第4話  3

 「ん〜美味しいです〜!」

 頬が蕩け落ちそうと言わんばかりに、桃髪の少女、アマタが頬に手を当てる。

 「えっと〜ふれんちとおすと、でしたっけ?フワフワで美味しいです!」

 「ええ、とても美味しいわ。手作り料理なんて何ヶ月ぶりかしら…」

 「おそまつさまです」

 雪菜の発言に驚きながらも、正直に嬉しく思う。

 うまく出来るか心配ではあったがそれなりにうまいようにできた様だ。料理スキルが以前より上がっている気がする。

 「電車の時間もうすぐだから食べ終わったら準備しておいてくれ」

 「はい!」「わかったわ」

 聴き終えると、着替えと布団の片付けのために、二人の寝ていた寝室に向かう。

 「ところででんしゃって何ですか?」と首を傾げるアマタに、微笑みながら答える雪菜。すっかり仲良くなったな〜とどこか感心する。

 「布団敷く必要無かったかな」

 寝室のドアを開くと、敷かれた布団にはシワ一つなく、もう一方のベットは、枕は床に転がりシーツはグシャグシャになっている。

 朝の様子といい抱き合いながら眠っている時といい、あまり仲のいい、とはいえない様に見えたが…ねるまえになにを話していたのだろうか。

 「まあ一晩中騒がれるより全然いいけど」

 敷かれた布団一式たたみクローゼットの奥にしまう。そのままクローゼットに設置された服の入るタンスを開く。

 いつもなら適当に地味な色の服を選ぶ所だ。だが、今日はアマタと雪菜も混ざるということで両手に花状態だ。しかも両手とも花が輝きすぎている。ここでダサイ服選びは精神的にも周りからの視線的にも辛い。自殺行為とも言える。

 「よし、ここはネットを頼ろう」

 パジャマのポケットからスマホを取り出し、『初デート ファション』と検索をかける。

 今の時代、自身の不確かな知識よりプロだのの知識を頼りにした方が断然いい。

 「成る程…」

 字が、多い!!

 夏休みにもなって字は読みたく無い。こう言った時は写真を見てなんとなく内容を…

 「あーはいはい。要は顔ですかあーはいはい」

 見る写真全ての男性は俗に言うイケメンだ。爽やかなイケメンが爽やか〜なポーズで爽やか〜な笑顔でカメラ目線。

 「要はファションで少しでもブサイクを誤魔化そうとする男子にイケメン自慢ですか」

 実際ちゃんとしたことが書いてあるのかもしれないが、それくらいの知識が得れれば充分だろう。

 すぐさまにスマホの電源を落とし、ベットに投げ捨て、タンスを漁る。

 俺はブサイクの部類の人間だ。そう思うといつぞやのエピソードが思い出される。

 一度、なんの変哲もない日々を学校で送っているとき。名前を覚えている様な無い様な、という女子から突然、真っ赤に染めた顔を背けながら『茅葉くんって…その…かっこいいよねッ!』と言われた。奥では女子が群がり『キャ〜』と叫んでいる。

 きっとこの時、その女子は罰ゲームを受けていたのだろう。その女子は『今にも吹き出しそう』と顔を真っ赤にし、『そんな顔見ていられない』と顔を背けられたに違い無い。

 さらに思い出される。またいつぞやの日。そのことが気になり、雪菜に『俺のかおって、変?」と尋ねた時のこと。雪菜は慌てた様に『別に私が茅葉くんを好きになったのは顔だけじゃなくて中身もよ?』とフォローしてくれたが心のどこかでは哀れみの意もあったのだろう。

 そんな経験から言おう。

 「イケメンになりたい」

 そんなこんなで結局、服自体あまり持っておらずいつも通りのファッションになった。

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る