第96話 所詮ゴシップ記者だと侮った
「それで? 何故接触させてしまったか答は出たか?」
「寺井に理解させる力が足りなかった事が原因かと思われます」
榎戸はふぅーっと、聞こえるほど大きくため息を吐いた。
「違う」
その断定は柳真下に衝撃を与えた。
「いくつかの偶然が重なったように思えるかもしれない。だがそうじゃない」
榎戸は振り返り、指をソファへ向けた。「座れ」
真下は大人しく座って、彼女の上司の顔を見つめた。
「寺井の真意を見誤った事だ。これは俺もだ。お前だけじゃない。高を括ったからだ。所詮ゴシップ記者だと」
榎戸は天井を仰ぎ、指を折る。
「しつこいだろうと想定はしていた。だから会場周辺を警戒していた。他の保育園でヤツを見つけた。急行して説諭した────」
「はい」
「近い、とヤツに知られた」
真下はみぞおちを強く押されたような気がした。
「そして尾行された」
「されていません! ちゃんとウグイスと連携して────」
「時間と距離を量られた。あとは範囲内の保育園を検索するだけだ」
「……! 申し訳ありません」
「いや、だから俺も間違えていた。何が目的なのかってヤツをな」
まさか国家権力に立ち向かう程の意志があるとは思わないじゃないか、たかがゴシップ記者に。
食いつかれたのだ。プライドを賭けて。
中学生に対する報道規制を、間違っているとは今も思わないが────
「ハジメくんは悔しいだろうな」
「傷付いた顔をしていました」
真下に分かるくらいに、か。
「ハジメくんは諦めないだろう。ウグイス」
『はい』
「ハジメくんの個人情報を守りつつ、味方である現状を維持したままで、その情報を踏まえた提案を望む」
『はい』
ハジメくんにフェアであろうとすればこれが限界だ。それ以上やると彼はウグイスを頼れなくなってしまう。
「必ず止める」
記事は今日にも書かれるだろう。アップされるのも今日のうちかもしれない。
明確な罰則がない以上、仮に可能だったとしても、自宅を突き止めて訪問したり、掲載先へ差し止め要求などができない。
「────知恵を絞れ」
「はい」
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