第32話 やりたくないリスト

 8ページにはこんなリストが載っている。


 1.親に報告

 2.お互いの実家に挨拶

 3.婚約指輪の購入

 4.両家の顔合わせ

 5.結納

 6.入籍の日取り

 7.結婚式の日取りと式場選び

 8.結婚指輪の購入

 9.結婚式のゲストや衣裳を決定

 10.新居を決める

 11.新婚旅行先を決める

 12.友達や会社に結婚の報告

 13.結婚式の詳細を決定

 14.入籍

 15.結婚式

 16.新婚旅行


「やりたいかやりたくないかで言ったらいいかしら?」

 彼女が言った。

「そうだな。じゃあまず○でも付けるか」


 ○○1.親に報告

 ○×2.お互いの実家に挨拶

 ×○3.婚約指輪の購入

 ○○4.両家の顔合わせ

 ××5.結納

 ○○6.入籍の日取り

 ○×7.結婚式の日取りと式場選び

 ○○8.結婚指輪の購入

 ○×9.結婚式のゲストや衣裳を決定

 ○○10.新居を決める

 ○○11.新婚旅行先を決める

 ○○12.友達や会社に結婚の報告

 ○×13.結婚式の詳細を決定

 ○○14.入籍

 ○×15.結婚式

 ○○16.新婚旅行


「結婚式嫌なんだ……」


 意外そうに彼女は言った。


「結婚式なんか男はみんなやりたくないだろ」


 偏見かな。

 しかし、あのスーツみたいなのがどうも良くない。見世物感が強くて受け付けない。ウエディングドレスは、見たいけど……


「ドレスは見たい。スーツ着たくない」

「ああ、タキシードね……」


 納得、というように何度かうなずく。


「あれ、やだよね~、分かる。着慣れないもの着させられてる感じ」

「分かってくれて嬉しい」

「でもウエディングドレスに羽織袴って訳にいかないじゃん」


 まあそうだ。


「誰か、そんな服開発してくれ……」


 今まで結婚式を挙げた全男の叫びだ、きっと。


「そういう会社立ち上げても面白そうね」

「えっ! や、やるの?」

「あーわたしじゃないけど、好きそうな人が」

「ああ、そう。会社作るのかと思った」

「うーん、楽しそうだけど、ちょっと時間ないかな」


 だよな。


「結婚式も、新しいカタチをセットで提案できたらいいわね」

「ビジネスマン咲良」

「あはは、何それ」


 思いつきや理想があれば、それを形にしてもいい。普通に、当たり前に、考えていい。中学生だからとか関係ない。そういう考え方を初めて間近で見た。


「調べたり、研究したり……そういうのって、時間ある学生の時しかできないこともあるんだよ。特に、興味持っているけど将来はまだ決まってないって人は、いいんじゃないかな」

「そういう人、身近にいるの?」

「いるよ、いっぱい。普通に」


 へえー。

 なんかおれ、ダメだなあ。

 そういうこと考えたこともねえ。

 仕事なんて大人がするものって思ってる。

 仕事って、ハタチや学校卒業する時に考えるもの。そう思ってるんだ。

 そうじゃないんだな。彼女の周りでは。


「学校出ないとできない仕事の方が多いんだけどね」


 そうやってフォローする、おんなじ中学生だけど大人な咲良さん。

 すごいな。

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