第4話 2
息を荒げ辺りを見回す。そこは半年前から暮らす、見慣れた我が家の居間。
何も変わり映えのなく、カーテンの隙間からは日がさし、鳥のなく声も聞こえる。
それだけで言えば文句なしの朝だ。そのはずなのに気持ち悪い。冷や汗が背をなぞる。
「夢、だよな…」
意識が完全に覚醒し夢だと気づく。
だが何故あんなにもリアルだったのか。何故、アマタが雪菜を殺すなどという酷い夢だったのだろうか。
「そ、そうだ!雪菜とアマタは!」
どこか悪い予感がし、ソファーから起き上がり雪菜たちの眠る寝室の扉のドアノブに手をかける。
一瞬鼓動が速くなりドアノブを握る。
夢でみた雪菜の飛び散る血と死体。アマタの中身の無い様な表情。
唾液を飲み、手汗でベトベトになった手でドアノブを回す。
「ってーーッ!」
目に飛び込んだ光景に目を瞑る。
そこには、茅葉愛用のベットに寝相で着崩れ、肌色が多く見える抱き合う少女二人の姿が目に映る。
「か…やはくん?」
「お、おこしたか?」
一刻でも早く部屋から出ようと試みるが、目を擦りながら起き上がる雪菜に袖を掴まれる。
「夜這いかしら…?いいわよ」
眠たげに言うと着崩れた服の裾を両手で掴み…
「って、何もよく無いないし、もう朝だぞ!!」
「朝這ってわけね。ウェルカムよ」
未だに寝ぼけているのか何を言っているのか全くわからない。
手をバッとひろげる雪菜の両肩をガッシリ掴む。
「あのなあ…!」
「か、茅葉!?」
横から聞こえる声に目を向ける。二人の声で起きたのか、アマタがあたふたした顔でいる。
「ま、まさか…やはり雪菜とは…」
「どういう…」
考えて気づく。両手を広げる女性に対し、男性が両肩を掴んでいる光景を見て何を思うか。
「ち、違うぞアマタ」
「わ、私はお邪魔、ですよね…」
髪を掻きむしりながら雪菜に救いの視線を向ける。が、当の雪菜は瞳を閉じ唇を尖らせて待機。
「いいか、二人。そう言った気は一切無い」
そう言い残し、次の言葉が出る前に部屋を出る。
朝からどっと疲れが溜まっり、肩を落とす。しかし、いつのまにか手汗は止まり、呼吸は落ち着いている事に気づく。
あんどしていたのだ。元気に冗談を言う相変わらずの雪菜に。表情豊かなアマタに。
「まあ、夢は夢だよな」
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