第53話 中学生、見守るくらいがちょうどいい


「否定的な感想をくれたのは二人。

 自分がLGBTであることを知られてしまうんじゃないか、変に勘ぐられてしまうのでは。

 これについては、最初にウグイスからの助言があったようだが、本人にとっては深刻な問題なので、心配は消えなかった」

『実際、同性のペアがいるクラスは全体の7割に及びました。

 それに、LGBTは複雑で、必ずしも同性を対象とする訳じゃありません。

 どちらにせよ、自分が好きな人がどんなだろうと、

「だからなんなの」

 です。他の人には全く関係ないことですよ』


 ウグイスが長口舌で言い切った。彼女は意外に熱いところがある。


「全く同感だ。僕がどんな奴に恋したって相手以外には何の関係もない」


 ハジメくんも熱い男なんだろう。だからこそ、こんな動画を発信している。


「そして最後の質問、共通の内容だったかは、そう、全く同じ内容だった。うさ衛門先生は全国各地で

『はい、この会議室初めて来た人こっち見て~』

 と言っているし、いちいち僕らの名前を呼んで返事している」


 そこが苦心したところなのだ。どんなメンバーでもどんなシチュエーションでも、同じ内容を盛り込むにはどうすればいいのか。

 一体何千回のロープレを繰り返したのか、もちろんカウントしていたが思い出したくもない。


「ざっくりとだが、今回の検証はここまで。次回もマイノリティレポートをお伝えする。じゃあな」


 今回の動画は前回より少し長かった。


「これ、続けてくれないかなあ」

「うん、便利」

「こら、中学生に過剰な期待をするな」


 確かに参加者側の感想をまとめてくれるという点で参考にはなる。相談室に入る能動的な感想や意見、質問やクレームなどの取りまとめはしているが、実際そういうことをするのは当人ではなく親であることが多い。

 彼はよくやっているがまだ中学生、見守るくらいがちょうどいい。


「間違った動画になってしまったらウグイスがなんか言うだろうし、チェックしてもいいが干渉はするな」

「はーい」

「りょー」

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