりだったけど、女子の一部はもっと遅かった。

 そんでやっぱり陽太はいない。御刀、持ってきたけどどうしよう。


「おはよ~」

「咲良ちゃんは?」

「起きたらもういなかったよ。言ってたじゃん」

「ちゃんと起きて行ったんだな」


 おれの稽古、見に来てくれたことは黙っといた。

 なんか、自慢ぽくて。ちょっと恥ずかしいし。


「おはよ~、朝ごはん作るよ~」


 母さんが声を掛けて、一斉にあいさつ。「おはようございます」


「今朝はベーコンエッグとサラダを作ります。材料を分けましょう」


 持ったままじゃできん。

 仕方なくおれは陽太の部屋へ向かった。


 階段を上がっていくと、小猫がいた。おれの方へ片手を伸ばす。


「?」

「ホレ」

「? なに?」

「わしが受け取っておく。おぬしは朝ごはんじゃろ」

「うん……でも、おまえもだろ? 陽太起こして一緒にくればいいじゃん」


 そう言ったら、一瞬おかしそうに微笑まれた。なんだ?


「あとでな」


 結局御刀を渡して戻ってきたけど、陽太ちょっと没頭し過ぎじゃね?心配になるレベル。


 食堂に戻ったら母さんがみんなからブーイング受けてた。


「なんで米?」

「ふつーパンじゃない?」

「納豆はありますか~」

「カオス!」


 笑いながらだからマジじゃないけどびっくりした。

 なるほど、ベーコンエッグにサラダ、なのにお米だからなのね。

 久我家じゃ普通のメニューだ。


「どうして米なのか……その答はぁ~、これです!」


 じゃじゃ~ん!


 とか言って母さんが披露したのは、たくさんの小鉢。


「ひいばあお手製の常備菜~!」

「すげ~!」

「うまそう!」

「豪華~」

「やべえ食べたい」


 色とりどりの野菜や肉魚、お店に売ってそうなバラエティで並んでる。


「お望みならレシピもらってます」

「欲しい!」


 すまして言ってるけど、すごいのは母さんじゃなくてひいばあ。


 ベーコンエッグを二人ずつ焼いて、サラダとご飯、そしてひいばあお手製常備菜のうまさに驚きつつ朝食を食べた。


 こんなに野菜ばっかり入ってるおかずを、ちゃんとしたご飯のお供としてもりもり食べるなんて初めてだ。


「ねえ、ひいばあは?」

「めっちゃ美味しいって伝えたい!」

「今朝はホテルの方に行ってらっしゃるそうよ」

「ちゃんと言っておく。ヒェッヒェッヒェ」


 なんでおまえが得意げなのか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る